9mm角で4K UHD対応 TIの最新ディスプレイ用ICがプロジェクタを変える長く映画産業を支えてきた映像投影技術を活用

映画やゲームなど多様なコンテンツをプロジェクタで楽しむユーザーが増え、プロジェクタの小型化や高性能化が求められている。Texas Instrumentsが発表したチップセットは、同社の映像投影技術「DLP」を駆使した製品だ。ディスプレイコントローラICやDMD、PMICで構成され、小型で超低遅延の4K UHDプロジェクタを簡単に設計できる。

» 2024年10月07日 10時00分 公開
[PR/EE Times Japan]
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人気が高まるプロジェクタ 高性能化と小型化には課題も

 手軽に持ち運べて好みのサイズで映像を投影でき、臨場感や没入感を味わえるプロジェクタの人気が高まっている。プロジェクタの性能も上がり、高価な大画面TVや大型モニターでしか楽しめなかった高精細な映像をプロジェクタでも投影できるようになってきた。VR(仮想現実)/AR(拡張現実)グラスなどの没入型ディスプレイエンターテインメントの需要も増加し、高画質の映像を低遅延で投影できるディスプレイデバイスが求められている。だが高画質や低遅延、高速応答はコストやサイズとトレードオフになるため、これらの要件をいかに両立させるかが開発者の課題になっている。

 Texas Instruments(TI)は、これらの相反する要求を実現すべくディスプレイ用チップセットを刷新した。最高240Hzのリフレッシュレートと1ミリ秒未満の表示遅延を実現している上に前世代品よりも大幅に実装面積を縮小できるので、高性能かつコンパクトなプロジェクタやARグラスなどの開発が可能だ。

30年以上「DLP」技術を手掛けるTI

 TIは30年以上にわたってディスプレイ関連技術を手掛けてきた。TIのフェローであるLarry Hornbeck博士は1987年、映像を投影する「DLP*)」(Display Lighting Processing)技術を考案した。数百万個のマイクロミラーアレイと照射用光源で構成されるDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)を用いて出力(映像など)を投影する技術だ。1996年にTIが最初の商用DLPシステムを市場に投入。1999年には、映画『スター・ウォーズ/ファントム・メナス(エピソード1)』がDLPを使用したデジタルプロジェクタで公開された。以来、映画産業ではDLPが使われている。TIは民生機器、産業機器向けの製品も発表。2017年にはDLPベースのHUD(ヘッドアップディスプレイ)を搭載した自動車が発売された。

*)DLPは、Texas Instrumentsの商標です。

TIは30年以上「DLP」技術を手掛けている 提供:日本テキサス・インスツルメンツ

 DLP技術を磨き続けてきたTIはDLP向けチップセットを刷新し、新製品を発表した。

新チップセットの概要 提供:日本テキサス・インスツルメンツ

従来比で90%の小型化を実現

 チップセットは最新のディスプレイコントローラIC、DMD、LEDドライバ内蔵のPMIC(電源管理IC)で構成される。TIは、「3製品を組み合わせて使用することでハイエンドTVやハイエンドゲーミングモニターと同等の性能を小型プロジェクタでも実現できる」と説明する。

 ディスプレイコントローラIC「DLPC8445」は、前世代品よりも大幅に小型化されている。最新のプロセス技術と内部回路の最適化によって、パッケージサイズは従来の31×31mmから9×9mmに、90%小型化している。これほど小型でありながら、4K UHDの高精細な映像を100インチ(2.54m)の対角表示サイズで投影できる。

DLPC8445はパッケージサイズが大幅に小型化されている。後述するが、DMD(写真上部)のパッケージも小さくなっている 提供:日本テキサス・インスツルメンツ

 DLPC8445は、高いリフレッシュレートもサポートする。ゲーミングモニターでは120Hz以上の高いリフレッシュレートが一般的になっている。リフレッシュレートが低いとモーションブラー(被写体ぶれ)が大きくなり、ゲームを楽しめないからだ。TVや日常用のプロジェクタでは、高価なチップセットやディスプレイコンポーネントを用いるハイエンド品だけが60Hzに対応している。DLPC8445は、最高240Hzまで(解像度が1080pの場合)サポートする。対応するリフレッシュレートは解像度によって異なり、4K UHDの映像投影では60Hz、1080p(フルHD)の3D映像投影では120Hz、1080pの2D映像投影では240Hzとなる。

 「DLP472TP」は対角0.47インチのマイクロミラーアレイを搭載したDMDだ。ミラーアレイは前世代品と同じだが、パッケージの設計を最適化したことで小型化した(前掲の写真参照)。DLP472TPとDLPC8445を組み合わせることで、1ミリ秒という極めて短い表示遅延が実現する。表示遅延は特にゲームで重要だ。レーシングゲームでブレーキを適切なタイミングでかけたり、アクションゲームで正確なジャンプシーケンスが必要になったりするからだ。ゲームで許容される遅延(ユーザーの入力からディスプレイ投影までのシステムの遅延)は20ミリ秒未満ともいわれている。

 DLPC8445は、グラフィックス処理の量によってリフレッシュレートを変化させる可変リフレッシュレート(VRR)もサポートする。複数のフレームレートを簡単に同期させて遅延なくディスプレイに表示できる。画面内で映像のずれが発生するティアリングや映像の表示が瞬間的に遅延するスタッタリングを排除できるので、よりスムーズなゲーム体験が可能だ。

 「DLPA3085」は、6A以上のLED駆動電流を供給できるPMICだ。高効率の降圧コンバータを複数搭載しており、DLPC8445用の低電圧電源とDMD用の高電圧電源を生成できる。内蔵のLEDドライバはRGBスイッチを制御し、R/G/BのLEDシーケンスをサポートする。

 新しいチップセットを用いたシステム構成例を下図に示す。主に、電力供給用とデジタルビデオデータ送信用のインタフェースが必要になる。画像を処理するプロセッサには、専用のメディアプロセッサあるいはスマートフォンなどに使われるアプリケーションプロセッサを用いる。センサーやカメラ、モーターといった外部のデバイスと同期させることも可能だ。

 高度な画像補正機能によって画像投影面のゆがみや不均一性を動的に調整するので、投影する壁などの平たん性が多少欠けていても見やすい映像を投影できる。

チップセットを用いたシステム構成の例。DLPC8445はレーザー光源の制御にも適している 提供:日本テキサス・インスツルメンツ

 今回のチップセットは、量産開始前の数量をTI.comで注文可能だ。DLPC8445の価格は1000個購入時で60米ドルから。リファレンスデザインや評価基板、ソフトウェアをオンラインで入手できる他、質問にTIのエンジニアが直接回答する「TI E2E(Engineer to Engineer)設計サポートフォーラム」を活用すれば設計プロセスが容易になる。

高解像度/高リフレッシュレートに応える

 新チップセットを用いたプロジェクタの開発は既に複数メーカーで始まっているという。今後6〜12カ月以内にそれらのプロジェクタが市場に投入される見通しだ。「今回発表したチップセットは4K UHD/60Hzをサポートする。ゲーミングモニターでは、4K/120Hz対応品が既に登場しているが、近い将来にはプロジェクタも登場するかもしれない。その際も、TIのDLP技術が貢献できるだろう」

 コンテンツを楽しむ場所が多様化し、今後もさまざまな没入型ディスプレイが登場するだろう。「没入型ディスプレイの基本的な要件は、小型化、低消費電力化、高いリフレッシュレート、低遅延だろう。TIは、こうした要求に応えてさまざまな新しいディスプレイアプリケーションのニーズに対応できるDLPチップセットを開発する」(TI)

 TIは、「映画産業を皮切りに、DLP技術はその時々の新興ディスプレイアプリケーションで革新的な役割を担ってきた」と強調する。技術の進化が続くディスプレイの世界で、TIの新製品は開発者にとって大いに役立つはずだ。

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提供:日本テキサス・インスツルメンツ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2024年11月6日