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「緻密なゲート駆動制御」はもう要らない GaN内蔵のフライバックレギュレータAC/DC変換回路の実装面積を大幅に削減

米MPSは、GaN FETを内蔵したフライバックレギュレータの製品群を拡大している。次世代パワー半導体の材料として期待されるGaNだが、Si MOSFETに比べてGaN FETの扱いは格段に難しい。ゲート駆動がSi MOSFETのように容易ではなく、緻密な制御を要求されるからだ。その難しさを取り除き、GaNソリューションを採用しやすくするのがMPSのGaN FET内蔵フライバックレギュレータだ。

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魅力も課題も多い「GaN」

 家電から産業機器まで、さまざまな電子機器の電源として欠かせないのがACアダプターだ。AC/DC変換を担うACアダプターは大きいものが多く、常に小型化が求められている。そのためACアダプターに搭載される電源回路では、小型化に向けてレイアウトの最適化や改善、Si(シリコン) MOSFETの特性の向上といった技術開発が進んできた。

 ACアダプターの小型化にとりわけ貢献しているのがGaN(窒化ガリウム)パワー半導体の採用だ。GaNは、その優れた半導体特性から次世代パワー半導体の材料としての注目度が高く、GaNパワーデバイスは活発に開発されている。高周波スイッチングが可能なので受動部品を小型化でき、結果としてAC/DC変換回路やACアダプターそのものを大幅に小型化できる。その一例が、ノートPCなどの民生機器用のACアダプターや急速充電器だ。GaNパワーデバイスを用いたACアダプター/充電器は複数のメーカーが販売されているが、その小ささは多くのユーザーを驚かせた。「一度使うと、PCの純正ACアダプターには戻れない」という消費者も多いのではないだろうか。実際に、GaNパワー半導体はACアダプターやサーバ電源といった用途で採用が進んでいる。富士経済が2024年2月に発表した予測によれば、GaNパワー半導体の世界市場は2023年の74億円に対し、2035年は2674億円を見込んでいる。

 だが、電源設計者の視点で見ると事情は少し変わってくる。GaNは半導体としての特性は優れているものの、Si MOSFETよりもとにかく扱いにくいのだ。それ故、GaN FETに対応する電源ICソリューションを手掛ける半導体メーカーにとっては、設計者の課題をいかに減らすかが鍵となる。そもそも、GaN FETに対応するソリューションは少ないのが現状だ。

 そうした中、GaN FET特有の使いにくさを払拭し、GaNを取り入れやすい電源ICソリューションを拡充しているのが米国のアナログ半導体メーカーMPS(Monolithic Power Systems)だ。

GaN FETとコントローラICを統合

 前述した通り、GaN FETを用いた電源には多くのメリットがある。GaN FETは高いスイッチング周波数の他にも低オン抵抗、高耐圧、高温動作が可能といった特性があるため、小型で高効率の電源システムを構築できる。

 だが、GaN FETのゲート駆動はとにかく難しい。ゲート耐量が小さい、つまりゲートが“壊れやすい”デバイスだからだ。GaN FETのゲート駆動には大電流でチャージをかける必要があるが、チャージする量そのものは小さい(ゲートチャージ量が少ない)。VGS(ゲート−ソース間電圧)の定格がSi MOSFETよりも低いので、ゲート駆動電圧に対するマージンも小さい。GaN FETとコントローラICを使ってディスクリートで電源回路を構成しようとすると、どうしてもパターン配線が長くなる。その結果ノイズが発生し、GaN FETのゲートが故障してしまうケースもある。GaN FETの特性上、ゲート駆動をかなりシビアに制御しなくてはならず、これが「GaNが扱いにくい」とされる要因の一つになっている。

 そうした課題を解消すべくMPSが提供しているのが、GaN FETを内蔵したレギュレータだ。MPSの強みである集積技術を生かし、GaN FETとコントローラICを1パッケージに統合した。その一つである「HFG610-65」は、定格電圧700V/165mΩのGaN HEMTを内蔵したQR(疑似共振)フライバックレギュレータで、65Wクラスのアプリケーションを対象にしている。


MPSのGaN FET内蔵フライバックレギュレータ 提供:MPSジャパン

 MPSジャパンでシニアFAEを務める蜷川顕二氏は「HFG610-65は、GaN FETのゲート駆動の難しさから設計者を解放する製品だ」と強調する。

 「GaN FETとコントローラICが1パッケージに統合されているので、ゲート駆動を考慮する必要がない。これは大きなメリットだ」。コントローラ技術はMPSのコア技術の一つ。HFG610-65は、GaN FETのゲート駆動を緻密に制御できるMPSならではの強みを生かした製品でもある。

 さらに、ディスクリートで構成する場合よりも電源ループ面積が小さくなり配線が短くなるので、ノイズレベルを抑えられる。


ディスクリートで構成する場合(図版左)と異なり、GaN FETを統合したことでゲート駆動や電源ループを設計者が考慮する必要がない(図版右) 提供:MPSジャパン

 MPSはフライバックトポロジー向けの2次同期整流コントローラ群も提供している。これらのコントローラにはSi MOSFETと補助ダイオードが内蔵されていて、理想ダイオードとして機能する。HFG610-65と組み合わせると、フライバックトポロジーを少ない部品点数で構成できる。多くの機能を1チップや1パッケージに集積するというMPSの強みが発揮されているソリューションと言える。

 HFG610-65を使うことで、AC/DC変換回路の実装面積を大きく削減できる。フライバックコンバータの1次側の部品点数が少なくなり、実装面積は約半分になる。BOM(Bill of Material)も少なくなるのでコストの削減にも効く。


HFG610-65とMPSの2次同期整流コントローラを組み合わせることで実装面積を削減できる。その結果、2W/cm3を超える電力密度を実現した 提供:MPSジャパン

 HFG610-65は、特許取得済みのバレーロック技術を採用している。QRフライバックは一般的にバレースイッチングを行うので可聴ノイズが発生しやすいが、固定周波数で制御する独自のバレーロック技術によって可聴ノイズを抑制できる。HFG610-65は制御方法を最適化しているのでGaN FETのVDS(ドレイン−ソース間電圧)が短絡時でも定常時でも低く、スパイクノイズが極めて小さいという特徴もある。

 これらのノイズ低減技術やGaN FETを用いたことで、HFG610-65は高い変換効率を実現。ACアダプターの規格であるCoC Version 5 Tier 2の基準を大幅に上回る効率を達成した。

 GaN FETを統合したことで、スナバ回路などの周辺部品を削減できるようになる。Si MOSFETを用いた場合、スナバ回路では除去し切れないスパイクノイズを削減するためにフィルタを追加しなくてはならないケースもある。GaN FETによってこれらの部品も減らすことが可能だ。

GaN統合ソリューションの選択肢を「1社でも増やす」


MPSジャパンでシニアFAEを務める蜷川顕二氏

 GaN FETを内蔵したレギュレータが少ない中、「設計者の選択肢を1社でも多く増やしたい」と蜷川氏は語る。

 GaN FETは設計面の難しさだけでなく、価格が高いことも採用の障壁になっている。これについてはGaNウエハーの大口径化によって確実に低価格化している。「価格面でのハードルが下がり『GaNを使ってみよう』と設計者が考えたときに、ソリューションとベンダーの選択肢が十分にあることが重要だ」

 「電源を小型化したいという要求は常に存在する。Si MOSFETの進化による小型化が限界を迎えつつある今、市場がGaNソリューションの採用に向かっているのは間違いないだろう。民生機器だけでなく、これからは少しずつ産業機器での採用も広がるとみている。HFG610-65のような統合ソリューションが設計面での障壁を下げ、GaN採用の拡大を下支えする一助になると期待している」

 MPSは日本語で相談できるサポートサイト「MPS Now」を開設しているので、ぜひ気軽に問い合わせてほしい。

 ACアダプターの小型化に大きく貢献するGaNソリューション。HFG610-65をはじめとするMPSのGaN FET内蔵フライバックコンバータは、設計者を「緻密なゲート駆動制御」という難関から解き放ち、GaN採用の障壁を下げる新たな選択肢になるだろう。

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提供:MPSジャパン合同会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2024年7月14日

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