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クルマ重視! 早くもみせた“新生・サイプレス”の可能性人とくるまのテクノロジー展2015リポート

スパンションとサイプレス セミコンダクタが経営統合して発足した“新生・サイプレス セミコンダクタ”。“新生・サイプレス”として国内初の展示会出展となった「人とくるまのテクノロジー展2015」での同社ブースの様子をリポートする。

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スパンションとサイプレスの融合

 2015年3月13日、スパンションとサイプレス セミコンダクタが経営統合して発足した“新生・サイプレス セミコンダクタ”。その新生・サイプレスが、2015年5月20〜22日に開催された自動車技術の展示会「人とくるまのテクノロジー展2015」(パシフィコ横浜)に出展した。


「人とくるまのテクノロジー展2015」での“新生・サイプレス”ブース
ブース中央には、次世代クラスタソリューションをはじめ、電源IC、メモリなどサイプレスの車載向けソリューションを統合したコンセプトカーを展示した

 始動からわずか2カ月あまりだが、組込みシステム分野のリーディング半導体メーカーをめざす新生・サイプレスとして、早くも統合両社の強みを融合させた新しい車載向けソリューションのデモを披露し注目を集めた。ここでは、人とくるまのテクノロジー展2015での新生・サイプレスブースの展示の模様をリポートする。

重点を置く車載半導体事業

 新生・サイプレスにとって、車載半導体事業は最も注力する事業の1つだ。

 NOR型を中心としたフラッシュメモリをはじめ、旧富士通/富士通セミコンダクターからの流れをくむマイコン/アナログ半導体を展開してきた従来のスパンションにとって、車載半導体事業は産業機器向け半導体事業と並ぶ主力事業であり、国内外の自動車市場で多くの実績を積んできた。

 一方の旧サイプレスも近年、SRAMやFRAMといったメモリに加え、スマートフォンなど民生機器分野で多くの実績を持つ静電容量式タッチボタン/パネルコントローラやUSB関連製品などの車載用途向け展開を加速させてきた。


補完関係にある両社の技術/製品を融合し、車載、産業機器、民生機器へ展開させる

 そうした車載向け事業に注力する両社が統合した新生・サイプレスでは、車載分野で広く浸透した「スパンション」の名をブランドとして維持しつつ、補完関係にある旧スパンション/旧サイプレスの製品/技術を融合させて、車載市場で新たな価値提案を行おうとしている。

今後も継続していく分野

 2015年5月20〜22日に開催された「人とくるまのテクノロジー展2015」で、デモを披露した次世代クラスタシステムも、新生・サイプレスにおいても、継続・推進するソリューションだ。


次世代クラスタのデモ展示 (クリックで拡大)
クラスタ中央のディスプレイには3Dグラフィックスによる各種車体データが表示され、ヘッドアップディスプレイ(写真上部)には、ナビゲーション情報が表示されている

 クラスタシステムは近い将来、スピードメータや燃料計といったアナログメータとともに、4〜7インチ程度の液晶ディスプレイを搭載し、2D/3Dグラフィックスでさまざまな情報を表示するようになる見込みだ。さらに、ヘッドアップディスプレイ(HUD)と連動して、音声案内を含めたナビゲーションシステムなどもクラスタが制御するようになる。しかも、こうした情報を一元的に、グラフィカルに表示する次世代クラスタの導入は、一部の高級車に限ったことではなく、コンパクトカーを含めたあらゆる自動車に当てはまるという。

 新生・サイプレスが人とくるまのテクノロジー展2015で紹介した次世代クラスタシステムは、ミッドレンジからローエンドのクルマ、いわゆる大衆車にも適用可能なソリューションだ。HUDを含めた2つのディスプレイでの2D/3Dグラフィックス表示、音声処理、アナログメータ用ステッピングモータ制御といった次世代クラスタに要求される機能を、現状のクラスタと同様、マイコンベースで実現したのだ。

あらゆる車種の次世代クラスタをTraveoで

 そのマイコンが、ARMのプロセッサコア「Cortex-R5」を搭載する高性能車載マイコン「Traveoファミリ」の「S6J32xxシリーズ」だ。

 ハイエンドの「S6J326C」では、Cortex-R5の最大動作周波数は240MHzを誇る。内蔵メモリは、プログラム格納用のフラッシュが2Mバイト、RAMが256Kバイト、グラフィックス処理用のVRAMが2Mバイトと大容量だ。これに2D/3Dグラフィックスを処理するためのハードウェアエンジンや、2チャンネルのディスプレイコントローラ、A-Dコンバータなどのアナログ回路、車載セキュリティコア「SHE(Secure Hardware Extension)」、CAN FDやEthernet AVBなど各種車載ネットワークに対応する制御回路、音声処理回路などを集積している。


「S6J32xxシリーズ」の機能

 3Dグラフィックスエンジンは一般に外付けDRAMを必要とし、システムコストの増大を招く一因となっている。だが、S6J32xxシリーズは、フラッシュメモリ用の高速インタフェース技術「HyperBus」を搭載したことにより、外付けDRAMではなく外付けフラッシュメモリだけで3Dグラフィックス処理が行える。フラッシュメモリであれば、DRAMよりも接続端子数を少なくでき、パッケージを簡素化し、さらにはプリント配線板の層数を削減できるなどシステムコストを抑えられるメリットがある。

 また、S6J32xxシリーズには、動作周波数を200MHzや160MHzに抑えると同時に、ディスプレイコントローラを1チャンネルにしたり、グラフィックス処理エンジンも2Dに絞ったりした「S6J32BA」や「S6J32DA」などもそろう。いずれのマイコンも全てピン互換であり、S6J32xxシリーズだけでハイエンドからローエンドまであらゆる車種の次世代クラスタをカバーできる点も大きな特長だ。

融合で生まれる新提案


次世代クラスタに取り付けられたクラスタ操作用静電容量ボタンユニット

 そして新生・サイプレスは、グラフィックス表示が行える次世代クラスタを、システムコストを抑えて実現するTraveoファミリS6J32xxシリーズのソリューションをさらに進化させた。クラスタが高性能・多機能化するに従いより重要になるクラスタのヒューマンマシンインタフェース(HMI)に着目。S6J32xxシリーズに、より直感的なHMIを実現する静電容量ボタンの制御ソリューション「CapSense」を連携させたのだ。

 CapSenseは、機械式ボタンからデザイン性に優れ、故障率の低い静電容量式ボタンへの置き換えの流れを加速し、これまで白モノ家電や民生機器分野を中心に業界トップクラスの採用実績を誇る静電容量ボタン制御ICだ。

 プログラマブルシステムオンチップ「PSoC」に代表される旧サイプレスのミックスドシグナル プログラマブル技術がベースで、さまざまな形状、特性の静電容量ボタンにソフトウェアの変更だけで対応できる利便性を備える。さらには独自センシングアルゴリズムにより、水による誤検知防止機能や近接検知機能を実現しやすいなどの特長により、近年は車載用途でも採用が拡大してきている。

融合で広がるTraveoファミリの可能性

 新生・サイプレスでは、この旧サイプレスのCapSenseと、旧スパンションのTraveoファミリS6J32xxシリーズを連動させ、静電容量ボタンによって、クラスタ上のグラフィックスの視点を自在に変更できるデモを人とくるまのテクノロジー展2015で披露した。わずか2週間程度とかなり限られた開発期間だったにもかかわらず、違和感のない連携を見せ、TraveoファミリとCapSenseという両技術の相性の良さを早くも感じさせた。

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次世代クラスタのデモ
クラスタ左下に取り付けられた静電容量ボタンを操作し、クラスタ中央のディスプレイの3Dグラフィックスを操作している

 「旧サイプレス、旧スパンションの製品は、TraveoファミリとCapSenseのように、補完関係にあるものばかり。今後は、より両社の技術を融合した新しい製品を紹介できるだろう」とし、Traveoファミリに、CapSenseやUSB Type-Cコントローラなど旧サイプレスが得意とする技術を集積した製品の開発を検討しているようだ。

充実の車載メモリ


フラッシュメモリ、FRAMなどがそろうサイプレスの車載用メモリに関するパネル展示 (クリックで拡大)

 また、人とくるまのテクノロジー展2015では、新生・サイプレスとなって、より豊富になった車載向けメモリポートフォリオもアピールした。

 一般的なQuad-SPI(Serial Peripheral Interface)に比べて5倍の速度を実現する高速インタフェース技術「HyperBus」に対応したメモリ「HyperFlash」をはじめ、1014回というほぼ無制限の書き換え回数から走行情報取得用メモリなどで採用が拡大中のFRAMなど多彩な車載対応メモリを展示。FRAMではこのほど産業機器用途など向けに4Mビットの大容量品のサンプル出荷を開始しており「今後、車載用途での大容量ニーズにも応えていく」としている。

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Quad-SPIと高速インタフェース技術「HyperBus」の画像転送速度比較デモ
動画前半のQuad-SPIによる転送よりも、動画後半のHyperBusによる画像転送が明らかに速いことが分かる

新生・サイプレスとしても変わらぬ開発姿勢

 その他、2015年2月に新たに参入した車載向け電源ICの展示も実施。「ADAS(先進運転支援システム)に必要とされる全ての電源を1チップで供給できる」をコンセプトにした2次電源用マルチチャンネルDC-DC型パワーマネジメントIC「S6BP401A」に続き、このほど開発した1次電源用DC-DCコンバータIC「S6BP20xA」を紹介した。


ADASに必要な1次電源、2次電源の双方がそろったサイプレスの車載用電源ICの展示 (クリックで拡大)

 S6BP20xAは、エンジン始動時などで、セルモータを駆動した際にバッテリの出力電圧が一時的に大きく降下するコールドクランク時でも安定して出力を継続できる昇降圧型が特長。ブースでは、従来ソリューションと、S6BP20xAを比較展示し、コールドクランクを意図的に起こしても、電源を安定供給し続ける様子を分かりやすくデモした。「Traveoファミリや各種車載メモリ同様、新生・サイプレスとして、車載アナログICの強化も継続していく」としている。


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提供:日本サイプレス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年6月26日

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