「切れないWi-Fi」をIoTにも Wi-Fi 7の注目機能MLO対応のコンボチップ低コストで使いやすい4品種を用意

Wi-Fiの進化は、通信速度の向上だけでなく「切れにくさ」へと軸足を移しつつある。その鍵を握るのが、Wi-Fi 7で導入された新機能「MLO(Multi-Link Operation)」だ。インフィニオン テクノロジーズは、MLOに対応しながら低消費電力と低コストを追求したIoT向け無線通信コンボチップ「AIROC ACW741x」を開発した。混雑や干渉に強い“切れないWi-Fi”を、IoT機器にも導入しやすくする。

PR/EE Times Japan
» 2026年09月18日 10時00分 公開
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通信速度は「頭打ち」? 進化の方向性が変わりつつあるWi-Fi

 1990年代後半に登場して以来、通信速度や機能の面で進化し続けているWi-Fi。現在の最新規格はWi-Fi 7(IEEE 802.11be)で、2024年にWi-Fi Allianceによる仕様策定が完了し、アクセスポイント(以下、AP)やスマートフォンでの導入が進んでいる。

インフィニオン テクノロジーズ ジャパン IoT Compute and Wireless Business Line ディレクター 丸山敏郎氏 インフィニオン テクノロジーズ ジャパン IoT Compute and Wireless Business Line ディレクター 丸山敏郎氏

 Wi-Fi 7はIEEE 802.11be Extremely High Throughput(EHT)とも呼ばれ、2.4GHz/5GHz/6GHzの全ての周波数帯を使用でき、スループットは最大46Gビット/秒(Gbps)とWi-Fi 6/6Eに比べて4.8倍の高速化を実現した。チャンネル幅は最大320MHzに拡大し、変調方式は4096-QAMを採用するなど、前世代からさらに進化している。ただし、インフィニオン テクノロジーズ ジャパン IoT Compute and Wireless Business Lineでディレクターを務める丸山敏郎氏は「Wi-Fi 7で最も大きな目玉の機能になっているのはMLO(Multi-Link Operation:マルチリンク動作)だ」と語る。

 MLOはWi-Fi 7で新たに導入された技術で、2.4GHz/5GHz/6GHzのうち複数の帯域を同時に使用あるいは、組み合わせて使用することで接続と通信の安定性を高める。単にスループットを高めるだけでなく、接続のロバストネスを向上させる技術だ。

 丸山氏は「Wi-Fiでは、スループットを向上させる技術開発は続いているが、そこだけを追い求める方向ではなくなっている。スループットに関しては“頭打ち”感も出始めている」と話す。2028年ごろに規格承認が予定されている次世代のWi-Fi 8(IEEE 802.11bn)も、Wi-Fi 7のEHTに対し「Ultra High Reliability」と称されるほど、接続のロバストネスを改善する方向で進められている。インフィニオン テクノロジーズ ジャパン C3事業本部 マーケティング部 ワイヤレスコネクティビティでシニアマネージャーを務める木村見氏は「動画を見るなどのユースケースではWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)でも十分だと言われるほど、スループットは既に向上している。それよりも、スタジアムなど大勢の人々が集まる場所などで『Wi-Fiがつながらない』といった事態を改善していこうという姿勢が5〜6年前から強くなっている」と語る。「これまで不満が多かった、スループット以外のユーザーエクスペリエンスを改善していくことが、最近のWi-Fi技術開発のトレンドになってきている」(丸山氏)

Wi-Fi 7の注目機能、MLO

 こうしたトレンドを受けて導入されたのがMLOだ。従来のWi-Fiでは、2.4GHz、5GHz、6GHzのうち1つの帯域でのみ通信するので、混雑や干渉が発生すると、速度が低下したり、接続が不安定になったりする場合があった。2.4GHzで通信している最中に障害が発生した場合は、5GHzに切り替えて通信を行うことになるが、ネゴシエーションに時間がかかるので、シームレスな周波数切り替えが難しかった。これらの課題を解消し、通信に使用する周波数帯を迅速に変更して、より高速で安定した通信を維持するために開発されたのがMLOである。

 MLOにより、Wi-Fi 7は高速なだけでなく「混雑や干渉に強い」通信を実現できる。大勢の人々が集まるスタジアムやイベント会場だけでなく、多くのIoT機器が稼働するスマートホームや工場でも大きな利点がある。特に工場や病院、施設などで使用される産業用/業務用のIoT機器では、通信の瞬間的な遮断や遅延が大きな損失や事故につながる可能性がある。スマートホームや産業用途で使われるIoT機器が増えれば、それだけ通信の混雑や干渉が発生する可能性も高まる。そうした中で“途切れない通信”を確保することは非常に重要だ。丸山氏は「現在、IoT機器ではWi-Fi 6対応が主流になっている。MLOが今後どれだけ市場に浸透するかが、IoTにもWi-Fi 7が広がるかどうかの鍵になる」と語る。

MLOの3つの動作モード

インフィニオン テクノロジーズ ジャパン C3事業本部 マーケティング部 ワイヤレスコネクティビティ シニアマネージャー 木村見氏 インフィニオン テクノロジーズ ジャパン C3事業本部 マーケティング部 ワイヤレスコネクティビティ シニアマネージャー 木村見氏

 MLOには主に3つの動作モードがある。機能面で最も高機能なのが「MLMR STR(Multi-Link Multi Radio Simultaneous Transmit and Receive)」で、これはAPとPCやスマートフォンなどのステーション間において、2チャンネル(2つの周波数帯)を同時に使用し、双方向通信ができるモードだ。高スループット、低遅延、通信の安定性と3拍子そろった動作モードだが、その分、送信/受信回路が増えるので通信チップのコストは高くなる。

 2つ目がE-MLSR(Enhanced Multi-Link Single Radio)だ。2つの周波数帯を監視しつつ、1つの周波数帯を使って通信するモードになる。複数の周波数帯を同時に使うわけではないものの、使用していない周波数帯を常に監視しているので、使用中の電波状況が悪化した場合には、即座にもう一つの周波数帯を使用して安定した通信を継続する。

 3つ目が最もシンプルなMLSR(Multi-Link Single Radio)で、1つの周波数のみを監視、使用する。例えば2.4GHzで通信中は、5GHzは待機状態となる。ただし、どちらの周波数帯の通信も事前にネゴシエーションが完了しているので、再接続することなく、より安定して通信できる周波数帯にシームレスに変更できることが特徴だ。「MLMR STRに比べると、切り替える時間が発生するものの、Wi-Fi 6/6Eよりは切り替え動作を高速に行える。より堅ろうな接続を実現できる」(丸山氏)。さらに、MLMR STRに比べてRFの回路が少なくなるので、通信用チップのコストも低く抑えられる。「IoT向けであれば、シンプルなMLSRでも、MLOのメリットを十分に享受できる」(丸山氏)

Wi-Fi 7の20MHzチャンネルに特化した「ACW741x」

 インフィニオンは2026年1月、MLSRに対応する無線通信コンボチップ「AIROC ACW741x」シリーズ(以下、ACW741x)を発表した。Wi-Fi 7では、IoT向けとなる20MHzのチャンネル幅に特化したカテゴリーも導入されていて、ACW741xは、この20MHzチャンネルをサポートする製品になっている。20MHz幅向けに設計を最適化することで、極めて低い消費電力を実現した。さらにインフィニオン独自のノウハウによってWi-Fi接続におけるスタンバイ消費電力(DTIM10)は70μWになり、他社製品比で最大15分の1に抑えている。Wi-Fi接続時のアクティブ電力は59mW、Bluetooth接続時(アイドル状態)の消費電力は120μWと、いずれも低い値だ。これにより、IoT機器のバッテリー寿命の大幅な延長に貢献する。

AIROC ACW741xによって、IoT機器でもWi-Fi 7のMLOを低コストで導入できるようになる AIROC ACW741xによって、IoT機器でもWi-Fi 7のMLOを低コストで導入できるようになる[クリックで拡大] 提供:インフィニオン テクノロジーズ

 ACW741xは送信/受信スイッチ、パワーアンプ、低ノイズアンプ(LNA)、電源管理、LPOなどを1チップに統合しているので、必要な周辺部品を大幅に削減できる。さらに、実装しやすいQFNパッケージを採用し、2層PCB(プリント基板)で回路を設計できるため、コストを低く抑えられるのも利点だ。

 さらに、Wi-Fi Channel State Information(CSI)やBluetooth Channel Soundingにも対応する。これらを活用したワイヤレスセンシングにより、存在検知や周囲検知、入室検知またアセットトラッキングなど、さまざまなアプリケーションを実現できる。

 ACW741xは、対応する通信規格とWi-Fiの周波数が異なる4品種をそろえている。Wi-Fi 7/Bluetooth LE 6.0/IEEE 802.15.4(Thread)に対応する品種として「ACW7413(2.4/5/6GHz)」「ACW7412(2.4/5GHz)」がある。この他、Thread非対応の「ACW7403(2.4/5/6GHz)」「ACW7402(2.4/5GHz)」の2品種を用意している。評価ボードやモジュールも各種そろえる。

AIROC ACW741xの品種 AIROC ACW741xの品種[クリックで拡大] 提供:インフィニオン テクノロジーズ

500マイクロ秒でシームレスに切り替え

 インフィニオンはドイツで2026年3月に開催された組み込み機器向け展示会「embedded world」で、ACW741xのデモを披露した。デモではWi-Fi 6対応の通信チップを搭載したデモボードと、ACW741xを搭載したボードを用意。2.4GHzで通信中に干渉用の電波を挿入して、どのくらい素早く5GHzに切り替わるかを示した。Wi-Fi 6の方では通信が遮断され、切り替えにもたついていた一方、ACW741xでは約500マイクロ秒で周波数がシームレスに切り替わり、通信が途切れることなく続いている様子が示された。

Wi-Fi 6/7のデモの様子 デモの様子。Wi-Fi 6対応の機器では通信が途切れてしまい、再接続にも時間がかかっている(写真左側のグラフ。赤い点のところで通信が途切れている)。一方で、ACW741xを搭載したWi-Fi 7対応の機器では、すぐに5GHz帯に変更されて通信が継続されていることが分かる(写真右側のグラフ)。変更に要した時間(Channel Switch Latency)は503マイクロ秒(0.503ミリ秒)となっている[クリックで拡大] 提供:インフィニオン テクノロジーズ

 Wi-Fiが日常利用でも産業利用でも十分な通信速度を実現できるようになった今、進化の軸足は通信の安定性へと移りつつある。インフィニオンのACW741xは「切れないWi-Fiネットワーク」実現のために、コストと設計のしやすさの両面で導入しやすい選択肢になるだろう。

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提供:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2026年10月17日