マイコンで実現する高性能ホームサーバと電池レスセンサーによる“Connected Life”:汎用マイコン1つでセンサー監視からWebサーバ、暗号化まで
Spansion(スパンション)は、IoT(Internet of Things)実現に向けたさまざまなソリューションの開発に取り組んでいる。このほど、マイコンベースの高性能ホームサーバや電池レス無線センサーを開発し、“Connected Life”を実現するソリューションとして提案を行っている。
家庭でのIoT普及を後押しするソリューション
あらゆる機器やモノがインターネットに接続される「Internet of Things」(IoT)。各家庭にIoTの技術を導入し、より快適で安心な暮らしを実現しようという動きが活発化している。
具体的には、温度や湿度、照度などの環境センサーや人感センサー、カメラなどを家の至る所に設置し、それらの情報をベースにさまざまな機器を制御したり、情報を外出先に伝送したりするような機能を実現する家を目指す動きだ。
マイコン、アナログIC、メモリといった組み込み機器に不可欠な半導体を提供するSpansion(スパンション)はこうした、IoTを駆使して暮らしをより快適、安心なものにする“Connected Life”に向けたさまざまなシステムソリューションを開発している。
そして、2014年11月に行われた「組込み総合技術展/Embedded Technology 2014」(ET2014)で、“Connected Life”を実現するシステムソリューションの一例として、高性能ホームサーバと電池レスセンサー端末による次世代リビングソリューションを公開した。
マイコンでより手軽に
家庭にいくつものセンサーが設置された場合、それらセンサーの情報を収集、処理するホームサーバが必要になる。ホームサーバはセンサーデータの収集、処理だけでなくより詳細なデータ分析を行うためのクラウドサーバへの転送機能や、スマートフォンやタブレット端末などからデータを閲覧するためのWebサーバ機能などを備えなければならない。そのため、これまで開発されてきたホームサーバは高性能な組み込みプロセッサを搭載したいわばPCの構造に近い大掛かりで、高価な機器となりがちだった。
ホームサーバの普及の足かせとなり得る“大掛かり”“高価”といった課題を解消したのが、スパンションがET2014で公開した高性能ホームサーバだ。
このホームサーバが中核デバイスとして搭載したのは、大規模なSoC/組み込みプロセッサではなく、ARM Cortex-M4コアベースのマイコン「FM4ファミリ/S6E2CC」。いわゆる汎用マイコンで、高性能ホームサーバを実現したのだ。
200MHzの高性能、多機能マイコン「FM4ファミリ/S6E2CC」
というのも、このS6E2CCは、これまでのマイコンとは一線を画す高性能マイコンであり、マイコンの応用範囲を広げるデバイスとして注目を集めている。
動作周波数は、マイコンながら最大200MHzを達成し、内蔵するメモリ容量はフラッシュメモリ2Mバイト、RAM256Kバイトで、従来のマイコンの2倍程度に相当する大容量メモリを搭載する。さらに特徴的なのが、インタフェースなどペリフェラルの多さだ。イーサネットMACをはじめ、CAN-FD、CAN、USB(Full Speed)×2ch(Host+Device)、HDMI CEC×2ch、High Speed Quad SPIの他、UART/SPI/I2Cといったシリアルインタフェースを自由に選択できる「マルチファンクションシリアル(MFS)インタフェース」を16ch搭載している。
組み込みLinuxを実装
ET2014で展示されたホームサーバは、S6E2CCの高い処理性能と大容量メモリを生かし、マイコンながら組み込みLinuxをポーティング。Linux、Linux用ミドルウェアといったオープンソースで手に入れることのできるソフトウェア資産をフルに活用し、スマートフォンなどからアクセスできるWebサーバ機能までを実装した。なお「一部ファイルシステム以外のほとんどのソフトウェアはS6E2CCの内蔵メモリに実装した」(スパンション)とし、外付けに大容量メモリを加えることなく、組み込みLinuxを搭載できる。
センサーとの接続は、16ch備えるMFSインタフェースを活用してBluetooth Low Energy(以下、BLE)モジュールとUART接続して、複数のBLE対応ワイヤレス温度センサーから収集し、S6E2CC上で温度情報に変換処理する。
暗号化はハードマクロで
通常のマイコンでは、複数のセンサーデータの取り込みと、処理量の重いWebサーバ機能を同時に行うようなことは不可能に近いが、S6E2CCでは動作周波数を160MHzに抑えた状態でも処理遅延なくリアルタイムに実行可能だ。さらにET2014で披露したデモでは、データ取り込み、Webサーバ機能とともに、クラウドサーバにデータを暗号化して転送する処理も同時に実施。暗号化処理は、Webサーバ機能同様、マイコンにとっては重い処理だが、S6E2CCはハードウェア暗号マクロを搭載し、プロセッサのリソースを使うことなく暗号化が行えるのだ。
スパンションでは、「これらの処理に加え、S6E2CCが持つCAN FDインタフェースや0.5μsという高速サンプリングを実現する12ビット分解能A-Dコンバータ、豊富なタイマを生かした高精度なモータ制御も同時に行える能力があり、温度などさまざまな環境データに応じた空調の調整などを直接行えるホームサーバも実現できる」とし、さらなる高性能サーバもS6E2CCで作ることができそうだ。
エネルギーハーベスティングでセンサー実現
マイコンベースの高性能ホームサーバで、“Connected Life”の実現に一歩近づいたが、“Connected Life”でもう1つ問題となるのが、センサーだ。センサーが多ければ多いほど、さまざまな情報が集められ、ホームサーバなどでの各種制御が高精度化される。しかし、多数のセンサー設置で表面化する問題が、電源だ。センサーを設置場所の近くに電源コンセントがあることは約束されておらず、センサーの多くはバッテリー駆動を求められる。しかし、バッテリーは寿命があるため、交換の必要があり、多くのセンサーを設置した場合、交換の手間は無視できないほど大きくなるだろう。
そこで今回、スパンションは、S6E2CCベースのホームサーバに接続したBLE対応ワイヤレスセンサーをバッテリーレス、メンテナンスフリーのエネルギーハーベスト駆動型センサーで実現した。
タグ型の電池レスBluetooth Low Energy対応センサーモジュール(手前)で温度センサーを備えるもの。左上の筐体が外され基板が見えるセンサーは、USB電源で動作させたセンサーで5秒間隔の高頻度でデータの無線通信を行ったが、S6E2CCはリアルタイム性を維持して処理した (クリックで拡大)
タグ型形状の同センサーは、太陽電池のエネルギーだけで、センサーおよびBLE通信機能を駆動するもの。同センサーには、スパンションの独自技術を駆使した超低消費電力のパワーマネジメントICを実装し、太陽電池の発電量が小さくても、安定的にセンサー、BLE通信を行えるようになっている。ET2014のデモでは、30秒〜1分間隔で自らセンシングした温度データをBLEでホームサーバに無線伝送した。
開発キットやデモソフトも順次提供へ
スパンションでは、ET2014で展示したような高性能ホームサーバ、電池レスセンサーを開発しやすいようさまざまな開発環境を提供していく方針。既にタグ形状の電池レスセンサー端末は、スタータキットとして販売を行っている他、ホームサーバデモに用いたS6E2CC搭載ボードも2015年1〜3月にリファレンスボードとして発売する。さらに、デモで用いたソースコードに関しても、マイコン/アナログ/メモリの情報サイト「Embedded Innovations」などで順次公開していく予定だ。
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提供:Spansion Inc.(スパンション)
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年1月14日