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低電圧メモリICの有効な活用法低電力化の将来に向けて

モバイル機器やウェアラブル機器などあらゆる機器は、消費電力を低減するためにデバイス動作電圧の低電圧化が進みつつあります。そうした中で、1.2Vや1.5Vで動作する低電圧メモリが登場しています。今回は、ウィンボンド(Winbond)が展開する低電圧メモリを取り上げながら、低電圧メモリの利点や活用法を紹介しましょう。

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 今日の産業機器および、民生機器の基板回路における電源電圧は、広範囲にわたります。最も一般的な電源電圧は5V、3V、2.5V、1.8V、さらに低電圧なものも存在します。異なるメーカーのデバイス間における互換性を確保し、ボードレベルの電源設計を複雑化させないために、半導体メーカーはこれらの標準電源電圧にて動作するよう製品を設計します。これらは安定性と互換性のためですが、それに反する要求も種々あります。それは、モビリティーです。

 需要が増え続けるモバイル製品やウェアラブル製品を設計する上で、電池のサイズと重量は、最大の課題です。小型電池を用いることで製品の小型化につながる他、電池の小型化で空いたスペースに追加機能を加えることができます。同時に、消費者は電池による動作時間の長さを気に掛け、充電回数の少ないものを求めます。

 つまり、製品設計において、限られた電力の中で1mWでも節約することが重要になります。産業用途では、電源電圧1.8V以上のさまざまな電圧が使用されており、これは問題にこそなっても、利点にはなりません。なぜならば、デジタル回路は簡単な変更で1.8V以下でも動作可能であり、アクティブ時および、スタンバイ時の電力消費を軽減することが可能だからです。

 低電圧動作を必要とする顧客要求に応えるのが半導体メーカーの大きな課題となっています。電子部品業界は、より低電圧規格を制定すべきでしょうか? また、システム設計者は、新世代の低電圧部品を活用するために、なにを準備すべきでしょうか?

明確な方向性

 今日、システム設計者は異なる電源電圧で動作する部品に対応させるため、複数の電源電圧を使用する必要があります。センサーなどのアナログデバイスは一般的に3V電源(産業機器では5V)が使われています。レガシーな電子部品は3.3V、2.5V、1.8Vの電源が使われます。低電圧の方向として、28nm、またはそれ以下のプロセス・ノードで製造されるアプリケーションプロセッサ、SoC(システム オン チップ)のコア動作電圧は、1.0Vまで下がってきています。しかし、電源設計では本質的に、複数の電圧の使用は避けたいものです。将来、業界において1.8V以下の電源電圧は何ボルトになるでしょうか?

 図1は、DRAM技術がけん引するメモリICの1.8V以下への変遷を示します。

 1.8VはDDR2 DRAMを最後に、以降、1.5V(DDR3)、1.37V(DDR3L)と続き、今日では1.2V(DDR4)まで来ています。


図1:一般的なメモリデバイスタイプ別動作電圧範囲。黄色はDDR DRAM、緑はウィンボンドNORフラッシュ (画像著作権:ウィンボンド)

 DRAMの場合、1.8V以下に3種類の電圧が存在します。図1は、DRAMの電源電圧とウィンボンド(Winbond)NORフラッシュファミリの電源電圧を示しています。最新のNORフラッシュファミリは1.2Vと1.5Vの2種の電圧を展開しています。


「W25QxxNEシリーズ」

 「W25QxxNEシリーズ」は1.14V〜1.30V、「W25QxxNDシリーズ」は、1.5Vの拡張品として1.14V〜1.58Vに対応しています。また両シリーズ共、1Mビット〜128Mビットの容量帯を予定しています。

 ウィンボンドは1.2V電圧と1.5Vの拡張レベル対応の最新世代NORフラッシュICの供給により、より幅広く半導体業界との製品調和を目指しています。1.2Vと1.5Vは業界動向にかなっており、電源電圧を1.8V以下に抑えることは、消費電力の低減につながります。ウィンボンドは、DDR3とDDR3L DRAM製品で使用される電源電圧に対応する1.5Vおよび、1.35Vの戦略製品を提供します。より広い動作電圧幅により、一般的な1.5V電池でも寿命を長くできるというメリットもあります。

 ウィンボンドのこれらの新製品は、1.8V以下の電源電圧に向かう半導体業界の流れに合致し、1.2Vに対して幅広いサポートを提供しています。各社(プロセッサおよび、メモリメーカー)のロードマップによると3.3V製品は縮小し1.8Vが主流に向かっています。しかし、それら企業にとってモビリティーの低消費電力要求は重要であることから、1.8Vに続く次世代電圧レベルの1.5Vや1.35V、あるいは1.2Vもロードマップに出てきています。この1.2Vレベルは将来、業界においてのスタンダードになると、見込んでいます。

 ウィンボンドは、シリアルNORやシリアルNANDフラッシュの世界的大手サプライヤーであり、シリアルフラッシュの業界標準化に強い影響力を持っています。W25QxxNEおよびW25QxxNDシリーズの導入により、最低1.2Vの電源電圧の高性能シリアルフラッシュICの動作を実証しました。つまり、シリアルフラッシュを使用するOEMは1.2Vや1.5VのシリアルNOR部品を幅広く採用したロードマップを提案できます。

大幅な節電法

 1.8V以下の電圧にてNORフラッシュICを使用する際、いかに電力を節約できるかは、当然アプリケーションによって変わってきます。超低電力シリアルフラッシュの代表的な使用例として、小型POS端末機やスマートウォッチ、電子書籍、GPSナビゲーションデバイスなどが挙げられます。これらのアプリケーションでは通常0.5〜5%のデューティサイクルを想定した電力設計をしており、これは一般的なユーザーの行動パターンと一致します。これは、スタンバイ時とアクティブ時の両消費電力が、平均消費電力に重要な影響を及ぼすことを意味します。

 図2は、1.2Vの8MビットNORフラッシュIC、W25Q80NEは、動作電力が1.8V品よりも33%も省電力であることを示しています。


図2:1.2VシリアルNORフラッシュの動作電力比較(50MHzクロック速度)

 パワーダウンモード時のスタンバイ電流は0.5μA以下で、1.8VのW25Q80EWデバイス(1μA)では2倍です。

 W25QxxNEシリーズはアクティブモードでもスタンバイモードでも低電力のため、電池寿命を延ばし、電池のサイズや重量の削減につながります。これらのデバイスは、さらなる利点を提供しており、電源電圧が下がることでノイズが低減されEMIに対しても効果的です。

 1.2Vデバイスのもう1つの主な利点は、電源回路を簡素化できることです(図3参照)。アプリケーションプロセッサとマイクロコントローラのサプライヤーが1.2V電源電圧を装備している場合、電源管理IC(PMIC)を使わず、よりシンプルなボードのスペースとコストを大幅に節約できます。


図3:1.8Vフラッシュを1.2Vに置き換えることで電源回路が簡素化

1.8Vデバイスと互換性のある機能セット

 ウィンボンドは既存の1.8V製品に代わるデバイスとして、新たに1.2Vおよび1.5Vの拡張製品を開発しました。電源電圧、アクティブ時やスタンバイ時の消費電力が低い点を除いて、W25QXXEWシリーズとほぼ同等です。また、W25QxxNEとW25QxxNDシリーズの最大動作周波数は、1.8V W25QxxEWと同じ104MHzです。

 W25QxxNEおよびW25QxxNDシリーズの104MHzという速度は、デュアル、クワッドのSPI(Serial Peripheral Interface)およびQPI(Quad Peripheral Interface)による動作をサポートし、最大52Mバイト/秒の速度でモバイル機器、ウェアラブルおよびIoTデバイス等のアプリケーションに最適です。また、DRAMへのシャドーイングやXIP(Execute In Place)に対応しています。

 ウィンボンド製品は充実したポートフォリオと幅広いパッケージラインアップを持ち、パッケージフットプリントの互換性も向上しています。新製品の1.2Vや1.5Vは、2×3mmのUSONや8ピンSOP(150mil)にて提供されます。このSOPは、1.8Vフラッシュデバイスで用いられるWSON(6×5mm)のパッケージフットプリントと互換性を持っています。

 1.8V品と同様に、1.2Vおよび1.5V品はソフトウェアの変更を最小限に抑えつつ、同等の性能とパッケージタイプをサポートします。低電圧低電力のシリアルフラッシュデバイスを使用することは電源回路を簡素化し、消費電力の節約につながります。W25QxxNE(1.2V)とW25QxxND(1.5V)品は、KGDとしてウェハーにての提供も可能です。

1.2Vと1.5V電源電圧の勢い

 ウィンボンドは1.2Vと1.5Vデバイスのシリアルフラッシュを初めて市場に投入し、電池駆動機器メーカーが消費電力をさらに節約できるようお手伝いします。W25QNE(8Mビット、1.2V)シリアルフラッシュは現在サンプル提供中で、1.5V品も開発中です。また、他の容量の開発状況に関してはロードマップを参照してください。

 1.2V製品はEspressifのような低消費電力領域で動作するチップセット企業にデザイン・インされており、Espressif Systems社CEOのTeo Swee Ann氏は「ウィンボンドの低消費電力シリアルフラッシュ製品は、IoTアプリケーションとスマート接続デバイスに対して、理想的な位置にいます」と語り、「ウィンボンドの1.2Vシリアルフラッシュは既存の動作電圧既成概念の枠を拡げ、当社のWi-FiとBluetoothのコンボチップ超省電力製品ESP32とを使用することで、消費電力を更に軽減することができました。当社におけるテストは既に成功しており、一日も早くモジュールの形で市場に出したいと考えています」と話しています。

 このように、フラッシュ市場は1.8V以下の次世代電源電圧として1.2Vと1.5Vが標準化され、システム設計者は将来の電源電圧として約1.2Vの開発ロードマップを計画することができます。

【著:ウィンボンド/William Chen(プロダクトマネジャー)、K. C. Shekar(マーケティング戦略 シニアディレクター)、Conrado Canio(テクニカルマーケティングマネジャー)】

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提供:ウィンボンド・エレクトロニクス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2017年9月21日

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