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ナノ欠陥を見逃さない――電子線式パターン検査装置が支える2nm時代の半導体開発担当エンジニアが語る「強み」と「開発現場」

東レエンジニアリングのグループ会社、東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジーが開発する電子線式ウエハーパターン検査装置「NGRシリーズ」は、最先端の半導体開発/製造に欠かせない装置だ。回路パターンにおけるナノレベルの欠陥を可視化し、開発の効率化や歩留まりの向上に大きく貢献する。同社の開発エンジニアが、NGRシリーズの強みと開発現場について語った。

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「ナノレベルの欠陥を可視化する」電子線式検査装置

 スマートフォンなどのモバイル機器から家電、自動車、AIデータセンターまで、社会生活を支える半導体。特に近年は、自動運転車の実現や、AIの性能の向上において、半導体の進化は欠かせなくなっている。半導体の性能向上や高集積化、コスト削減などをさらに実現すべく、回路パターンは微細化が進み、2nm世代に相当するレベルに達している。

 ここで欠かせないのが、ウエハーパターンの検査だ。微細化は半導体の性能向上に大きく寄与する一方で、製造の難易度は高まる。解像限界でパターンを露光するため、わずかなプロセス変動によってパターン短絡などの欠陥が生じ、歩留まり低下を招く。何百もの工程と数カ月の期間を要する半導体製造において、歩留まり低下は経済性を左右する大きな要因だ。そのため、回路が設計通りに描画されているか、パターン欠陥がないかを製造中に検査、計測し、迅速に製造プロセスにフィードバックして歩留まりを向上させることが極めて重要になる。

 こうしたウエハーパターン検査装置の開発を手掛けているのが、東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジーだ。同社は光学式半導体ウエハー検査装置や、電子線式半導体ウエハーパターン検査装置を展開する。光学式は、人間による目視検査を自動化したような原理の検査装置で、電子線式はより高い分解能を備えた検査装置だ。「回路パターンの線幅がナノオーダーになってくると人間の目では到底認識できない。そのため、電子線式ウエハーパターン検査装置の重要性が以前にもまして高まっている」と語るのは、東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー 機械設計部のエンジニアである谷内卓(やち・すぐる)氏だ。

わずかな振動がノイズに 電子線式に求められる高度な制御技術

東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー 機械設計部のエンジニア 谷内卓氏
東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー 機械設計部のエンジニア 谷内卓氏

 東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジーは、電子線式半導体ウエハーパターン検査装置「NGR3500シリーズ」や「NGR5000シリーズ」を2000年代初頭から提供している。開発・試作ラインや量産ラインの両方で使われ、マスク設計/製作や製造工程設計をスピーディに最適化するために使用する。

 ナノオーダーのパターンを検査する電子線式の半導体ウエハーパターン検査装置は、わずかな揺らぎでノイズが発生する極めて“繊細な”装置だ。ノイズは走査電子顕微鏡(SEM)で取得する画像品質の低下に直結する。「装置のステージや測定対象物がわずかに振動しているだけでノイズの原因となる。このような機械振動だけでなく、電気、磁場、音など、ありとあらゆるノイズ発生源がある」(谷内氏)。こうしたノイズを抑え、高精度に測定するためには非常に高度な制御技術が必要だ。このため、電子線式半導体ウエハーパターン検査装置を手掛けるメーカーは国内外でも限られている。

「先見の明」で実現したDie to Database技術

 それに加えて東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジーには大きく2つの強み(コア技術)があると谷内氏は語る。広くてひずみが少ない視野画像の実現と「Die to Database(D2DB)」技術だ。

 NGR5000シリーズの最大視野は70μm×70μmで、画像内歪は0.01%以下だ。独自のSEMとソフトウェアの最適化により、ナノメートルオーダーの画像を広い視野かつ低ひずみで取得できる。

 D2DBは、SEMで取得したダイのパターン画像(Die)と、設計データ(Database)を高速かつ高精度に比較する技術だ。設計データを基準として、全てのパターンを識別し、パターンの位置ずれやパターンエッジの変動を計測する。「D2DBをかなり早い段階から評価に適用していたのが当社だ」(谷内氏)。評価手法としては、製造あるいは試作したダイのみを検査して良品/不良品判定を行う「Die to Die」が一般的だ。だが、最先端の半導体製造プロセスでは、Die to Dieだけでは正確な検査が難しい。「設計通りに回路が描画されているかを正しく検査するには、正しい比較対象が必要だ。設計データとのマッチングが不可欠になる。プロセスの進展とともに設計データとの突き合わせが必要になるという先見性が、当社にはあったのではないか」

最先端検査装置を支える開発現場

 半導体製造を下支えするウエハーパターン検査装置。谷内氏は現在、NGR5000シリーズの機械設計全般とノイズ対策、ステージ制御などを担当している。

 大学院時代は半導体の結晶成長など物理研究に打ち込み、前職でもパワー半導体用のレーザーアニール装置(熱処理用の装置)の開発を担当していた。さらなる技術的挑戦を求め、東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジーに入社したのは4年前だ。

 「半導体の中でも最先端向けの技術開発に関わっているという実感が持てる。その分、仕事の難易度は高いが、挑戦意欲を強く刺激される」と谷内氏は語る。

 前述した通り、NGRはわずかな振動でも性能に影響を受ける繊細な装置だ。目に見えないナノオーダーの振動をいかにデータ化して可視化し、最小限に抑える機構を実現できるか。目の前の課題をひとつひとつ解決しながら、1台の装置開発へとつなげていく仕事に大きな手応えを感じている。

 「1台の装置は機械、電気、制御、ソフトウェアなどあらゆる要素によって構成されている。自分自身、装置の全てを理解するにはまだまだ知識が追い付いていないが、課題を少しずつ解決していくたびに達成感を得ている」

東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー 機械設計部のエンジニア 谷内卓氏

 入社直後に大型プロジェクトに携われる点も魅力の一つだ。「装置名にもなっているNGRという名称は、本装置を開発していたベンチャー企業の名前に由来する。当社にはそのベンチャー気質が受け継がれており、自ら考え主体的に動く姿勢をこれまで以上に意識するようになった。私自身も入社直後からステージ制御の開発を任された」

多様なバックグラウンドを持つ「心強い」メンバー

 所属する開発部門はチーム単位では少人数だが、ベテランから中堅、若手までバランスよく在籍している。各メンバーのバックグラウンドも多様で、半導体関連の他、電子顕微鏡や真空装置の開発経験を持つメンバーもいる。異なる分野の知見を持つメンバーの存在は心強いと谷内氏は語る。

 ベテランの技術者が持つ豊富な知識に驚かされる一方で、若手エンジニアから刺激を受ける場面も多い。「これまでとは異なるアプローチをもたらしてくれる。最近の例を挙げると、大学で3Dプリンターの研究をしていた若手が入社し、装置部品の試作に3Dプリンターを活用することを提案した。導入し始めたばかりだが、開発効率の向上につながる成果に期待している」。谷内氏は、こうした若手が持つ新しい知見と、ベテランが持つノウハウをいかにチーム内で共有するかを常に考えている。それが、開発力や技術力の底上げにつながっていくからだ。

 転職後は自己研鑽に充てられる時間も多くなった。「若手メンバーが中心となり、論文の輪読会も開催している。各自が興味のある論文を持ち寄り解説する形式で、自分自身は目に留めなかったかもしれない論文にも出会える。チームメンバーとともに知識を増やせる有意義な学習時間になっている」

 「強い好奇心を持つほど、装置開発の仕事は面白くなる。多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まるので、分野の異なるメンバーにも理解できる形で説明する力も求められる。ささいなことから大きなことまで課題も多いので、忍耐力も必要だ」

 谷内氏が勤務する新横浜の「横浜技術センター」は、東レエンジニアリンググループにおける半導体検査装置事業やFA(ファクトリーオートメーション)事業の主要拠点だ。新横浜は、半導体関連企業が多く集まる場所でもある。そうした環境の中で、最先端半導体の前工程を支える装置開発に携われることに、谷内氏は大きなやりがいを感じている。

 現在は機械設計の仕事がメインだが、将来的には担当領域をさらに広げたいと谷内氏は意気込む。「装置全体を理解するには、制御技術や電気関連の知識も不可欠だ。機械設計にとどまらず、学習や研究の対象領域を広げながら知識を深めていきたい」

東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー 機械設計部のエンジニア 谷内卓氏

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提供:東レエンジニアリング株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2026年4月18日

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