新カテゴリー「ホームビジョンシステム」でのメモリの選び方:カメラか? コンピュータか?
ホームビジョンシステムという新たなカテゴリーにおいてどのようにDRAMテクノロジーを選択するべきかを検証し、ISPベースアーキテクチャの要求に対して、DRAMメーカーがどのように対応しているかを説明します。
長年注目されてきた人工知能(AI)や機械学習(ML)技術をベースにした製品が、一般消費者市場に出回り始めてきました。
研究開発チームの発表によると、自動運転など一部のアプリケーションにおいて、人間同等のスキルや判断力を機械が学習することは困難、あるいは不可能であると言われています。AIの誇大広告が先行してしまっている分野があるものの、機械学習機能を有する多くの製品が消費者の間で広く関心を集め始めているのも事実です。例えば、インテリジェントビジョンベースのセキュリティや、ホームモニタリングシステムには、大きな期待があります。リサーチ会社のStrategy Analytics社は、2019年から2023年の間に、ホームセキュリティカメラ市場の市場価値が80億米ドルから130億米ドルへと50%以上成長すると予測しています。
機械学習技術に最も適した機能の一つが画像認識とシーン認識であり、インテリジェントカメラの発展が見込まれます。ホームビジョンシステムでインテリジェンスを利用することにより、次のようなことが可能になります。
- 高齢者や子どもが転んでけがをしている可能性を検知する
- 乳児の睡眠時呼吸が正常であるか監視する
- 顔を認識して鍵を開けたり、ペットの猫を認識して猫用ドアフラップを開けたりする
- 家の外の不審な動きを検出して侵入者警報を発する
先進画像処理(Image Signal Processor/ISP)に基づいたこれらの新しいインテリジェントなホームビジョンシステムは、機能に特化したコンピュータです。この分野の最新製品では、ISPで実行されるアプリケーションコードを高速DRAMシステムメモリに格納し、低遅延でレスポンスの高い動作をするコンピュータのようなアーキテクチャを採用しています。
この記事では、ホームビジョンシステムという新たなカテゴリーにおいてどのようにDRAMテクノロジーを選択するべきかを検証し、ISPベースアーキテクチャの要求に対して、DRAMメーカーがどのように対応しているかを説明します。
本格的なコンピュータカメラ用システムメモリ
最新のホームモニタリング用のインテリジェントカメラは、ニューラルネットワークを使用して画像認識やシーン認識を行います。これらのビジョンシステムには推論エンジンが含まれています。これは、トレーニング用データセットに含まれる数千から数百万のラベル付けされた画像と比較分析することで、画像やシーンのタイプを認識することを「学習」するソフトウェアアルゴリズムです。
推論エンジンの実行は計算負荷の高い作業であるため、最新のホームビジョンシステムの中には、Ambarellaなどのチップセットメーカーから提供されるAI推進エンジンを取り込んだ高性能ISPを採用しています。これらのISPは通常、Arm Cortex-Aシリーズのアプリケーションプロセッサコアを搭載しています。
ホームセキュリティカメラの設計を実現するもう1つの一般的な方法は、「軽量版AI(Light AI)」と呼ばれるアプローチで、Omnivision、Kneron、NXP Semiconductorsなどのメーカーが提供する、それほど高性能ではないチップセットを使用するものです。OmnivisionとNXPは先進センサーおよびプロセッサチップのサプライヤーとしてすでに世界的に有名ですが、KneronはAIテクノロジーのリーダーとして急速に発展しており、同社のKL520はEE TimesのエッジAIアプリケーション用チップセットのトップ10にランクインしました。
つまり、これらのAIにヒントを得たホームビジョンシステムは、事実上コンピュータカメラと言えます。昔ながらのCCTV(クローズドサーキッドTV)カメラや、画像のタイプスタンプ付きビデオ映像を記録するだけの防犯カメラとは全く異なります(図1参照)。そのため、新世代のホームセキュリティカメラは、複雑な推論エンジンやその他のアプリケーションコードを格納するのに十分な容量を備えた高速DRAMメモリを装備した、コンピュータ式のアーキテクチャを採用しています(図2参照)
しかし、タブレットやスマートフォン、その他汎用コンピュータとは異なり、ホームビジョンシステムには、コンポーネントやシステムアーキテクチャを最適化された特定の画像や推論機能を備えています。つまりDRAMは、一般的な演算タスクではなく、画像処理機能のニーズに特化した使われ方をします。
その結果、ホームセキュリティカメラのメーカーは、スマートフォンやノートパソコンで使われる高容量の4Gビット、8Gビット、16GビットのDRAMではなく、低〜中容量のLPDRAMを使用することが有益であるということを認識し始めています。
低消費電力・長期製品供給
これは、メーカーが、どのサプライヤーからどのDRAMを購入するかを決めるのに大きく影響します。
ハイエンドのコンピュータやタブレットの場合、OEMはDRAMメモリの容量とバンド幅を最大化し、コストを最小限に抑える必要があるため、最先端のプロセスで製造された最新のDRAMテクノロジーを使用する必要があります。
対照的に、ホームセキュリティや監視カメラでは、以下の点が重視されています。
- 低消費電力
- 例えば、スマートドアホンの設計では、電池交換の頻度を最小限にするために、使い捨てアルカリ電池の動作時間を長くする必要があります。
- 長期供給
- ホームビジョンシステム市場の経済性により、製品化されたデザインは3年以上市場に出回ることが求められます。このため、これらの製品の部品サプライヤーは、OEMが部品の製造中止(EOL)でハードウェアを再設計する必要がないように、長期供給をコミットする必要があります。
- 信頼性
- ホームビジョンシステムは目的のシーンを撮影できるよう慎重に検討され、固定されます。つまり、修理や交換の際は作業者が設置場所に出向く必要があり、故障したノートパソコンを修理工場に発送するよりはるかに費用がかかります。したがって、顧客やOEMは、個々のコンポーネントとシステム全体の信頼性を重視することになります。
こうして、OEMがDRAM製品とサプライヤーを評価する際の重要要素が決まります。一方、スペシャリティDRAMメーカーのアプローチは、最先端のプロセスで製造される、PCおよびサーバ市場に特化した大手DRAMメーカーのアプローチとは明らかに対照的であることが分かります。
スペシャリティDRAMのサプライヤーは、最先端製品ではなく、レガシーなDRAMテクノロジーで動作可能なアプリケーション向けに幅広い製品を提供します。ウィンボンド・エレクトロニクスは、標準バージョンSDRAMのDDR、DDR2、DDR3に加え、消費電力重視の設計向けに低消費電力DDRのLPDDR2、LPDDR3、LPDDR4/4xのモバイルDRAMを提供しています。
主流のDRAMメーカーの製造プロセスは、メモリ容量とダイコストに合わせて最適化しています。最先端の製造プロセスを追いかけないメーカーは、産業機器、車載、医療および、コンシューマー市場向けの顧客ニーズをより満たすために、従来の製造プロセスを改良する自由度を持つことができます。ウィンボンド・エレクトロニクスでは、台湾にある自社のDRAMウエハー製造工場でモバイルDRAM向け低消費電力プロセスを採用しています。この技術により標準DRAMでも競合他社の標準DRAM製品よりも優れた電力性能を提供することが可能です。
ホームビジョンシステムの市場で事業展開するOEMは、コンポーネントの長期供給も考慮する必要があります。ここでも、スペシャリティDRAMサプライヤーは、市場の要件を満たすことができます。ウィンボンド・エレクトロニクスは、標準的に製品の市場投入日から10年間の長期供給保証しています。
最後に、主流の高容量DRAMは、PCやサーバで使用されるx86マイクロプロセッサアーキテクチャと互換性のあるインタフェースを備えていますが、スペシャリティDRAMは、他のタイプのプロセッサ、特にArmアーキテクチャデバイスと容易に接続することができます。
ホームビジョンシステムのメーカーによるシステム統合を容易にするため、ウィンボンド・エレクトロニクスはISPチップセットメーカーと協力し、多くのセキュリティカメラ設計プロジェクトにたたき台を提供するリファレンスデザインボードをサポートしています。ソフトウェアとハードウェアの互換性により、特にAmbarella ISPのユーザーにとって、システム統合が容易になります。
より高度な新しいビジョンシステムの迅速な開発をサポート
AIおよび機械学習技術の進化に伴い、ISPをサポートするための信号処理スループット向上とメモリ高速化への要求が高まっています。スペシャリティDRAMのロードマップでは、バンド幅を拡大するために、LPDDR4/4xなど新標準テクノロジーを導入しています。
ウィンボンド・エレクトロニクスのDRAMおよび、フラッシュメモリ製品は、充実したドキュメントラインアップや第三者機関による認定済みの高品質自社製造という強みを持ち、OEMがホームモニタリングやセキュリティビジョンシステムにインテリジェントな新機能を組み込むことをサポートして行きます。
【著】Jacky Tseng:ウィンボンド・エレクトロニクス、DRAMマーケティングマネージャー
提供:ウィンボンド・エレクトロニクス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2020年10月31日
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