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1cm角サイズで電池レス無線センサーモジュールが作れる! 新発想の電源ICが登場エナジーハーベストのために生まれて来たPMIC

マイコンに、温湿度センサーを搭載するBluetooth Low Energyモジュールが、たった1cm角サイズの太陽電池だけで動作する――。メンテナンスフリーで注目を浴びるエナジーハーベスト(環境発電)だが、これまではどうしても太陽電池などの発電素子がかさばり、かつ、動作も不安定だった。こうした問題を一気に解決し、小型太陽電池で無線センサー端末を実現する全く新しいパワーマネジメントIC(PMIC)が誕生した。IoTの核となる無線センサー端末の常識を大きく変えるかもしれない。

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課題が多かった無線センサー端末、エナジーハーベスト

 太陽電池で動く1cm角サイズの無線センサー端末が作れます!

 IoT(モノのインターネット)の普及が見込まれる中で、さまざまな情報を検知し、データを自動的に伝達する無線センサー端末も爆発的に増えていくと予想されている。わずか5年ほど後には、世界中で50億個の無線センサー端末が利用されるとの予測(On World社2014年の市場調査より)もある。そうなれば、恐らく身の回りの至る所に、無線センサー端末が設置されているだろう。


無線センサーネットワーク(WSN)の普及が見込まれる主な用途市場

 しかし、どこにでも無線センサー端末を置くには、いろいろな技術課題を克服しなければならない。

 例えば、部屋の温度/湿度を計測だ。温度/湿度を計測する場所、すなわちセンサーを増やせば増やすほど、より最適な空調制御が行え、部屋の中での寒暖差はなくなり、均一な快適性が保たれるだろう。けれども、センサーの数がが増えるほど、目障りで邪魔な存在になり、部屋としての快適性が損なわれるのは明白だ。

 多くのセンサーにケーブルを接続するのも難しい。当然、データ通信は無線化されるだろう。問題は電力だ。電力線を引くことはもちろん、電池駆動にしても、一定期間で交換が必要になる。多くのセンサーの電池交換は手間だ。

 そこで、最近、注目されているエナジーハーベスト(環境発電)の利用が有力視される。身の回りの光や振動、温度などのエネルギーを電力に変え、無線センサー端末を動作させようという発想だ。しかし、光や振動、温度から発電する環境発電素子の発電効率は極めて低い。発電効率の低さは、発電素子の大きさでカバーしなければならず、エナジーハーベスト技術を用いた無線センサー端末のサイズは大きくなる傾向にあり、さらに目障りな存在になってしまっている。

小型とメンテナンスフリーを両立するPMIC

 小型サイズとメンテナンスフリーを両立しない限り、無線センサー端末、強いてはIoTの実現は難しいのだ。

 八方ふさがりともいえる無線センサー端末の状況を一変させるかもしれないデバイスが登場した。現状の低発電効率の発電素子を用いても、目障りにならない小型サイズの無線センサー端末を実現するのが、「S6AE101A」だ。


エネルギーハベスティングPMIC「S6AE101A」の概要 (クリックで拡大)

 環境発電素子の大きさを決める要素は、意外に思われるかもしれないが、パワーマネジメントIC(PMIC)なのだ。無線センサー端末での電力消費の大部分は、センサーやセンサーを制御するマイコン、無線回路だ。しかし、そうした大きな電力を必要とするデバイスでも、発電素子からの微弱な電力を、デバイスが動作できる電力にPMICが変換し、蓄電さえすれば、動く。言い換えれば、PMICさえ動作すれば、無線センサー端末は動くのだ。

起動電力は、わずか1.2μW!

 その中でサイプレスがこのほど発表したS6AE101Aは、より微弱な電力で動作するPMICをコンセプトに開発されたデバイスだ。起動に必要な電力は、1.2μW。この電力値は、わずか1cm角サイズの太陽電池に薄暗い室内光(65lux)を当てた時に得られる電力値に相当する。すなわち、1cm角の太陽電池さえあれば、非常に薄暗い室内環境であっても、無線センサー端末が動作させられるのだ。


従来のエナジーハ−ベスティングPMICと「S6AE101A」との比較 (クリックで拡大)

 これまでも多くの電源ICメーカーが、エナジーハーベスト用途向けに起動電力を極力抑えたPMICを発表してきた。しかし、その多くは、十数μWの起動電力を必要とし、最も低いPMICでも5μW程度と、S6AE101Aに比べ5倍程度大きな発電素子が必要になった。


従来のエナジーハ−ベスティングPMICと比べ大幅な小型化が図れる「S6AE101A」。たった1cm角サイズで、温湿度センサーを搭載したBluetooth Low Energy対応センサー端末が実現可能だ (クリックで拡大)

これまでの常識を覆す新発想PMICの誕生

 では、なぜS6AE101Aは、これほどまでに起動電力を低減できたのだろうか。

 同社アナログ事業部関根景太氏は「従来のPMICの発想を捨て、無線センサー端末用途のためだけに、最適化したことで実現した」と説明する。

 最適化した要素の1つが、対応する環境発電素子の種類だ。従来のエナジーハーベスト向けPMICの多くは、1つのICで、直列セル太陽電池や単セル太陽電池(色素増感太陽電池)、圧電素子、熱発電素子などさまざま存在する発電素子の複数に対応するように作られている。しかし、関根氏は「実際には、発電効率、コスト、入手性などの用件から、直列セル太陽電池を使う場合がほとんどだった」とし、S6AE101Aは、直列セル太陽電池専用の降圧型PMICに注力した。

 そして、起動電力低減につながる最大の特徴が、「従来のDC/DCコンバータ方式を採用しなかったこと」にある。一般的には、DC/DCコンバータを使用することで、入力される不安定な電力を、その後段のセンサーやマイコンなどの負荷が求める安定した電力に変換し、高効率で安定供給するのが最大の役目であるにも関わらずだ。

 S6AE101Aは、起動電力を極限にまで抑えるため、電力消費の大きいスイッチング方式をあえて採用せずに、バイパスコンデンサと半導体スイッチだけで、降圧し電力供給する原始的ともいえるスイッチトキャパシタのような変換方式を採用。入力電力をコンデンサに蓄電し、電圧値を見ながら負荷への供給をオン、オフ制御する。規定の電圧範囲ならオンして、負荷へ電力供給し、コンデンサからの電圧が低下すればオフして、電圧回復を待つというシンプルな動作だ。

 しかし、シンプルでありながら、極限まで消費電力を切り詰めることで、起動電力1.2μWを実現している。

実使用に即した“使えるPMIC”

 こうしたシンプルな仕組みが故に、従来のPMICとは大きく異なる点がある。一般的なDC/DCコンバータ方式を採用したエナジーハーベスト用PMICは、出力電圧精度5%で一定値を出力する。

 一方で、S6AE101Aは、出力する電圧の上限値、下限値の2値を設定する。出力電圧の幅を設定するというわけだ。例えば、後段のシステムが3.3V系であれば、そのシステムが動作可能な電圧幅を設定する。3.3Vを上限値、下限値を2.8Vといった具合だ。こうすることで、エネルギーハーベストで蓄電したエネルギーを、後段のシステムが動作する電圧領域で無駄なく供給することが可能になる。果たして、このようなPMICは使えるのだろうか。


アナログ事業部 関根景太氏

 しかし、関根氏は全く意に介さない。「マイコンの多くは、広範な入力電圧範囲をもつものがほとんどであり、無線センサー端末のシステムで考えても、問題はない。むしろエナジーハーベストを有効活用したいのであれば、そのようなシステム設計をすべきである」と言い切る。

 3.3Vの出力設定で、0.5V以上も電力が振れても、「実用上問題ない」と断言する背景には、2014年に発売したエナジーハーベスト用PMIC「MB39C811」での実績がある*)。MB39C811は、スイッチング方式を用いた超低消費電力DC/DCコンバータ。その特長の1つがPowergood機能にある。

*)イオン ショッピングモールなどのWSNに採用されている。

 Powergood機能は、PMICの出力電圧が規定の範囲内にあるかどうかの良否判定の信号を出力する機能であり、マイコンなどに通知するために用いられる。一般的なPMICには搭載されている機能だ。

MB39C811の応用回路例では、この信号を使用し、外付けのパワーゲーティングスイッチのOn/Off制御に使用することを提案している。規定の出力電圧を満たしていれば、スイッチをOnさせ、後段へ電力供給を行う。逆に満たしていなければ、電力供給を遮断し、蓄電に専念させるためだ。

 多くのPMICのPowergood機能は、規定の出力電圧の95%以上で良、未満で否の判定を行うのが一般的だ。これに対し、MB39C811は94%以上で良、70%未満で否という非常に特殊な判定を行っている。このPowergood機能とパワーゲーティングスイッチとを組み合わせることで、後段負荷へ供給するエネルギー量を十分確保する事が可能になる。「結局のところ、5%程度の電圧低下で供給を止めていると、エネルギーとしての供給はわずかであり、エネルギーハーベストとしては、実使用に耐えなかった。それに対し、MB39C811のPowergood機能は、供給するエネルギー量を確保し、システムの安定動作を実現する機能として、受け入れられ、さまざまな場所でのエナジーハーベスト活用型ワイヤレスセンサーシステムの実証実験で利用される要因になった」と語る。こうしたMB39C811での経験からS6AE101Aは、生まれたのだ。

 コンデンサとスイッチだけで構成する変換方式は、起動電力を大幅に低減しただけでなく、スイッチング方式では不可欠なコイルも不要にできる利点がある。さらに、MB39C811では外付けだったパワーゲーティングスイッチを内蔵。こうしたことから、実際にS6AE101Aは、太陽電池を含め、1cm角、高さ8mm程度のサイズでBluetooth Low Energy(BLE)対応温湿度センサー端末を実現している。


「S6AE101A」を使って試作した1cm角無線センサーモジュールのデモの様子。部屋の温度を検知し可視化するシステムを模したデモで、熱源(ホットコーヒー)に近い中央のセンサーが高い熱を検知し、PCの画面でも中央部分の温度が高い様子が表示されている (クリックで拡大)

高精度センサーなどに対応するLDO内蔵タイプも

 入力電圧が多少振れても動作するデバイスは多いものの、高精度センサーなどでは安定した電圧供給が必要な場合もある。そこで、サイプレスでは、S6AE101Aに、出力精度±5%のLDOレギュレータを追加したS6AE102AとS6AE103Aも製品化している。S6AE102AとS6AE103Aには、LDO以外にも、センサー入力からパワーゲーティングスイッチのオンオフ制御を行うなどの用途向けのコンパレータを内蔵。さらにS6AE103Aは、CRタイマーを搭載し、パワーゲーティングスイッチを時間制御することも可能だ。


サイプレスのエナジーハーベスティングPMICの製品ポートフォリオ (クリックで拡大)

 その他、3製品ともに、入力系統/出力系統をそれぞれ2本持つ点も特長。入力2系統には太陽電池と一次電池をつなげられ、太陽電池での発電が獲られない場合のバックアップとして、一次電池から電力供給することもできる。出力系統も2本あることで、通常は小容量のコンデンサに出力するが、そのコンデンサが満充電の場合、大容量の電気二重層キャパシタへの出力系統へと切り替えるといったことができ、発電電力を無駄にしない運用ができる。発電が獲られなくなった後は、電気二重層キャパシタからの供給で一定時間電力供給を継続することができるというわけだ。

 S6AE101Aの入力電圧範囲は、2.0〜5.5V。出力電圧範囲は1.1〜5.2V。静止時消費電流は250nAで、動作時消費電流も「ほぼ導通損失のみであり、静止電流とほとんど変らない」としている。

使えるPMICのための、使いやすい開発環境

なお、サイプレスでは、S6AE101Aを使用した開発環境として、開発キットとオンラインシミュレータを用意している。

 開発キットは、サイプレスのPRoC BLEチップを内蔵したEZ-BLE PRoC Module、S6AE101Aと温湿度センサーを搭載した送信機ボード、受信機用BLE-USBブリッジ(PC接続用USBドングルタイプ)、200luxで55uWの電力が発電できる直列セル対応電池などが同梱され、すぐに、S6AE101Aを使った無線センサー端末を評価、開発が行えるようになっている。

左=「S6AE101A」の開発キットの概要 / 右=オンラインシミュレータ「Easy DesignSim」でのエネルギーバジェット計算ツールの概要 (クリックで拡大)

 また無償のオンラインシミュレータ「Easy DesignSim」で、発電量と負荷のエネルギーのバランスを最適に調整するためのエネルギーバジェット計算ツールを用意。複雑な同計算を、発電素子や負荷の条件を数値入力することで、最適な出入力コンデンサの容量が導き出せるなどする。


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提供:日本サイプレス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年9月30日

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