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Avnet、日本でルネサス製品の取り扱い開始 需要創出と物流で強力に支援ルネサスの海外販売戦略に柔軟かつ即座に対応

Avnet(アヴネット)がルネサス エレクトロニクス製品の取り扱いを日本で開始した。M&Aを経て製品群が大幅に増加したルネサスは、ラインカードが多く物流ネットワークにも強いAvnetに大きな期待を寄せる。AvnetのAsia Pacific and Japanでプレジデントを務めるPrince Yun氏と、ルネサス グローバル・リージョナル&日本アジアパシフィック統括でバイスプレジデントを務める長谷川夕也氏が、ルネサスとしてAvnetを選択した背景やルネサスとAvnetのパートナーシップがエンジニアにもたらす価値について語った。

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 半導体ディストリビューター大手のAvnet(アヴネット)が、ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)の製品取り扱いを日本で開始した。日本でも取り扱いを開始したことでエンジニアにどのような利点があるのか。Avnetがルネサスに提供できる価値は何なのか。AvnetのAsia Pacific and Japanでプレジデントを務めるPrince Yun氏と、ルネサス グローバル・リージョナル&日本アジアパシフィック統括でバイスプレジデントを務める長谷川夕也氏に聞いた。

コロナ禍を経て、変わる半導体商社の役割

――現在の半導体市況はいかがでしょうか。

Avnet Asia Pacific and Japanプレジデント Prince Yun氏
Avnet Asia Pacific and Japanプレジデント Prince Yun氏

Prince Yun氏 半導体のファウンドリー業界については好調だ。規制の強化など地政学的なリスクには常に直面しているものの、2023年に比べて市況は回復している。電子部品もおおむね好調だが、半導体については2023年の低迷を引きずっている。ディストリビューション業界でも製品によっては在庫レベルの高い状態が続いている。

長谷川夕也氏 一部市場で不透明な状況が続いているが、中国や台湾、インドでは多くのメーカーが高い伸び率で成長していて、さらなる市場拡大が期待されている。分野別において、アジアではAI(人工知能)やデータセンターの成長が著しいものの、産業機器はまだら模様の成長になっている。

――コロナ禍や戦争、デカップリングなど、半導体サプライチェーンを取り巻く環境は不安定な状況が続いています。そうした中で、半導体ディストリビューターとしての役割は、どのように変化していますか。

Yun氏 昨今の地域的な分断や衝突により、半導体サプライチェーンには大きな変化が起こった。従来の「ジャスト・イン・タイム」方式が機能しなくなり、需給バランスが大きく崩れた。われわれはグローバルディストリビューターとしてサプライヤーと顧客の間に立ち、より適切な価格とリードタイムで部品供給を継続できるように力を尽くしてきた。ここ数年はサプライチェーンを取り巻く環境だけでなく半導体の設計拠点や製造拠点など、あらゆる点に気を配る必要が出てきた。こうした国際情勢も加味して部品の供給を継続し、顧客の製品開発が滞りなく進むようにサポートすることがディストリビューターの役割としてより重要になっている。

長谷川氏 われわれも、ディストリビューターに対してまさにその点に期待している。供給難などのダウントレンドを経て需要が上向き基調に差し掛かるタイミングでは、先々のデマンドを予測するのが非常に難しい。半導体のように、製造に何カ月もかかる部品はなおさらだ。ディストリビューターは多くのメーカーの製品や品種を取り扱うので収集できる情報量が圧倒的に多く、高い精度で需要を予測できる。特にここ数年は従来のシリコンサイクルとは大きく異なるパターンで市場が変化するため、在庫のコントロールなどの面でディストリビューターの力を借りたいと思っている。

ルネサス製品を日本でも取り扱い開始へ

――Avnet APACでの戦略を教えてください。日本に特化した戦略があれば教えてください。

ルネサス エレクトロニクス グローバル・リージョナル&日本アジアパシフィック統括 バイスプレジデント 長谷川夕也氏
ルネサス エレクトロニクス グローバル・リージョナル&日本アジアパシフィック統括 バイスプレジデント 長谷川夕也氏

Yun氏 半導体は国や地域ごとに強みが大きく異なる産業だ。そのため常にローカルでのビジネスを重視して戦略を立てている。現地の顧客に近い場所へ支社を設置し、ローカルできめ細かく対応できる体制を構築している。

 AI(人工知能)やEV(電気自動車)の市場が著しく成長している中、好調なのは台湾だ。中国でのビジネスも順調だが、輸出規制や関税という課題もある。日本はユニークな立ち位置にあり、為替変動の問題はあるものの自動車や産業機器、AI、IoT(モノのインターネット)など、次世代の半導体製品が強く求められる産業も盛んだ。そのため、基本方針であるローカルでのサポートを徹底して強化している。

――Avnetが日本でもルネサスの製品を取り扱うようになりました。ルネサスがAvnetを選んだ背景についてお聞かせください。

長谷川氏 ルネサスは2017年以降、外資系半導体メーカーを相次いで買収してきた。今後は国内外に向けてわれわれの製品や技術をこれまで以上に発信する必要がある。そのため、需要創出と物流に強みを持つ商社が必要だった。Avnetは海外を含めたロジスティクスネットワークの強さが突出している。海外のネットワークを強化するという当社の戦略においては、Avnetは強力な選択肢だった。米国に本社を持つAvnetは、米国半導体業界のカルチャーと日本で特に必要とされる顧客との橋渡し役をこなせる日本的なカルチャーがうまく融合されている。そうした企業カルチャーの点でもAvnetはユニークであり、われわれのような半導体メーカーにとっては貴重な選択肢の一つではないか。

急速な販売戦略立ち上げにも即応できるAvnetの強みとは

――ルネサスはAvnetに対して大きな期待を持っていますね。Avnetの強みをあらためてお聞かせください。

Yun氏 最大の強みは、製品開発の際に企画から設計、試作、量産まで一気通貫でサポートできることだ。そのサポートを世界各国/地域にも横展開できる。「Design local, build anywhere(設計は地元で、量産はどこででも)」というのがわれわれのサービスの基本方針だ。当社はアジアだけでも約500人のFAE(Field Application Engineer)を抱えており、日本企業がタイやベトナム、インドなどに進出する際、日本国内と同様のサポートをシームレスに提供できる。ルネサスが今後、海外展開をさらに強化する上でAvnetは強力にサポートできると自負している。

――ルネサスは、Avnetとパートナーシップを組むことで販売戦略をどのように強化できますか。

長谷川氏 Avnetはラインカードが多く、M&Aを含めたルネサスの製品戦略に連動できる点が魅力だ。ルネサスはマイコンのイメージが強いが、M&Aによってアナログやパワー、コネクティビティなどマイコンとは異なる技術を手に入れてきた。今や「半導体のデパート」と言えるほど多岐にわたる製品群を持っていて、ルネサスのみで全てのソリューションを販売するのは難しくなっている。ラインカードが多いAvnetは、それぞれの分野に精通したエンジニアや営業担当が在籍しているので、さまざまなカテゴリーの製品販売に即座に対応してくれる。M&Aで得た製品群は、販売戦略を急速に立ち上げなくてはならない。そうした中で、Avnetの幅広い分野における高い専門性は心強い。

――ディストリビューター視点で見たときの、ルネサス製品の強みとは何でしょうか。

Yun氏 長谷川氏が話した通り、ルネサスはもともと強みを持っているマイコンに加えてM&Aによって他の分野の製品群を拡充してきた。ルネサスの製品はAIやEVなどの半導体市場の成長をけん引する分野のキーコンポーネントが多く、競争力や訴求力が高い。これはディストリビューターであるわれわれにとっても大きな利点だ。Avnetが扱うその他の製品、例えば受動部品やコネクター、ケーブルなどと組み合わせてソリューションとして提供することもできるだろう。

 ただ、やはりルネサスの製品に期待するのはマイコンやアナログ、パワーといったコア製品だ。われわれは、ルネサスのコア製品にさまざまな周辺部品を組み合わせて付加価値を高めたセットソリューションとして提供できるようになる。ルネサスはSiC/GaNパワー半導体など、5年先、10年先に大きなビジネス機会が見込める技術や製品も手掛けており、こうした点も互いにビジネスを拡大する上で強みになるのではないか。

開発期間を短縮できるワンボードソリューションの開発を加速

――Avnet日本法人がルネサスの製品を扱えるようになることで、エンジニアにどのような利点がありますか。

Yun氏 Avnetの日本法人には100人以上のFAEが在籍しており、マーケティングやセールスチームも充実している。Eコマース事業も拡大し、部品を日本円で購入しやすいシステムも構築した。EコマースにはAvnetのアジア全域で既に6万3000社の顧客データベースがあり、日本の顧客もそうした膨大な顧客データベースにリーチできるようになる。

長谷川氏 利点の一つは、ワンボードソリューションを加速できる点ではないか。どの半導体メーカーも、半導体単体ではなくソリューションとして販売するビジネスにシフトしている。ルネサスも、場合によってはそのまま製品化できるレベルまで作り込めるリファレンスボードやPoC(Proof of Concept)を数多くそろえている。その代表例が「ウィニングコンビネーション」で、これも既に相当数を展開している。このようなワンボードソリューションは特に新興市場で重宝され、ディストリビューターの力を借りて開発することも多い。組み込み向けソリューションの開発をサポートするAvnetのサービス「Avnet Embedded」などはその好例だろう。

 マイコンを中心に、アナログ/パワー、コネクティビティ、センサー、タイミングソリューションなどの周辺もルネサス製品で構成したPoCやソリューションはこれまでも提供してきたが、これらの技術を全て扱えるAvnetとのパートナーシップによって、エンジニアの要求により応えられるソリューションを提供できるのではないか。

――日本のエンジニアにメッセージをお願いします。

Yun氏 日本にも非常に優れた、ルネサス製品に特化したチームが在籍している。エンジニアリングの面で何か課題があれば、すぐにサポートできる体制を日本でも構築している。先ほど述べた通り、「Design local, build anywhere」を生かし、ルネサス製品についても顧客のニーズに応えられるソリューションを提供する。

長谷川氏 ルネサスは、お客さまができる限り最短期間かつ最小限のリソースで最終製品を開発できるソリューションを準備している。さらに、M&Aで統合した技術や製品にも日本の品質を展開したいと考えている。エンジニアリングクオリティーも含めて高い品質を担保したサービスを展開できると確信している。

 ルネサスは日本、シリコンバレー、アジア、欧州にローカルのデザインチームを持っていて、現地の言葉でエンジニアリングサポートを提供できる。顧客の開発拠点が国内外にまたがったとしても、それぞれの拠点をそれぞれの言語でつなげるブリッジの役割も果たしたい。われわれのお客さまが世界で戦えるアプリケーションを開発する上での“バイタルソリューションプロバイダー”として製品を提供する。Avnetとのパートナーシップによってその戦略をさらに加速できるだろう。

ルネサス長谷川氏とAvnet Yun氏

提供:アヴネット株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2024年12月15日

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