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チップ分解で20年をたどる 「万華鏡」のように変化し続ける半導体業界この10年で起こったこと、次の10年で起こること(95)EE Times Japan20周年特別寄稿(1/5 ページ)

EE Times Japan 創刊20周年に合わせて、半導体業界を長年見てきたジャーナリストの皆さまや、EE Times Japanで記事を執筆していただいている方からの特別寄稿を掲載しています。今回は、最新チップの分解と鋭い分析が人気のテカナリエ代表取締役CEO、清水洋治氏が、分解を通してみてきた半導体業界20年の大きな変化を語ります。

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 EETimes Japan20周年おめでとうございます。弊社も記事を掲載させていただき、もうすぐ10年になります。EETimes Japanとともに10年を歩ませていただいたことを感謝いたします。

 20年前となる2005年は、筆者は5年超の海外業務を終えて帰国し、半導体メーカーで日々設計を行っていた時期だった。20年前のチップ写真も数百製品分が手元にあるが、半数近くが日本メーカーのSoC(System on Chip)やマイコンである。日本メーカーからチップが続々と生まれていた。2005年からの20年で、日本製半導体を見る機会はずいぶん減った。



大きな変化の連続


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 上記のような話はさておき、この20年は大きな変化の連続だった。リーマンショック、東日本大震災、米中問題、新型コロナウイルス感染症、AIの爆発成長などで半導体ビジネスや技術トレンドも変わり続けてきた。2005年を起点に現在の主流に至る変化点を少し(少しという点を強調)言及したい。なおエビデンス重視の寄稿としたいので、内容は100%証拠写真のあるものだけとした。当時を知る人からA社もそうだったとかB社を忘れているとか突っ込みがありそうだが、証拠写真のないものは寄稿には加えないものとした。当社は「情報として知っていても、写真のないものは取り上げない」というスタンスであることをぜひご理解いただきたい。記憶よりも記録(すなわち証拠写真)でこの20年を見渡したいからだ。

 図1はシリコン上に2005年の年号のあるシリコンの1例である。2005年と言えばデジタルメディア、ネットワーク機器、携帯電話が爆発的に普及した時期だ。現在も各分野でトップに君臨しているメーカーが、20年前もトップメーカーであった。Apple製品に100%搭載される米Cirrus LogicやアナログICで首位の座にいる米Texas Instruments(TI)などは、当時も今も変わらないまま製品を展開している。コアコンピタンスを持っているからだ。

<strong>図1:2005年のチップ事例。チップの進化は現在も続いている</strong>[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート
図1:2005年のチップ事例。チップの進化は現在も続いている[クリックで拡大] 出所:テカナリエレポート

 台湾MediaTekは2005年当時にはDVDなどのコントローラーしか日本では知られておらず、日本未発売のアジア向け携帯電話のチップなどを手掛けていた。写真の「MT6229」はMediaTekの当時の大ヒットチップである。現在とは異なる初期のロゴがシリコンに刻印されている。MediaTekは山寨手機と呼ばれた携帯電話で2010年前後ブレイクしたが、スマートフォン向けは出遅れている。しかし2015年にはQualcommに並ぶポジションに至った。不断の努力の結果でもあるが、Qualcommと直接衝突しない中国ミドルレンジを確実に抑えたからだ。ルネサス エレクトロニクスは自動車向けマイコンで20年前も今もトップメーカーの1社である。車載向けのノウハウと技術と経験を積み重ねており、コアコンピタンスとなっている。

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