「車載電源48V化」が突きつける新たな課題に応える――日清紡マイクロデバイスが高耐圧IC群を強化12Vシステムでのノウハウを生かす

車載電源システムにおいて12Vから48Vへの移行が加速している。そうした中、電源設計では48Vシステムに特有の課題も浮上してきた。日清紡マイクロデバイスは、12Vシステム向けで培ったノウハウをベースに、48Vシステム向け電源の課題解決に貢献するソリューションの展開を強化している。電源IC単体の提供にとどまらず、受託設計や幅広いサポートを含め、トータルで48Vシステムへの移行を支える。

PR/EE Times Japan
» 2025年10月29日 10時00分 公開
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利点も多いが新たな課題も、48V電源システム

 「100年に一度の変革期」のさなかにある自動車業界。ソフトウェア定義車両(SDV)の開発加速や先進運転支援システム(ADAS)の高度化などを背景に、車載システムの電動化や自動化が進んでいる。これにより電装品への電力供給量が増加することから、自動車の電源システムでは、従来の12Vシステムから48Vシステムへの移行が本格化している。

 48Vシステムには多くの利点がある。供給する電力が同じ場合、電圧が12Vから48Vと4倍になることで流れる電流は4分の1に減少する。電流に比例する電流損失を抑えられる他、細いハーネスを使えるので配線の重さを大幅に減らせる。

 一方で、電源システムの設計においては、48V化に特有の課題も浮上している。熱やノイズの対策、400V/800Vの高電圧バッテリーシステムとの共存、モジュールサイズの制約への対応などだ。日清紡マイクロデバイスは、12Vシステム向けで蓄積したノウハウと技術をベースに、48Vシステムの課題解決に貢献する電源製品のラインアップを強化している。

熱損失の問題が顕著に DC/DCコンバーターへの置き換えが進む

日清紡マイクロデバイス 企画営業部 EM企画営業課 課長 高橋恵輔氏 日清紡マイクロデバイス 企画営業部 EM企画営業課
課長 高橋恵輔氏

 熱設計においてまず挙げられるのが、48Vシステムの電圧変換で低ドロップアウトリニアレギュレーター(以下、LDO)を使用した際の熱損失が顕著になってしまうことだ。LDOは、ノイズは少ないが原理的に発熱は多い。12Vシステムでは特に問題なかったが、入力電圧が上がる48Vでは、発熱による熱損失が許容損失を超える場合がある。そうなると、信頼性が下がるリスクも発生する。

 日清紡マイクロデバイス 企画営業部 EM企画営業課 課長の高橋恵輔氏は「出力電流20mAから100mAほどの領域では、LDOに代わってDC/DCコンバーターが有効になってくる」と語る。「12VシステムではLDOでも100mAを給電でき、マイコンなども駆動していた。だが48Vシステムでは熱問題が顕著になり、実際には20mA程度しか供給できなくなる。今はマイコンの駆動電流も増加する傾向にあり、この領域でLDOを使い続けることは難しい」

 日清紡マイクロデバイス 車載ASSPプロジェクトチーム プロジェクトマネージャーの梶谷繁樹氏は「自動車メーカーも、この領域が現在の課題と捉えている。ティア1からも高い関心が寄せられている」と付け加える。

 ただし、LDOのニーズが減るわけではない。「48Vからの降圧ではDC/DCコンバーターへの置き換えが効果的だが、自動車のセットによっては12Vからさらに降圧してデバイスなどに電力を供給する必要がある。こうしたセカンダリー電源の用途では引き続きLDOのニーズが高い」(梶谷氏)

 日清紡マイクロデバイスは、車載用セカンダリー電源向けのLDOを含め、48Vシステムに対応する電源ソリューションをそろえている。

左図にある通り、出力電流が20mA〜100mAの領域ではLDOからDC/DCコンバーターへの置き換えが進む。それにより損失が下がる 提供:日清紡マイクロデバイス

低ノイズと低消費電力を両立

日清紡マイクロデバイス 車載ASSPプロジェクトチーム プロジェクトマネージャー 梶谷繁樹氏

 熱損失と並ぶ大きな課題がノイズだ。48Vシステムではスイッチング電圧が増加するので、必然的にノイズも増加する。機器やシステムの誤動作リスクが高まるので、高いノイズ耐性を持つ電源の選択が不可欠だ。同時に、待機時の低消費電力化も求められる。パーキング時の車載システムの消費電力を抑えるために、低消費電力に対する要求は非常に強い。

 だが、ノイズ耐性(イミュニティ)の高さと消費電流の低さは、相反する条件になる。回路設計の観点では電流を増やした方がノイズを抑え込みやすいからだ。梶谷氏は「こうしたトレードオフの要素を両立させる電源設計にはノウハウが必要で、そこはわれわれが得意とする部分でもある」と強調する。例えば12V対応のLDO「R1525」は、2.2μA(標準値)の低消費電流ながら33dBmの高イミュニティを実現した製品だ。48V向けには、R1525の強みを継承し、高イミュニティと低消費電流を両立した高耐圧LDO「R1560」「R1561」を提供する。

ノイズ耐性と低消費電流を両立した日清紡マイクロデバイスのLDO 提供:日清紡マイクロデバイス

 ノイズでは、イミュニティと同時に、発生する現象(エミッション)を低く抑えることも重要だ。80Vの耐圧を持つ降圧DC/DCコントローラー「R1260」は、スペクトラム拡散機能によりノイズを低く抑えている。特に、AM帯/FM帯域でのノイズを抑えていて、伝導ノイズ評価にて、CISPR25のClass 5を実現している。「ICのみでこれだけノイズを抑えることは難しく、周辺部品の適切な選定や基板レイアウトと併せて、低いエミッションを実現できる。当社はそこも含め、トータルでサポートできる」(梶谷氏)。R1260は、軽負荷時における高い変換効率も特徴だ。負荷電流に応じてVFMモードとPWMモードを自動的に切り替えることで「10mA以下でも90%以上の高効率を達成できている」(高橋氏)

降圧DC/DCコントローラー「R1260」における軽負荷時の効率(左)と、AM帯/FM帯でのエミッション(右) 提供:日清紡マイクロデバイス

1チップ化技術でサイズ制約に対応

 サイズの制約に、いかに対応するかも重要な要素になる。電気自動車(BEV)に搭載するバッテリーはかなり大型なので、車両空間や重量に制約が発生する。電源制御ユニットも狭いスペースに実装しなくてはならない。高橋氏は「われわれに求められているのは、電源部品を集約し、周辺の受動部品も含めて小型、軽量化した電源ICの提案だ。顧客のニーズに合わせて最適なPMICやASSPを提供する」と話す。

 「当社はさまざまなIP(Intellectual Property)を保有しており、アナログ/パワーだけでなく、デジタルも含めて統合する1チップ化技術も得意だ。電源の最適化をシステムレベルで提案できることが大きな強みだ」(梶谷氏)

高電圧システムとの共存を可能にする絶縁電源

 BEVでは、走行用バッテリーシステムである400V/800Vの高電圧システムと、補機バッテリーシステムである12V/48Vの低電圧システムが共存する。そのため、両者間の絶縁設計が不可欠だ。さらに、車載ECUやセンサーなどを駆動する補機バッテリーシステムに異常が発生しても、安全に路肩に停車できるフェールセーフ機能も必要になる。そのため、走行用バッテリーから補機システム用に電圧を生成し、電装品に電力を供給できるようにしておく必要がある。日清紡マイクロデバイスは、高電圧/低電圧システムをつなぐ製品群として、絶縁型ゲートドライバーや絶縁型高電圧モニターICなど、高耐圧の絶縁電源の開発を強化する。

高電圧システムと低電圧システムの共存 提供:日清紡マイクロデバイス

豊富なサポート体制 顧客との対話も重視

 充実したサポート体制も整えているのも日清紡マイクロデバイスの特徴だ。対面でのサポート以外に、半導体パッケージ情報や品質/信頼性試験データの提供、回路モジュールのダウンロード、電源ICやオペアンプなどの基礎講座(ブログや動画)など、オンライン/オフラインを問わず幅広いサポートを用意している。

 日清紡マイクロデバイスが特に重視しているのが、顧客との対話だ。垂直統合型デバイスメーカーならではの強みを生かし、時にはレイアウト担当やプロセス担当も交えて顧客とのディスカッションを繰り返す。「対話を深めてこそ、顧客のニーズに最適な電源ソリューションを提案できる」と梶谷氏は強調する。

 48Vシステムへの移行は、12Vシステムでノウハウを蓄積してきた日清紡マイクロデバイスにとって、車載ビジネス拡大の大きなチャンスだ。日清紡マイクロデバイスは、LDOやオペアンプなどの汎用品のラインアップ拡充、ASIC/ASSPの開発、受託ビジネス強化という3本柱で車載用事業を強化する。2035年には、車載の売上高比率を全体の50%以上に引き上げる計画だ。梶谷氏は「48Vシステム関連の開発はここ5年で一気にスタートした。自動車業界において48V化の動きは止められない」と強調する。12Vシステムの電源技術に深い知見と豊富な経験を持つ日清紡マイクロデバイスは、48Vシステム用電源ソリューションの選択においても、強力なパートナーになるはずだ。

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提供:日清紡マイクロデバイス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2025年11月28日