アナログ半導体を幅広く手掛けるエイブリックは、リチウムイオン電池保護、車載電源、医療・高圧、磁気センサ、バッテリレス漏水センサの5分野に特に注力している。ウオッチ用に始まり半世紀にわたり培われた低消費電力技術を生かし、性能や精度面でお客様に選ばれる高付加価値製品の創出を継続している。エイブリック 取締役執行役員 兼 CPO(最高製品責任者)である花沢聡氏に、市況や製品戦略、開発体制について聞いた。
――足元の業績についてお聞かせください。
花沢聡氏 業績は好調だ。コロナ禍の後は業界全体が在庫を抱え込み、調整局面が続いた。その影響もあり2023〜2025年の間、アナログ半導体市場は横ばいだったが、その最中でもエイブリックは継続的に成長し、2025年度の売上高は前年比10%超の伸長を実現している。「エイブリックでなくては」と言ってもらえる高付加価値の製品を提供してきたことが理由だと考えている。
市場全体を見ると、盛り上がりを感じるのはやはりAI関連だ。既に激しい競争となっているので、迅速に需要に対応していきたい。今後はヒューマノイドロボット、商用ドローン、自動運転にも期待している。
――現在、特に注力している製品や技術を教えてください。
花沢氏 「リチウムイオン電池保護」「車載電源」「医療・高圧」「磁気センサ」「CLEAN-Boost*技術を用いたバッテリレス漏水センサ」の5分野に注力している。実績もあり、さらなる成長も見込める分野だ。中でも高成長を見込むのが、医療・高圧とバッテリレス漏水センサだ。
*)「CLEAN-Boost」は、エイブリックの登録商標です。
医療・高圧分野は、もともと超音波診断装置向けの送信ICに強みを持っていた。2024年12月にソシオネクストからメディカル関連事業を譲受し、低消費電力・小型軽量・高診断画質を実現可能な受信LSIを取得したことで、超音波診断装置向けの送受信トータルソリューションを提供できるようになった。
送受信技術のシナジーにより、エイブリックのハンドヘルド装置向け超音波ソリューション「viewphii*(ビューフィー)」シリーズは確実に進化している。現在、2027年の量産に向け、送信電圧を±100Vまで上げることで体深部の診断画質向上を実現する第3世代品の開発を進めている。2026年11月に出展する「RSNA 2026」(米国イリノイ州シカゴ)では急成長中のハンドヘルド装置向けviewphiiシリーズ、及び従来のカート機向けの更なる高性能・高機能・高信頼性を実現する送信IC/高耐圧スイッチICの製品ラインアップ・開発ロードマップを披露する予定だ。
*)「viewphii」は、エイブリックの登録商標です。
これまでもエイブリックは、お客様である医療機器メーカーとの共創を行い、ニーズに合う製品の迅速な市場投入を進めてきた。医療機器メーカーにとっては、ICの開発段階から評価を始められるので、ICの完成後、速やかに量産に移行できる。それが、医療関連ビジネスが急成長してきた要因の一つであり、今後、さらなる成長を見込んでいる。
蓄電昇圧回路技術であるCLEAN-Boost技術を用いたバッテリレス漏水センサは、水から発生する微小な電力を活用した無線漏水センサで、数滴の水も検出できる高感度、そして誤検出を起こしにくい高確度が特徴だ(記事末尾に解説動画あり)
これまで工場やビルでの導入が多かったが、現在はこれに加え、水冷式AIサーバが増えてきたことでデータセンター向けの需要が大きくなりつつある。漏水センサは他社も手掛けているが、電極間抵抗の変化を利用するものが多い。これに対し、エイブリックのバッテリレス漏水センサは、水と金属の化学反応から漏水を検出する。この仕組みなら、導電率が低い純水にも対応可能だ。さらに電源配線も電池交換も不要なため、広大なデータセンターや欧州のスマートシティ開発における既存インフラへの後付け実装も容易にできる。
国内において、すでに多くの採用事例があり、現在もインフラ施設での実証実験が行われるなど、実績も増えつつある。また、米国・EU諸国の市場においても、通信・安全の規格であるFCC認証の取得を完了し、昨年より販売を開始した。2026年6月には米国カリフォルニア州ロサンゼルスで開催された国際展示会「BOMA 2026」において、バッテリレス漏水センサの海外初出展を果たし大きな反響を呼んだ。
リチウムイオン電池保護は、エネルギー貯蔵システム(ESS)、AIサーバにおける瞬停対策用のBBU(バッテリーバックアップユニット)といった産業機器向けにも提案をしていきたい。車載電源も電気自動車(EV)関連で幅広く使ってもらえるよう48V対応の製品ラインアップを拡充していく。
この医療・高圧分野やCLEAN-Boostを含む5つの注力分野に加え、6つ目、7つ目の柱となる新しい分野も育てていく考えだ。
――製品/技術開発に関連して、他に取り組まれていることはありますか。
花沢氏 全社の売上高に占める新製品の比率を高めることを目指しており、計画どおり順調に推移している。
投資は引き続き、技術や人材へ集中していく。M&Aも高付加価値製品創出の一つの手段だ。また、AIを活用した開発効率化も進めている。AIに設計ノウハウを学習させ、いずれは一通りの工程をこなせるようにしたい。ただし、最終判断は人間が行うことが重要だと考える。セキュリティ上の課題もあるので、EDAベンダーと進め方を相談している。
――半導体業界ではグローバルな競争も激しくなっている中、エイブリックがどのように強みを発揮していくのか、改めてお聞かせください。
花沢氏 エイブリックは、「Small Smart Simple」なアナログ半導体ソリューションでお客様に感動を提供する、というビジョンを大切にしている。もともとはウオッチ用の半導体から出発した企業で、低消費電力であることを重視してきた。それが現在の事業にもつながっている。今後もそうした強みをお客様のためにどう生かせるか、どんな技術を組み合わせれば新しい分野で貢献できるか、常に考えていく。これまで以上に付加価値の高い製品を創出していく。
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提供:エイブリック株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2026年9月30日