広大な製品群を持つアナログ/組込みプロセッサで、さらに進化する:日本テキサス・インスツルメンツ 代表取締役社長 田口倫彰氏
日本テキサス・インスツルメンツ(TI)は、アナログ、組込みプロセッサという2つの製品分野への注力を続けてきた。日本TI社長の田口倫彰氏は「2014年は、これまで以上に明るい年になる。TIの強みでもある広範なポートフォリオ、充実したサービス/生産体制でさらにビジネス拡大を図る」と語る。
真のアナログと組込みプロセッシング・カンパニーに
――2013年のビジネスを振り返ってください。
田口倫彰氏 6〜7年前から、アナログ、組込みプロセッサの2製品分野を中心とした企業を目指して両分野の強化を進めてきたが、2013年はその戦略が前進した。従来40%程度だった注力2分野の全社売上高に占める売上比率は直近の四半期業績で80%に達した。
2013年の半導体市場全体の成長率は、1%程度とみられている中で、当社の注力2分野の売上高成長は7〜8%増となった見込み。2分野への注力を決めた当初に思い描いた通りの企業にかなり近づいた。
――アプリケーション別の業績はいかがでしたか。
田口氏 当社は、すべてのアプリケーションに対し製品、サービスを提供する方針を掲げている。その中で、成長市場としてリソース配分を増やしてきた自動車/産業機器向けがより高い成長を実現した。1年前は20%程度だった全売上高に占める自動車/産業機器向け売上比率が30%程度に高まった。日本での自動車、産業機器向けの売上比率は、世界市場をリードする企業が国内に多いこともあり、全社平均よりも高い。そして、全社の伸びと同等以上の水準で自動車、産業向けビジネスの規模を広げられた。2013年は、近年、注力、強化してきたことが表れた1年だったと評価している。
豊富な製品と充実のサービス/生産体制
――アナログ、組込みプロセッサの2製品分野で高い成長を実現できた要因は、どのように分析されていますか。
田口氏 アナログ、組込みプロセッサ中心の企業として、3つの戦略を掲げ、それらが効果を発揮した結果だと考えている。3つの戦略とは、「広大な製品ポートフォリオの実現」「製品に付随する充実したサービスの提供」「製品/サービス提供を支える強力な生産、研究開発体制の構築」の3つだ。
製品ポートフォリオは、2011年のナショナル・セミコンダクター(NS)の買収で大幅にラインアップが強化され、2013年1年間だけでも500〜600種のアナログ新製品を加えることができた。組込みプロセッサも含めて、他社にない広大な製品ポートフォリオがさらに強化できた。
サービスについても、世界で200カ所以上、国内だけでも11カ所ある営業拠点に、営業担当と技術営業担当(FAE)をほぼ1対1の割合で配置している。これは、業界でも類を見ないFAEの配置率であり、このことが大きなアドバンテージとなって、顧客からの信頼獲得、強いてはビジネス拡大につながった。
生産、研究開発についても積極的に投資を行っている。2013年12月、中国・成都工場で新たに組み立て/テスト施設を加え、TIで唯一のウェハ・ファブから一貫して製造できる体制を整えた。国内でも2011年に取得した会津若松工場をはじめ、美浦工場で生産効率性を高めるなど強化が進んでいる。急激な需要拡大や自然災害発生時にも安定して製品を供給できる体制で、製品/サービスの提供を支えている。
2014年これまで以上に明るい年になる
――2014年はどのように見られていますか。
田口氏 これまで以上に明るい年になると思う。特に成長市場の自動車、産業機器では、その兆しが多く出ている。
自動車では、電子化の進展が顕著で半導体の搭載点数は増加している。例えば、車の中で最も半導体使用量が大きい車載情報機器領域においても、ナビとメーター・ディスプレイの融合が進んでいる。また、ヘッドアップディスプレイやセンターコンソール部の曲面ディスプレイに最適な当社のイメージングチップ 「DLP」へのニーズが高まっている。
表示部だけでなく、制御部も、情報系、走行/安全系の双方でそれぞれの要求仕様に応じたプロセッサが必要であり、当社は双方の製品を提供可能だ。特に、機能安全対応マイコンはブレーキ制御やステアリング制御といった領域での採用数も拡大している。
――産業機器での明るい兆しとはどのようなものでしょうか。
田口氏 自動車にも言えることだが、センサの活用が急速に増えており、さらなる普及が期待できる。当社も参加しているのだが、「Trillion Sensors Universe」というプロジェクトでは1兆個のセンサを普及させ、世界をよりインテリジェントにしようとしているほどだ。当社は、センサに対し、センサ後段の信号処理回路(AFE)から、データを処理するプロセッサ、そして無線/有線の通信デバイスとすべてがそろっており、ビジネスチャンスは大きい。
産業機器に欠かせないモーターについても、世界で110億個のモーターが使用されているそうだが、そのうち半数は制御の必要のないオン/オフだけの単純なモーターだという。省エネ化への意識が高まる中で、必ず、モーター制御デバイスの需要も高まる。ここに対しても、当社は単純なモータードライバICから、マイコン、さらには高度な制御を実現するDSPまでをカバーするポートフォリオが用意できている点が強みだ。5年ほど前にモーター専門のビジネスユニットを設置した。また、より簡単にモーター制御を実現するソリューションの開発も行っている。その1つ「InstaSPIN」は、これまで複雑で、時間がかかったモーター制御が簡単に短時間で調整できるソリューション。あまりの簡単さから驚く顧客も多く、高い評価を得ている。
設計支援ツールとリファンレンス・デザイン・ライブラリを強化
――2011年秋に買収されたNSを母体に設立されたシリコンバレー・アナログ(SVA)事業部はいかがですか。
田口氏 高い成長を実現しているアナログ分野でも、特にSVAの製品は、車載など向けのインターフェイス「FPD-Link」関連製品を筆頭に好調だ。旧NSからの技術/製品力と、TIの販売/サービス力がうまく融合し、相乗効果が生まれた結果だろう。
旧NSが提供してきた「WEBENCH オンライン設計支援ツール」は、さらに強化され、電源ICを中心に、従来のTIデバイスや新製品にも対応し、現在1000品種を超える製品をサポートするようになった。コスト重視、性能重視など好みに応じた回路を短時間で生成、シミュレーションできるツールであり、サービス強化の一端を担っている。電源回路のサポート以外にも、センサAFE向けの機能も充実しつつあり、さらに強化を図る。
2013年11月からは、多数のリファレンス・デザインを収録した「TI Designs」のサービスを開始した。このライブラリは、アナログ、組込みプロセッサ、コネクティビティの3つの分野をカバーしており、回路/ブロック図、BOMコスト、設計ファイル、テスト・レポートなどの設計データを包括的に提供している。これにより、設計課題の解決と開発が容易になるばかりでなく、製品開発期間も大幅に短縮できる。
電力メーターもすべてTI製品で実現可能
――組込みプロセッサ、アナログともに、市場競争は激しいですが、TIが勝ち抜くためのポイントはどの辺りにありますか。特に、日本市場は、強力なマイコンメーカーも存在します。
田口氏 日本は、マイコン王国と呼んでも良いほど、世界的に見てマイコンの消費量が多く、それだけ競争が激しいことも事実だろう。しかし、当社は、組込みプロセッサとともにアナログも扱っている。さらに、それぞれで広大なポートフォリオを持ち、すべてをカバーできる体制がある。
例えば、つい最近開発した電力メーター向けリファレンス・デザインがそうだ。このリファレンス・デザインの半導体は、すべてTIの製品で構成している。これほどのポートフォリオは、他にはないTIの強みだ。
現在、システム開発期間の短縮化につながるこうしたリファレンス・デザインを急速に増やしている。同時に、リファレンス・デザインに対する顧客からの評価も多く寄せられている。今後も、リファレンス・デザインなどを生かしたシステム提案でビジネスを拡大させていく。
提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年2月13日
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