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実効速度4倍の「Wi-Fi 6/6E」をエッジデバイスに組み込むためのデバイス通信対応機器が“一家に50台以上”の時代を支える

多数接続に強く実効速度が4倍になったとされる無線LANの最新規格「Wi-Fi 6/6E」。新たな無線技術として幅広い用途での採用が期待されている中で、IoTエッジデバイスなどに組み込みやすいデバイス「AIROC CYW5557xファミリー」が登場した。Wi-Fi 6/6Eと同時に、Bluetoothの最新仕様「Bluetooth 5.2」も実現するコンボチップになっているこのデバイスについて、Wi-Fi 6/6Eの特長にも触れながら、紹介していこう。

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 モノのインターネット(IoT)の時代が到来し、あらゆる電子機器に通信機能が搭載されるようになりつつある。2025年までには一般的な家庭でも、通信機能を持つ機器が50台以上存在するようになるといわれている。多くの機器が同時にネットワークにつながると、これまでの通信では、通信効率が落ち通信速度の低下を招くといった課題があった。

 こうした多数接続の時代に向けて無線通信規格「Wi-Fi 6/6E」が登場した。IoT機器の標準的な無線通信となった「Wi-Fi」の最新規格であり、登場以来PCやルーターなどPC周辺機器、ハイエンドスマートフォンなどから徐々に搭載されてきた。そして、このほど、ネットワークに多数接続され、Wi-Fi 6/6Eの利点を最も享受するであろう“IoTエッジデバイス”に搭載するために開発された“組み込み向けWi-Fi 6/6Eコンボチップ”がインフィニオン テクノロジーズから発売された。そこであらためてWi-Fi 6/6Eの特長を紹介しながら、この最新無線通信規格の普及を一層、加速させるものとして期待を集めるインフィニオンの「AIROC Wi-Fi 6/6EコンボCYW5557xファミリー」を紹介していこう。

最大転送レートだけでは計れないWi-Fi 6の実力

 Wi-Fi 6は、無線LANの普及促進団体Wi-Fi Allianceが無線LAN規格「IEEE 802.11ax」をベースに策定したもので、その名の通りWi-Fiの第6世代目に相当する規格であり、これまでのIEEE 802.11acベースのWi-Fi 5からさまざまな機能強化が図られている。

 無線通信で最も重要視される最大転送レートは、Wi-Fi 5の6.9Gビット/秒(bps)に対し、Wi-Fi 6は9.6Gbps。変調方式を従来の最大256-QAM(直角位相振幅変調)から最大1024-QAMに拡張するなどし最大転送レートを約1.4倍に高速化した。これまでWi-Fiは世代が変わる度に数倍、数十倍の最大転送レートの高速化が図られてきた中で、約1.4倍という高速化は物足りなく感じるかもしれない。ただ、Wi-Fi 6の実力は「約1.4倍」「9.6Gbps」という数字だけで判断してはいけない。冒頭で触れたように、Wi-Fi 6の最大の特長は、多数接続に強いという点にあるためだ。

 Wi-Fi 5など従来のWi-Fiでは、同時に接続、通信する機器が増えるほどに、通信速度が低下した。というのも従来Wi-Fiは、一見、同時に複数の機器が通信しているようだが、厳密には、同時に通信できていなかった。常にルーターなどアクセスポイント(AP/親機)とクライアント(子機)は1対1で通信するため、1台のクライアントを除いて待機しなければならなかった。そのため、同時に通信したい機器が増えれば増えるほど、待機時間は延び、結果として、通信速度が低下したのだ。

 これに対し、Wi-Fi 6は、LTEなど携帯電話通信で実績のある変調方式「OFDMA」(直交周波数分割多元接続)を採用。OFDMAでは、一定の間隔で、APがトリガーフレームというパケットを複数のクライアントに一斉送信。そのトリガーフレームを受けて複数のクライアントが同時に通信パケットを送信する「トリガーベースアップリンクアクセス」などが実現され、真の同時通信が可能になった。


Wi-Fi 6が採用する変調方式「OFDMA」(右)と従来変調方式「CSM/CA」の比較イメージ

 なお、同時通信できるクライアント数は最大のチャンネルバンド幅160MHz使用時には最大74クライアント、チャンネルバンド幅20MHz時でも最大8クライアントに及ぶ。

新たな周波数帯「6GHz帯」が使える「Wi-Fi 6E」

 OFDMAで同時通信が行えるようになったWi-Fi 6では、その同時通信をより安定的に行うためにさまざまな進化を遂げている。その1つが使用する周波数帯の拡大だ。まず、5GHz帯だけを使用したWi-Fi 5に対し、Wi-Fi 6は、Wi-Fi 4(IEEE 802.11n)と同様に2.4GHz帯と5GHz帯の双方が使えるようになった。さらに、Wi-Fi 6は、2.4GHz帯、5GHz帯に加え、6GHz帯も使用できる拡張版規格「Wi-Fi 6E」が存在する。6GHz帯は、日本を含む各国/地域でWi-Fiが利用できる不免許バンドとしての開放が検討されていて、米国や欧州、韓国などでは既に同周波数帯でのWi-Fiによる通信が認められている。

 このうち米国では、5925MHzから7125MHzまでという、Wi-Fi 6における最大チャンネルバンド幅160MHzで7チャンネル分に相当する広大な周波数帯をWi-Fiが利用できるようになっている。欧州でも、5925MHzから6425MHzまでのバンド幅160MHzが3チャンネル分確保できる周波数帯が解放されている。なお、日本でも米国と同じ5925MHzから7125MHzまでをWi-Fiが利用できるようにするための検討が進められており、早ければ2022年ごろにも利用できるようになる状況だ。


各国で6GHz帯でのWi-Fi使用が検討、承認され、日々「Wi-Fi 6E」が使用できる範囲は広がっている
出典:Wi-Fi Alliance(https://www.wi-fi.org/countries-enabling-wi-fi-6e

 周波数帯の拡張以外にも、複数のAPが隣接した場所で生じる干渉を防ぎ、通信を安定させるためのBSSカラーリングという技術も導入。BSSカラーリングは、各クライアントがどのAPのネットワークに所属しているか判別するためのカラーコードという情報をプリアンブルに載せるもの。OBSS-PDなどの技術と合わせて動作することにより、APが多数存在する空間で通信が安定することになる。

Wi-Fi 6/6Eの利点をフルに組み込める「AIROC CYW5557x」

 このような進化を遂げたWi-Fi 6は、多数同時接続が当たり前になりつつある一般的なWi-Fi使用環境での実効通信速度がWi-Fi 5に比べ、4倍高速化するとされている。一般的な家庭でも50台以上もの機器が接続されるような状態になれば、おそらく、Wi-Fi 5とWi-Fi 6では、大きくその体感速度は大きく違ってくるはずであり、Wi-Fi 6はこれからの時代に欠かすことのできない無線通信になるだろう。

 そして、さまざまな機器への搭載が見込まれるWi-Fi 6を、実際にあらゆる機器で搭載することを可能にしたデバイスも登場した。それがAIROC Wi-Fi 6/6Eコンボ ソリューションCYW5557xファミリーだ。スペースやコストなどさまざまな制約を抱えるエッジデバイスへの搭載を前提にしたデバイスでありながら、Wi-Fi 6の利点をフルに享受できる構成になっている。3製品ある同ファミリーのうち、最もハイエンドなCYW55573は、6GHz帯を含む3バンドをサポートするWi-Fi 6E対応品で、80MHz幅2ストリーム(2×2 80MHz)による最大1200Mbpsの高速通信を実現する。またコスト重視の機器向けには、CYW55573同様Wi-Fi 6E対応ながら、80MHz幅1ストリーム(1×1 80MHz)で最大600Mbps対応と性能を絞ったCYW55571を用意。また、80MHz幅2ストリーム(2×2 80MHz)による最大1200Mbpsの高速通信対応で、2.4GHzと5GHzのデュアルバンド構成のCYW55572もラインアップ。さまざまな用途に応じて製品を選択できる点は、AIROC CYW5557xファミリーの特長の1つだ。


AIROC Wi-Fi 6/6Eコンボ ソリューションCYW5557xファミリー

 またブロードコムおよび、サイプレス時代から続く、インフィニオン製Wi-Fiチップの特長である“高感度で長距離通信が行える”という点はAIROC CYW5557xファミリーでも健在。独自のイコライザー技術などにより、既存のWi-Fi 6対応チップよりも約40%、長距離での通信が可能。Wi-Fi 5対応チップでは63m、既存Wi-Fi 6対応チップで77mという通信距離だった環境下で、AIROC CYW5557xファミリーは137mという長い距離での通信が行えたという。インフィニオン テクノロジーズ コネクテッド セキュア システムズ事業本部 IoTシステムズ リージョナルマーケティング部 部長の丸⼭敏郎氏は「既存品と同じ距離であれば、より安定した通信が行える。Wi-Fi 6の安定性をさらに強固なものにできるデバイス」と語る。

*)インフィニオンのWi-Fi/Bluetoothデバイス事業は、2000年代前半からWi-Fi用デバイスを展開してきたブロードコムの無線通信事業部門が母体。2016年にサイプレス セミコンダクタが同事業部門を買収。2020年のインフィニオンによるサイプレス買収を経て現在に至っている。

 バッテリー駆動機器を中心に重要視される消費電力性能についても独自機能により低消費電力化を実現。2ストリーム対応品では、2つの通信処理用コアを搭載するが、キャリアスキャン時は片方のコアの動作をオフし最大25%の消費電力を削減。ワンコア復調など、各コアの動作状態を細かに制御することでも低消費電力化を図っている。


AIROC CYW5557xファミリーの主な特長

最新仕様「Bluetooth 5.2」も同時に組み込める

 さらに、AIROC CYW5557xファミリーの3製品は、最新のWi-Fi 6/6Eに対応するだけでなく、Wi-Fi同様IoT端末の標準的な無線通信技術である「Bluetooth」にも対応するいわゆる“Wi-Fi/Bluetoothコンボチップ”になっている点も大きな特長。しかも、AIROC CYW5557xファミリーが対応するBluetoothは、最新仕様の「Bluetooth 5.2」になっている。

 Bluetooth 5.2は、それまでのBluetooth 5.0/5.1の機能に加え、新たなオーディオ技術「LE Audio」が搭載されたもの。LE Audioでは、1つのオーディオソースデバイスから複数のオーディオシンクデバイスに対し、独立した複数のオーディオストリームを同期しながら伝送できる「マルチストリーム」が行える。他にも1つのオーディオストリームを複数の機器に放送できる「ブロードキャスト」機能や、高圧縮でも高品質な音を実現する「LC3コーデック」対応を実現。スマートスピーカーやホームシアタースピーカー、ゲーム機、VR/AR対応ウェアラブル機器など幅広いアプリケーションで、Wi-Fi 6同様、搭載ニーズが高まっている無線通信仕様だ。


Bluetooth 5.2で追加された新たなオーディオ技術「LE Audio」の概要

 AIROC CYW5557xファミリーはいずれもウエハーレベルチップサイズパッケージ(WLCSP)品が用意され、小さな実装面積でWi-Fi 6/6E、Bluetooth 5.2というIoT端末に不可欠となったワイヤレス通信機能を搭載することができる。


インフィニオン テクノロジーズ コネクテッド セキュア システムズ事業本部 IoTシステムズ リージョナルマーケティング部 部長 丸⼭敏郎氏

 丸山氏は「より高速で安定した通信が行えるWi-Fi 6/6Eに対しては、通信の遅延を嫌うVR/AR対応ウェアラブル機器をはじめ、家庭用監視カメラ、ゲーム機、スマートスピーカー、ホームシアターシステムで採用検討が進んでいる。これらのアプリケーションは、各種オーディオ関連機能が強化されたBluetooth 5.2への期待も高く、双方の無線通信を1チップで実現できるAIROC CYW5557xファミリーは優位性がある」と話す。

 また、丸山氏は産業機器用途での採用拡大にも期待する。「高い通信品質が要求される産業分野でも、通信の安定性が高まったWi-Fi 6/6Eは適した通信技術。その中でも、AIROC CYW5557xファミリーは、長距離通信を実現できるデバイスであり、そういった点でも、産業分野のニーズに合致している」。

 なお、インフィニオンでは、AIROC CYW55573とほぼ同じ機能、性能を備えつつ車載市場で求められる動作温度保証範囲、信頼性を満たした車載グレード品「CYW89570」も製品化済み。IoTエッジデバイスから、産業機器、自動車まであらゆるアプリケーションでWi-Fi 6/6E、Bluetooth 5.2を搭載できる環境が整っている。

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提供:インフィニオン テクノロジーズジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2021年6月30日

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