欧州に半導体サプライチェーンは戻るか ドイツ発メモリ新興が鍵:今が「最後のチャンス」?(1/2 ページ)
世界各国で自国内への半導体製造回帰への動きが強まり、地政学的緊張から「今が最後のチャンス」とも目される中、欧州に不足しているのはメモリ製造だ。独自技術を有するドイツの新興企業に注目が集まっている。
半導体業界が欧州を実質的に離れることになったのは、一般に人件費などのコストが高かったためだといわれている。しかし、それは事実ではない。本当の理由は、半導体業界の発展には巨額の投資、金融機関や大手企業からの強力な支援が不可欠だからだ。1990年代のドイツを見てみると、Siemensは工場に資金を投入していたが規模が小さすぎた。このため、最終的に半導体事業をInfineon Technologiesとして分離させることになった。
世界的にも同様のことがいえる。過去50年間のトップ3のDRAMメーカーを見てみると、約30社の企業名が挙がる。しかし、その大半はメモリ市場から撤退したり、買収されたり、倒産するなどしている。例外は、Micron TechnologyとSamsung Electronics、SK hynixの3社だけだ。しかし、このうち2社は、過去に倒産に近い状態まで追い込まれたことが2回ある。
こうした企業の大半は、力不足のために失敗する運命だったというわけではない。長期的にみると、半導体の重要性を理解した政府からの支援を受けていた企業とはそもそも競争条件が異なっていた。
国際情勢が揺らぐ中の「最後のチャンス」
今や、世界経済における半導体業界の重要性は広く認識されている。2022年に発生したサプライチェーン危機では、ごく一部の半導体チップが供給されなかっただけで、数百万米ドル規模の産業機器が出荷できなくなり、半導体への依存度の高さが露呈した。これを受け、世界各国でCHIPS法(CHIPS and Science Act)が登場し、半導体工場の国内建設が奨励されるようになったのだ。
そしてさらに重要なのは、近年の地政学的緊張の高まりだ。関税やそれに関する規制が目まぐるしく変化し、長年安定していた政治的同盟が揺らぎ始めている。そのため、今こそが対応すべき最後のチャンスだといえる。
欧州の半導体サプライチェーン最後のピースは「メモリ」
半導体業界は過去15年以上にわたって劇的に変化してきた。多くの資本や人材、インフラはアジアと米国に集中している。欧州では、メモリ業界を復活させるべく、欧州半導体法(European Chips Act)が実施されている。
これによって現在、欧州には完全なメモリサプライチェーンを取り戻すまたとないチャンスが生まれている。
欧州には既に前工程工場が存在する。その一例がRobert Boschだ。同社はドイツに200mm/300mmウエハー工場を保有していて、現在はドレスデンでも生産能力を拡大している。これらは自動車や医療機器、産業オートメーションなどに向けた半導体に不可欠である。
またGlobalFoundries(GF)もドレスデンで生産能力を拡大し、2028年末までには年間100万枚以上のウエハー生産能力を実現する予定だという。これによりGFは欧州最大規模の生産拠点を保有することになる。さらにこの工場は、AIコンピューティングプラットフォームにとって重要な、ロジックチップ上にメモリを集積する技術も備えている。
AIチップにはパッケージングが必要だが、ドイツにはそのための生産能力もある。Swissbitは2025年に、ベルリンで先進パッケージング技術を提供することを発表した。このパッケージング工場は、半導体製造における欧州の主導権確立に向けた、大きな一歩だといえる。
あとは、メモリサプライチェーンさえ再構築すればよい。メモリは、あらゆるAI戦略/アプリケーションにおいて非常に重要な役割を担っているので、特に新興メモリ技術にとっては大きなチャンスがある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.