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「シュタインズ・ゲート」に「BEATLESS」、アニメのAIの実現性を本気で検証するOver the AI(24)番外編 これがエンジニアの真骨頂だ(2/9 ページ)

» 2018年08月20日 11時30分 公開
[江端智一EE Times Japan]

AIについて、好きなことを好きなだけ語らせてほしい……!

 こんにちは、江端智一です。

 今回は、"Over the AI ―― AIの向こう側"に番外編です。

 この連載では、「現状のAI技術を、『技術的』に分かっていないのにもかかわらず、偉そうにAIについて論じる、マスコミ、ライター、評論家など」に向けて、一人のエンジニアとして、「強烈な批判と皮肉と嫌みのメッセージ」を送り続けてきたつもりです。

 その手段として、現実のAI技術の"AS IS"を、誰も文句が付けられないくらい具体的に記載することとしたのですが ―― これが、当初の予想を超えた大変な作業となりました。

 現実のAI技術の"AS IS"を一通り理解した上で、小規模なテストプログラムを作り、その計算結果を検証する ―― それも1カ月ごとに ―― ということを繰り返し続けなければならず、正直、ものすごく疲れました。

 ともあれ、この連載で、私は「人間と同じような知能を持った人工知能(AI)は存在しない*1)」を、帰納法的に立証し、「将来もそのようなAIは登場してこない*2)」を、演繹法的に導いたと確信しています。

*1)「中堅研究員はAIの向こう側に何を見つけたのか
*2)「弱いままの人工知能 〜 “強いAI”を生み出すには「死の恐怖」が必要だ

 それにしても、現実離れしたコストが掛かり、使いにくく、インタフェースもアクチュエータも知能も、人間の乳幼児にも遠く及ばない「人工知能」なるものに幻想を見続ける私たち人間は ―― 一体、何を期待しているのでしょうか?

 100万年オーダーの進化のプロセスで精錬され続け、低コストで、使いやすく、万能のインタフェースとアクチュエータと知能を備える、究極の知的生命体=人間が、目の前に山のように存在しているのにもかかわらず、です。

 TVなどの報道機関が夜のニュースで連呼し、特別番組などで論じている"AI"は、AIではありません。あれは、ソフトウェア技術(の中でも、特に、新しい解探索アルゴリズム)のことであって、「人工的な人間の知能」などと呼べるものではありません。

 これは、私の一つの仮説なのですが、私たちがこのような「AI幻想」を抱き続けている原因の一つは、創作物(SF小説、映画、アニメ)の影響ではないかと考えています。

 加えて、近年の「AI技術(×AI)」の成果には、私たちを驚かせるニュース(盤面ゲームのチャンピオンに勝ったなど)が、「AI幻想」を助長させている面もあると思います。

 そこで、担当のMさんに、『最後の1回くらい、もう、カネだの技術だのということを全て忘れて、AIについて、(いつもそうだけど)好きなことを好きなだけ書かせてください』とお願いして、創作物に登場するAIについて調べてみることにしました。

 ただし、今回のコラムでは、「自分の気に入った創作物の一方的な紹介や感想はやめよう」と考えています。あれは、その創作物の内容を知らない人にとっては、自慰行為を無理やり見せられているような不快感があるからです。

 そこで、今回私は、「SF、アニメに登場する人工知能 ―― その実現性の検討」という観点で考えてみたいと思います。

 AIを取り扱ったSFというと、すぐに「2001年宇宙の旅」とか、古いものでは「メトロポリス(1927年)」などが出てきそうですが、今回は、私の好きなSF作家と、ここ3年以内のアニメに限定してお話させて頂きたいと考えています。

 ちなみに、本連載のベースとなったキャラクター「ナンシー」は、故小松左京先生の「さよならジュピター」から頂いています。

 私の中の「AI幻想」を作ったのは、やはりこのお二方になるかと思います。

 このお二方の描く「AI」は当然、未来の技術を前提とするものですので、現在の技術では実現できません。しかし、その「AI」が登場するまでの経緯(フィクションですが)が、ものすごく丁寧に書かれています。

 特に、このお二方のズルい……もとい、うまいところは、本当に、今の私たちが、研究開発のフロントで心底困っている技術課題をダイレクトに記載して、それを、想定した未来の技術で解決している、というストーリーを、省くことなくキチンと記載している*) ―― 何でも実現可能とした「ご都合主義的なお花畑の未来」に逃げ込まない ―― 点にあります。

*)例:「20世紀後半から21世紀前半にかけて、技術的ボトルネックとなってきた、ネットワーク分散処理系の計算負荷問題を、光量子による直結合の技術の発明と開発によって……」

 私のように、そこそこ最新技術を知っているエンジニアは、(一般人向けのニュースのような)"AI"という用語の乱用に対して、心底腹を立てていますので、お二方のような丁寧な説明のあるコンテンツは、エンジニアの心に刺さるのです。

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