半導体供給の“最後の頼みの綱”、EOL品提供で存在感増すRochester:Rochester Electronics Colin Strother氏/藤川博之氏
Rochester Electronicsは、メーカーの都合により生産終了となった製品、いわゆる「EOL(End of Life)品」を供給するディストリビューターだ。オリジナルの半導体メーカーから認定を受け、再生産だけでなく時に再設計も行う。メーカーとしては採算などの理由から生産を終了したいが、ユーザーとしては終了されては困る――。双方にとって、EOL品を扱うRochester Electronicsは“最後の頼みの綱”なのである。Rochester Electronicsでエグゼクティブバイスプレジデントを務めるColin Strother氏と、日本オフィス代表の藤川博之氏に、EOLビジネスの重要性や同社の戦略について聞いた。
70社以上の半導体メーカーが認定
――Rochester Electronics(ロチェスターエレクトロニクス/以下、Rochester)の強みについて教えてください。
Colin Strother氏 Rochesterは1981年に設立された株式非公開の企業で、半導体の正規販売代理店および製造メーカーだ。当社の最大の特長は、認定部品の長期継続供給が必要な顧客向けに、生産中止となった半導体製品、いわゆる「EOL(End of Life)品」を供給している点だ。
現在、ルネサス エレクトロニクス、Texas Instruments(TI)、Analog Devices(ADI)、NXP Semiconductors、Infineon Technologies、ON Semiconductorなど、70社以上の大手半導体メーカーの認定を受けた正規販売代理店として、これらの企業のEOL品を供給している。オリジナルメーカーより移管された、ダイ換算で120億個以上のウエハー在庫と、ライセンスを受けて再生産した製品を含め、部品の在庫は150億個以上に上る。
――2019年で注目すべき動きは何かありましたか。
Strother氏 当社は、われわれのサプライヤーと顧客の付加価値を高めることを追求し続けている。2019年は、例えばADIの高速DSP「TigerSHARC」や、RFを手掛けるオランダAmpleonのVDMOS RFパワーデバイス、Cypress SemiconductorのデュアルポートおよびFIFO SRAMソリューションといった主要な製品群の単独の供給元として、製品提供の拡大を続けてきた。
また、Rochesterの認知度をグローバルに拡大する企業努力も続けている。2019年には、東京都豊島区東池袋の「サンシャイン60ビル」に新しい日本営業本部を開設し、チームを拡大した。日本の他、シンガポール、米国、ドイツ、そして中国にも2拠点を新設した。
――Rochesterには、大きく分けてEOL品の在庫販売事業と再生産事業の2つがありますが、これらについて中長期的な事業戦略をお聞かせください。
Strother氏 Rochesterは、エレクトロニクス業界で最も幅広く、最も豊富な製品を提供することに注力していく。サプライヤーとの関係を強化しつつ、自社の製造能力もさらに発展、拡張させることで、製品ポートフォリオの開発と拡大に焦点を当てる。さらに、世界中の主要な市場でグローバルとローカルの双方において顧客に卓越したサービスを提供するための方法を、継続的に見極めていく。
技術の進化とM&Aの活発化でEOL製品へのニーズは増す
――EOL品を提供することの重要性とは何でしょうか。EOLビジネスにおいて課題はありますか?
Strother氏 エレクトロニクス業界では、技術が絶え間なく進化するとともに、M&Aも活発に行われているので、EOLとなる製品、部品はこれからも増加の一途をたどるとわれわれは考えている。当社の顧客が開発、製造する最終製品の寿命は、部品の寿命よりもはるかに長い場合が多く、部品の生産終了後も継続的なサポートを受けられる、リスクの少ないソリューションを必要としている。
ロチェスターは20年以上にわたり、オリジナルのメーカーで製造中止となった製品を当社に移管し、重要な産業用製品や高信頼性製品を手掛ける顧客に提供してきた。
当社の顧客が製造する最終製品の多くはプロジェクトに依存しており、それらのプロジェクトは多くの場合、何年にもわたることがある。そのため、中には、将来の部品需要を把握することが難しい顧客もいる。こうした顧客のニーズを満たすべく幅広い製品を提供するとともに、顧客のニーズにも応えられるようにすることが極めて重要になる。
――EOL市場の現況はいかがでしょうか。ニーズは増えていますか?
Strother氏 半導体のEOL市場は今後も増加すると予想される。それと同時に、当社ではグローバルなカスタマーサポートの拡大も進めていて、これは認定部品の継続的な供給能力に直結することだ。
――EOL品の再生産や提供について、顧客からはどのような要求やニーズがあるのでしょうか。
Strother氏 当社に対する要求は、生産需要を満たすために、在庫が十分な製品をすぐに必要とするものから、幅広い設計サービスを必要とする重要な民間航空会社向けに複雑なASICを再生産(複製)したいという要求まで、多岐にわたる。当社の顧客がロチェスターを利用し続けているのは、100%の認可を受けたソリューションを確実に入手したいからだ。
――日本での事業戦略やEOL市場についてお聞かせください。
藤川博之氏 日本においては、産業・設備機器、医療機器、通信機器や社会インフラ装置など高信頼性と長期製品寿命が求められる市場を中心に、当社の半導体継続供給ソリューションを展開している。昨今の景況とコロナ禍により、これら市場においてさらなる事業の選択と集中が進められるだろう。それに伴い、今後当社に要望されるものは多岐にわたる内容となり、より重要性が増してくると捉えている。
事業戦略としては、日本での事業拡大のため引き続き販売体制を強化している。Strother氏が述べたように、日本オフィスを池袋に移転して規模を拡張、同時に人員を増員し、カスタマーサービスの充実を図るべく、本年(2020年)にインサイド・セールス部署を新設した。
また、70社以上のオリジナルメーカー認定の半導体製品を継続供給するソリューション・プロバイダーとして、製品ラインアップも拡充している。ISSI(Integrated Silicon Solution Inc.)、Ampleonと新たなパートナー契約を締結するとともに、既存パートナーであるADIとはTigerSHARC DSP、Cypress SemiconductorとはFIFO/デュアルポートSRAM製品群の新規継続供給を担っていく。多種多様な要望に応えるべく、販売体制の強化とラインアップの拡充に積極的に取り組んでいる。
提供:Rochester Electronics, Ltd.
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2020年9月17日
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