技術商社としてのソリューション提案をより幅広く展開へ:アヴネット 代表取締役社長 茂木康元氏
世界的なディストリビュータであるAvnetの日本法人「アヴネット株式会社」(以下、アヴネット・ジャパン)は、幅広い商材を生かしたソリューション提案を強化する。また、技術力を生かしたデザインサービスの提供体制の強化をアジア地区でも実施する。「2018年は、事業展開の幅をより広げて、成長を図りたい」とアヴネット・ジャパン社長の茂木康元氏は語る。
“ソリューションセリング”が進展
――2017年の業績を振り返っていただけますか。
茂木康元氏 半導体サプライヤーの業界再編の影響を受けて、取り扱いサプライヤーの入れ替わりなどがあり苦労する部分もあったが、業績は好調で、アヴネット・ジャパンとしては前年比10%近い売り上げ伸長を果たすことができた。
――好調の要因は、どのように分析されていますか。
茂木氏 産業機器市場での需要が旺盛だったことに加え、半導体事業の主力取り扱い製品であるXilinx(ザイリンクス)社のFPGA製品を核としながら、他の半導体製品や、「IP&E」と呼ぶ事業セグメントで扱う電子部品を組み合わせて提案する“ソリューションセリング”がうまく機能した。
また、2017年は家庭用ゲーム機向けが好調で、売り上げ拡大に貢献したことも大きかった。
車載向けビジネスに関しては、引き続き、堅調に売り上げは推移している。自動車でのFPGAの利用が、インフォテインメント領域だけでなく、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転システム領域へと着実に広がり、2017年は、2020年以降の売り上げにつながっていくデザインインを数多く獲得できた1年でもあった。
――半導体事業、IP&E事業とともに、強化されている事業セグメントであるエンベデッド事業の2017年ビジネスはいかがでしたか。
茂木氏 米国本社とも連動しながら、取り扱い商材を大きく増やすことのできた1年だった。ここ1年間で商材数は3割近く増えた。
IoT(Internet of Things)化の流れの中で、センサーやRFモジュール、タッチパネルなどさまざまな部材から、クラウドにつなぐための機器やクラウドまでをカバーする製品ラインアップが求められている。そうした中で、Wi-Fiアクセスポイントやネットワークスイッチの世界的なメーカーであるExtreme Networks(エクストリーム・ネットワーク)社製品の取り扱いを本格化させるなど、アヴネット・ジャパンとして製品ポートフォリオを充実させることができた。
2018年は“より幅広く”
――2018年の市況展望および、事業テーマを教えてください。
茂木氏 2018年も上半期については、産業機器市場を中心に好調な需要が続くとみている。足元も半導体製造装置やFA装置などの需要は、中国市場向けを中心に旺盛で大きな不安はない。ただし、需要が旺盛なため、発注が過剰気味になっている可能性があり、2018年下半期以降、需給バランスがどのように変化していくかは注視していく必要がある。
そうした中で、アヴネット・ジャパンの2018年は「より幅広く」が事業のテーマになるだろう。
アヴネット・ジャパンは、おかげさまでXilinx製FPGAを扱う技術商社として、日本で広く認知されるようになった。しかし、FPGAだけでなく、さまざまな商材を幅広く扱う技術商社として認知されるよう、努力したい。FPGAに、さまざまな半導体、電子部品などの商材を“プラスワン”するソリューション提案を一層広げて、事業を拡大していきたい。
そのためには、引き続き、取り扱い商材をより幅広く拡充していく。また、技術サポートについても国内外で幅広く、強化を続けていく。
アジアでのデザインサービスを強化へ
――海外でのサポート強化方針を教えてください。
茂木氏 日系顧客のアジア地域での活動をサポートするため、アヴネット・ジャパン独自の販売・サポート拠点(アヴネット・ジャパン・アジア)を中国、東南アジア地区7カ所に展開している。
2016年には、Avnetグループのアジア事業を担当するAvnet Asiaのオフィス内に、アヴネット・ジャパン・アジアの拠点を移し、600人のFAE(フィールドアプリケーションエンジニア)を含む3000人の従業員を抱えるAvnet Asiaとの連携を強化した。さらに、2017年には、アヴネット・ジャパンと、アヴネット・ジャパン・アジアの基幹業務システムを1本化し、国内外での受発注などを一元管理し、シームレスかつスピーディーに発注など業務を行える体制を構築した。
昨今では、アジア地区で、サプライチェーンサービスに加え、デザインサービスの提供を求める日系顧客が増えている。現状は、アヴネット・ジャパンのFAEが定期的にアジアの顧客拠点を訪問して対応しているが、今後は、現地に日本人FAEを常駐させるなどし、アジア地区でのデザインサービス、技術サポート体制を強化していく。もちろん、Avnet Asiaの技術サポートリソースの活用もより積極的に行う。
FPGA応用自動運転システム開発プラットフォーム
――2018年に提案を予定されているソリューションをご紹介ください。
茂木氏 OKIグループの設計受託事業会社であるOKIアイディエスと、Xilinxと連携し、高度な自動運転(SAE Level4-5)システムの開発に適した開発プラットフォームを製品化し、2018年2月から販売を開始する。
この開発プラットフォームは、高性能なGPUと同等の処理速度を持ちながら5分の1の消費電力で稼働するARMコア搭載FPGA「Zynq UltraScale+ MPSoC」2個を実装したA4サイズのボードで、AI(人工知能)によるカメラ画像の認識・識別や空間・経路探索が行える。車載バッテリー規格電圧と同じ12Vで動作し、実車に搭載して評価、検証が行える点も特長になっている。
アヴネット・ジャパンがこの開発プラットフォームのコンセプトを企画し、Xilinxの監修の下、OKIアイディエスが設計、製造し、アヴネット・ジャパンが販売するという形で実現できたソリューション。2017年12月に発表したばかりだが、FPGAベースの自動運転システムを手軽に開発、検証できるプラットフォームとして、多くの問い合わせが寄せられている。このプラットフォームを通じて、車載分野でのFPGA活用をさらに促進していきたい。個人的には、OKIアイディエスとともに開発したプラットフォームは自動運転以外にも、ロボティクスなどの高度な画像処理を求めるさまざまな領域にも応用可能なソリューションだと考えており、応用の検討を進めたい。
――今後も、アヴネット・ジャパンとして、開発プラットフォームなどの開発を進めていくのですか。
茂木氏 はい。Avnetグループは、さまざまな開発ボード、開発プラットフォームを展開しているが、そこにアヴネット・ジャパン独自のソリューションもパートナーやサプライヤーとの連携を強めながら拡充していきたい。
提供:アヴネット株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2018年2月15日
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