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顧客に寄り添い“使い勝手”を追求する ―― アナログ・デバイセズ高精度アナログ半導体事業戦略あらゆる機器に必要なテストにイノベーションを提供

アナログ・デバイセズのインダストリアル部門の主力事業であり、計測/テスト市場向けのプレシジョン(精密)アナログ半導体事業は、どのような成長戦略を描いているのか。計測/テスト市場の展望や製品/技術開発戦略などを交えて、同事業を担当するマネージング ダイレクターに聞いた。

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アナログシグナル・チェーンの最先端をいくプレシジョンアナログ

 アナログ・デバイセズは物理的な世界とデジタル世界の橋渡しをし、インテリジェント・エッジのブレークスルーを実現しているグローバルな大手半導体メーカー。同社はアナログ、デジタル、およびソフトウェア技術を組み合わせて、デジタル・ファクトリ、モビリティ、デジタル・ヘルスケアの促進に役立ち、気候変動と戦い、人と世界を高信頼性で結ぶソリューションを生み出している。プレシジョンアンプおよびコンバータを含むプレシジョン(精密)シグナル・チェーンは、インテリジェント・エッジの成長を実現しほとんどのプレシジョン計測器を対象とする計測ソリューションの最先端である。極めて高精度のシグナル・チェーンが要求される半導体試験装置や電子計測器、科学分析機器などのアプリケーションに向けて事業を展開している。

 プレシジョン計測市場は今後どのように変化するのか。アナログ・デバイセズはどのようなプレシジョンシグナル・チェーンを開発し、事業成長を目指すのか。

 アナログ・デバイセズで電子計測機器向け製品/プレシジョンコンバータ製品担当ゼネラルマネジャーを務めるRay Goggin氏と、同じく科学分析機器向け製品/プレシジョンオペアンプ製品担当ゼネラルマネジャーを務めるTodd M. Sherman氏にインタビューした。


Ray Goggin氏(左)とTodd M. Sherman氏

If it's not tested, it doesn't work.

――計測事業について教えてください。

Ray Goggin氏 計測事業のターゲットは主に計測/テスト市場になる。計測/テスト市場はとても大きな市場だ。社内ではよく「If it's not tested, it doesn't work」(=テストされていないものは機能しない)という言葉を使っているのだが、全ての機器やシステムは必ずテストされて初めて機器やシステムとして成立する。計測/テストは不可欠なものであり、市場規模は大きく、今後も拡大を続ける市場だ。

 計測/テスト市場は規模が大きいので、われわれは3つの部門に分かれて事業を展開している。半導体をテストする半導体テスター(ATE)部門、電流、電圧、電力をテストする電子計測試験装置(ETM)部門、そして分子レベルのテストを行う科学分析機器(Scientific Instruments)部門だ。半導体テスター部門の売り上げ規模が最も大きく、計測/テスト向け売り上げの40%ほどを占める。それ以外の2部門がそれぞれ30%ほどという売り上げ構成になっている。

 アナログ・デバイセズは計測/テスト市場において2万社超の顧客を持ち、3万品種以上のプレシジョンアナログ製品を展開している。2022年会計年度における利益成長率は全社平均を上回るなど、順調に事業成長している。


アナログ・デバイセズの計測/テスト市場向け事業の概要[クリックで拡大] 提供:アナログ・デバイセズ

5つのメガトレンドで拡大する計測/テスト市場にソリューションを

――計測/テスト市場は拡大を続けるとのことですが、どのような戦略で事業成長を図る方針ですか。

Goggin氏 計測/テスト市場は5つのメガトレンドに沿って市場が拡大すると考えている。メガトレンドとは「電気自動車/自動運転」、5Gや6Gなどの「次世代無線通信」、「ヘルスケア/医療と持続可能性」、AR/VRなどの「没入型体感」、「AI/機械学習とクラウドコンピューティング」の5つだ。

Todd M. Sherman氏 電気自動車/自動運転というメガトレンドに伴い、自動車分野における計測/テストの必要性は格段に増える。バッテリーやADAS(先進運転支援システム)などこれまでになかった新たなテストが必要なアプリケーションの例を挙げれば切りがないほどだ。テスト内容も高電圧化などに伴って高度化する。その結果、自動車分野だけでも計測/テストの市場規模は2027年後半には10億米ドルに達すると想定されている。この市場規模は内燃機関が主流だった時代の3倍以上に相当し、とても多くの事業機会があると言える。

 こうしたビジネスチャンスの広がりは電気自動車/自動運転以外のメガトレンドにも当てはまる。そこで、アナログ・デバイセズはメガトレンドに対して広範な技術を統合したソリューションを提供することで事業成長を実現する、というのが基本的な成長戦略だ。

――どのようなソリューションや技術を提供しようと考えていますか。

Goggin氏 メガトレンドに伴ってテストはより複雑、高度になる。そうした中で多くの課題が生まれる。それらの課題を汎用(はんよう)的な製品で解決するのは極めて難しい。個々の課題に対処するには、システムレベルで技術革新を起こす必要がある。

 アナログ・デバイセズは、顧客の最大の課題を解決するために最先端の製品とソリューションの提供に努めている。これには、アンプ、ADコンバータ(ADC)/DAコンバータ(DAC)といったプレシジョンシグナル・チェーン以外にも、パワー・マネージメント、DSP/デジタルアクセラレーター、RFデバイス、ソフトウェアなどの完全なポートフォリオが含まれる。これらの産業界のメガトレンドで生まれる新たな技術課題を解決する“ソリューションプロバイダー”を目指している。


5つのメガトレンドとアナログ・デバイセズが提供する製品[クリックで拡大] 提供:アナログ・デバイセズ

「顧客との近さ」を強みに

――ソリューション提供の取り組みについて教えてください。

Goggin氏 応用領域別の「ドメイン別組織体制」の採用によって、当社の製品の応用先それぞれの専門知識が蓄積され、システムレベルでより深い技術的知見の獲得が可能になり、将来的な技術課題についても予測できるようになった。そうした予測に基づいてソリューションを開発することでマーケットにインパクトを与えることができ、事業成長を果たせている。

Sherman氏 常に顧客のことを第一に考えている。「顧客との近さ」を深め、顧客が最大の課題を解決するために何を提供できるかを理解することが重要だ。アナログ・デバイセズの技術とソリューションを活用する部分で顧客との協力体制を築き、業務目標の達成を支援するという流れが定着した。アナログ・デバイセズとの協力によって、現在必要なソリューションと将来必要になるソリューションの両面で、より早く目標を達成できることを顧客も理解している。

――特定の顧客と緊密に連携すれば、新規顧客獲得が難しくなるなどビジネスが固定化されることも考えられます。


アナログ・デバイセズ Electronic Test&Measurement/Instrumentation&Precision Technology General Manager Ray Goggin氏

Goggin氏 顧客に寄り添うドメイン別のアプリケーション開発組織とは別に、アプリケーション開発組織が開発したソリューションを幅広く提供することを目的にした専門組織を設けている。これらのソリューションを開発した結果、顧客との親密性が高まるとともに、ソリューションの展開領域はロボットや通信機器など計測/テスト市場以外にも広がりを見せるなど、実際に成果に結び付いている。

――システムLSIやメモリ領域では製造プロセスの微細化が鈍化するなど、イノベーションのペースが落ちてきています。プレシジョンアナログ領域の技術進化も鈍くなりますか。

Goggin氏 プレシジョンアナログ領域における顧客の課題解決のために進化は今後もよどみなく続く。そして、アナログ領域のイノベーションは、デジタルの手法を使ってその進化をアシストすることになる。アナログの重要性はさらに高まるだろう。

「使い勝手」と「スピード」

――今後のプレシジョンアナログ技術に求められる進化とはどのようなものになるとお考えですか。

Goggin氏 大きく分けて2つの進化が求められている。

 一つは「使い勝手の良さ」だ。繰り返しになるが、計測/テストは高度で複雑になっている。当然、設計も高度で複雑になるため、より使いやすいプレシジョンアナログ技術が必要になる。アンプやコンバータをそれぞれ単体で提供するよりも、オペアンプ、コンバータに電源ICやソフトウェアなど全てを融合させたシステムレベルのソリューションを提供する方が使い勝手がより良くなることは明白だ。アナログ・デバイセズがこれまでに取り組み、強みになっているソリューション提供力をより発揮できる。

 もう一つが「スピード」(処理速度)だ。スピードを落とせば精度はいくらでも高くなる。精度重視のプレシジョンアナログ技術でも、計測/テストの高度化、複雑化を背景にスピードへの要求は高まっている。トレードオフの関係にある精度とスピードを両立させるイノベーションを実現する必要がある。

 コンバータであれば、デジタル補正技術がより重要になるだろう。そのため製造プロセスの微細化を進めていく。


アナログ・デバイセズ Scientific Instruments/Precision Amplifiers Instrumentation&Precision Technology General Manager Todd M. Sherman氏

Sherman氏 また、プレシジョンアンプの場合、入力バイアス、ノイズ、ドリフト、速度などの重要な精度仕様を最適化する上でも製造プロセス技術が重要な役割を果たす。アナログ・デバイセズは、自社または信頼できるパートナーが所有するウェハファブ、ファウンドリ、アセンブリ/テスト工場の強力なネットワークに基づく復元力の高い「ハイブリッドファブ戦略」を敷いている。製造効率とイノベーションに投資を集中し、顧客ニーズと市場状況の変化への迅速な対応に務めている。

――使い勝手、精度/速度を追求したプレシジョンアナログの最新製品を幾つかご紹介ください。

Goggin氏 24ビット超高精度逐次比較型(SAR)ADC「AD4630-24」は、サンプリングレートがチャンネル当たり2Mサンプル/秒(以下、MSPS)で、変換精度(INL)は典型値で0.1ppm、保証値で0.9ppmという“超”の付く高精度品であり、アナログ・デバイセズのプレシジョンADCのレベルの高さを象徴する製品だ。BGAパッケージに電源やバイパスコンデンサーも内蔵しているので、配線レイアウトの制約なども受けず実装設計が容易という使い勝手の良さも備えている。

 使い勝手の良い製品の代表的なものに「ADAQ23876」がある。これは16ビット15MSPSのSAR ADCの他、ADCドライバやリファレンスバッファー、各種受動部品を内蔵したSIP(System in Package)技術によるデータアクイジション(データ収集)用モジュールだ。

 DACでは、16ビット分解能で変換レート33MUPSという高精度と超高速を両立させた「AD3552R」や、最大出力電圧200Vという高電圧対応品などがある。

ADコンバータ(左)とDAコンバータの主な最新製品[クリックで拡大] 提供:アナログ・デバイセズ

Sherman氏 新しいプレシジョンアンプは、顧客の最大の課題の一部を解決している。

 「AD8410A」と「AD8411A」は高電圧、広帯域幅の電流検出アンプで、顧客が測定の確度や精度に影響を与えることなくモーター・ドライバやDC/DCパワー・マネージメントのサイズと重量を削減するために役立っている。これは、-20V〜85Vの広い耐電圧範囲、2MHzの帯域幅、低歪み、チョッピング/自動ゼロ調整不要アーキテクチャ、および比類のないEMI性能によって実現される。

 「ADA4510」は低ノイズ、低入力バイアス電流、プレシジョンオペアンプソリューションで、精度のイノベーションの好例だ。センサーとインターフェースし、顧客がより少ないBOM数、より迅速な部品認定、より簡素な回路設計、評価、およびテストを実現できるようにする。高いセンシング能力、非常に広い信号ダイナミックレンジ、最高の電圧ドリフト性能という望ましい特長を備え、システムの精度と温度安定性を強化する。

――こうした特徴あるデバイスを組み合わせたソリューションにはどのようなものがありますか。

Goggin氏 紹介したADAQ23876やAD3552Rを使ったリファレンスデザイン「CN0584」がある。各種シミュレーションテストで不可欠なデータアクイジションシステムのリファレンスデザインだ。ボードも提供しているのですぐにテストに着手できる。特に自動車のシミュレーションテストを想定して開発したリファレンスで、テストの効率を高めて実車環境でのテスト工数を大きく削減できるソリューションだ。


リファレンスデザイン「CN0584」の概要[クリックで拡大] 提供:アナログ・デバイセズ

――最後にプレシジョンアナログ半導体事業における日本市場の位置付け、事業方針を教えてください。

Goggin氏 日本は、ATE、ETM、SCI用の革新的な計測機器を開発している。また、産業、通信、自動車、ヘルスケアの分野でイノベーションを起こしている大手企業も多い。アナログ・デバイセズのソリューションは、これらのイノベーターが目標を達成するために役立つ。

 日本でより多くのソリューションとイノベーションを実現するために、日本の顧客とさらに密接な関係を構築することが重要だ。

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提供:アナログ・デバイセズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2023年10月5日

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