高リニアリティ・フォトカプラHCNR201/200を用いたアナログ・アイソレーション:高い柔軟性で電圧/電流検出や電流ループなどに対応
HCNR201/200アナログ・フォトカプラは、1つのLEDと厳密に整合した2つのフォトダイオードで構成され、高い線形性と安定したゲイン特性を実現する。ユニポーラ/バイポーラ、AC/DC、反転/非反転構成などのさまざまなモードで動作できる柔軟性も備え、電圧/電流検出や電流ループなどのさまざまな産業アプリケーションに適している。
はじめに
アナログ・アイソレーションは、モータ駆動や電力監視などに幅広く必要とされています。これらのアプリケーションでは、一般的に、速度、強度または他の調整にアナログ電圧制御が使用されています。
HCNR201/200アナログ・フォトカプラは、通常、アプリケーション回路のフロントエンドモジュール内のアナログ信号を分離するために使われています。このフォトカプラは、アナログ入力とA/Dコンバータとの間に入れられて、アナログ入力をミックスド・シグナルADCや他のデジタル回路から分離します。HCNR201/200は、アナログ・アイソレーションにおける問題の多くにとって優れたソリューションです。
主な特長と仕様
HCNR201/200アナログ・フォトカプラは、図1のブロック図に示すように、1つのLEDと2つのフォトダイオードPD1およびPD2で構成されています。アプリケーション回路の入力側のPD1と出力側のPD2の2つのフォトダイオードは厳密に整合されています。フォトダイオードの出力電流は、LEDの光出力と線形関係にあります。入力フォトダイオードPD1があるため、LEDの状態を直接監視でき、LEDの光出力が安定します。厳密に整合した2つのフォトダイオードと適切なアプリケーション回路によって、HCNR201/200は、高い線形性と安定したゲイン特性を達成することができます。HCNR201/200を使用する利点は、ユニポーラ/バイポーラ、AC/DC、反転/非反転構成などのさまざまなモードで動作できる柔軟性にあります。HCNR201とHCNR200は両方とも、400mil DIP8ワイドボディ・パッケージで提供されます。
HCNR201/200高リニアリティ性能をもったアナログ・フォトカプラの主な特徴と特性は、次の通りです。
- 低コストのアナログ・アイソレーション、高リニアリティ、2つのフォトダイオードへのアクセスが容易な柔軟設計
- 緊密なK3(IPD2/IPD1)変換利得-入力フォトダイオードPD1に流れる電流と出力フォトダイオードPD2に流れる電流の比。これは、2つのフォトダイオードがどれだけ整合しているかを示しています。
- 低い非線形性−5nAから50μAのIpd2対Ipd1プロットから描かれた「ベストフィット」直線のフルスケール出力の最大偏差(%)。この直線は、5nAから50μAまで等間隔の11個の点を利用して描かれます。ベストフィット直線に対するIPD2の誤差が、ベストフィット直線上下の偏差です。
- 低い変換利得温度係数−K3対温度プロットの勾配。これは、温度変化に対する変換利得を示しています。
- 広い帯域幅:DC〜1MHz
- 強化絶縁に関するIEC60747-5-5認証。HCNR201/200は、連続動作電圧が1414Vpeak、過渡電圧が8kVpeakです。
HCNR201/200を使用して高速と低コストを実現
アバゴ・テクノロジーは、HCNR201/200を使用し、信号分離を提供するさまざまな回路を取りそろえています。それらの回路は、モータ駆動、スイッチドモード電源、トランスジューサ、電流ループなどの産業用途で使用されています。
HCNR201/200は、さまざまな回路構成で使用されます。図2は、HCNR201/200を使用した高速と低コストの回路構成を示し、1.5MHzの高帯域と安定したゲイン特性を達成しています。高帯域、高速および低コスト・ソリューションを必要とするアプリケーションでは、個別トランジスタだけで構成されたこのオペアンプなしの回路が適しています。ただし、高帯域と速度を達成するには精度とのトレードオフが必要です。この構成は、一般に、スイッチドモード電源のフィードバック経路で使用されます。伝達関数は、次の式で表されます。
VOUT/VIN=R2/R1
サーボモータ、インバータおよび電源の電圧監視
HCNR201/200は、サーボモータ、インバータおよび電源用途においてフィードバック・ループで電圧を監視するために使用されます。
HCNR201/200を使用する利点は、温度、経年劣化または他の非線形作用によるLED特性のドリフトが補償されることです。この製品はサーボ・モータ駆動用途では、フィードバック経路に入力側のフォトダイオードを入れてオペアンプなどの外付部品を使用してLEDに流れる電流を制御することにより使用されます。これを図3に正入力電圧VINとして示します。バイポーラ入力回路は、2つのHCNR201または2つのHCNR200を使用します。キャパシタC1は、安定性を高める補償キャパシタです。2つのオペアンプLM158は、1つのデュアル・チャネル・パッケージ内の2つのチャネルではなく2つの個別パッケージであり、そうでないとガルバニック絶縁を実現することができません。
入力フォトダイオード電流IPD1=VIN/R1です。R1=80kΩで線形性を実現するために、入力電圧VINは、データシート規定の最大フォトダイオード電流を50μAに維持したまま、最大4Vにならなければなりません。このアプリケーション回路の線形伝達関数は、次の式で示されます。
VOUT/VIN=K3*R2/R1
上式はLEDの光出力に依存しないため、VINとVOUTは線形関係になります。増幅器回路の利得は、R1とR2の比率によって調整することができます。
電流ループ
電流ループは、センサー信号を送るための標準的な方法です。電流ループは、長いケーブル長を必要とする、または高い電磁干渉が存在する産業環境で適しています。センサー段からコントローラ(PLC、PC)までの距離は、長距離になることがあります。機器を保護するには、高電圧絶縁またはガルバニック・アイソレーションが必要です。電流ループには、アナログ(線形電流がアナログ信号を表す)、ロジック(高および低ロジック・レベルがそれぞれMARK状態とSPACE状態を表す)、およびHARTR(Highway Addressable Remote Transducer)通信プロトコルを使用するアナログ・デジタル混合電流ループのいくつかのタイプがあります。電流ループは、電圧信号と比較して、ラインインピーダンスからのノイズとエラーの耐性、無損失長距離伝送、低EMI感度という利点があります。
トランスミッタ回路
図4から、ツェナーZ1は、ループ側オペアンプIC2に必要な電圧を安定供給します。そのためループ側は、ループ電流によって電力供給され、独立した電源が不要です。
ILOOP/VIN=K3*(R2+R3)/(R2*R1)
4〜20mAの電流ループ・トランスミッタで、R2=25Ω、R3=10kΩ、R1=80kΩが選択された場合、抵抗値は、入力電圧が0.8Vのときにループ電流が4mAになるように選択されます。また、入力電圧が4Vのとき、ループ電流は20mAになります。(伝達関数, K3=IPD2/IPD1=1).
評価基板
HCNR201/200アナログ・フォトカプラの評価基板をアプリケーションに実装し、評価の時間を短縮することが可能です。HCNR201/200アナログ・フォトカプラは、電圧/電流検出や電流ループなどのさまざまな他の産業アプリケーションに適しています。評価基板をお求めの場合はアバゴ・テクノロジーの代理店にお問い合わせください。評価基板ユーザー・マニュアルは、www.avagotech.com/docs/AV02-1134ENからダウンロードすることが可能です。
スパイス・モデル
スパイス・モデルは、HCNR201/200 ACおよびDCデータシート仕様に準拠しており、回路性能をできるだけ正確に予測することができます。HCNR200スパイス・モデルは、インターネットからダウンロードすることが可能です。さまざまなアバゴ・テクノロジー回路構成のスパイス回路シミュレーションは、www.avagotech.com/docs/AV02-3334ENからダウンロードすることが可能です。
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提供:アバゴ・テクノロジー株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年12月31日