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低消費電力で高性能なIoT特化型マイコン「PSoC 6」のセキュリティ機能がパワーアップTrusted Firmware-Mをリリース

サイプレス セミコンダクタは2018年2月26日(米国時間)、Arm PSAに準拠するTrusted Firmware-Mのサポートを表明するとともに、PSoC 6 MCUファミリのセキュリティ機能を使用するためのソフトウェアスイートを発表した。これにより、高度なセキュリティが要求されるWi-FiやLPWA対応IoT機器の開発がより簡単になる見込みだ。

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40nmプロセスを使用した最新PSoC「PSoC 6 MCU」

 IoT機器に特化したマイクロコントローラ「PSoC 6 MCU」のセキュリティ機能が強化された――。

 PSoC 6 MCUは、CPUコアやフラッシュメモリに、ユーザーが自由に構成可能なアナログブロック(UAB)/デジタルブロック(UDB)を集積するサイプレス独自のプログラマブルSoC(=PSoC)の最新シリーズだ。その特長は、今後、普及拡大が見込まれるIoT機器がマイクロコントローラに求める機能、性能を低消費電力で実現できる点にある。

 まず、PSoC 6 MCUは、CPUコアとして処理性能の高い「ARM Cortex-M4」と消費電力の小さい「ARM Cortex-M0+」という2つのコアを搭載する。この特長の異なる2つのコアにより、マイクロコントローラとしての処理性能、消費電力の最適化が図れる。例えば、高い処理性能が要求されるシステム制御などをCortex-M4で処理し、スタンバイ時でも動作する必要がある通信処理をCortex-M0+で実施するといった使い分けで、スタンバイ時には、ARM Cortex-M4を休ませ、消費電力を抑えるといったことが可能になる。


「PSoC 6 MCU」のアーキテクチャ概要

2コアで10mA未満のアクティブ消費電流

 独自の製造プロセス技術「ウルトラローパワー40nm SONOSプロセス技術」を採用することで、動作電力も低減。CPUコアブロックの1MHz当たりの動作消費電流は、Cortex-M4が22μA、Cortex-M0+が15μAを実現している。さらに動的電圧周波数スケジューリング(DVFS:Dynamic Voltage and Frequency Scaling)機能により、動作電圧1.1Vのローパワー(LP)モード、同0.9Vのウルトラローパワー(ULP)モードも用意した。その結果、LPモード時のアクティブ消費電流はCortex-M4で6.0mA(150MHz動作時)、Cortex-M0+で2.5mA(100MHz動作時)と両CPUコアを単純合計しても10mAを切る低い消費電流を実現。ULPモードを使用すればCortex-M4で1.5mA(50MHz動作時)、Cortex-M0+で0.5mA(25MHz時)まで消費電流を低減できるのだ。LPモード、ULPモード以外にも、クロックを8MHzに下げる低電力アクティブモードや、CPUコアの動作を停止し周辺ブロックのみ動作状態とし4.5μAまで消費電流を抑えられるディープスリープモードなども用意されている。


「PSoC 6 MCU」の動作モードと消費電流

 サイプレスのマイコン事業部マーケティング部プロジェクト課長の末武清次氏は「IoT機器に使用される従来のマイコンと比べて、1桁小さい消費電流になっている。バッテリーで駆動することの多いIoT機器の動作時間をより長期間にできるだろう」とする。

Wi-FiやLPWAなどと相性の良い「PSoC 62」

 IoT機器では、高い処理性能と低い消費電力の両立以外にも、必要な要素として通信対応がある。PSoC 6 MCUシリーズは、通信対応を前提に開発されており、2017年9月には、Bluetooth 5のLow Energy(以下、BLE)対応のRF機能を搭載した製品「PSoC 63」のサンプル出荷が始まっている。PSoC 63を使用すれば、アンテナを追加するだけで、BLE機能を備えたIoT機器が実現できる。

 さらに「PSoC 62」を搭載しWi-Fiに対応した「PSoC 6 Wi-Fi Pioneer Kit」をリリースする。

「PSoC 63」(左)と「PSoC 62」(右)の特長とブロック図 (クリックで拡大)

 PSoC 62は、Wi-Fiなどに対応したRFチップを外付けで使用する事が可能なPSoC 6 MCUであり、先に製品化されたPSoC 63のBLE対応RF機能を取り除いたシンプルな製品であり、高い汎用性を持つ。デュアルコア構成で、40nm SONOSプロセス技術を生かした1Mバイトの大容量フラッシュメモリを搭載するなど、PSoC 63と同様の機能、性能を備える。

ハードウェアベースのTEEを備える

 一方で、Wi-Fiなどの通信に対応するには、PSoC 63が対応するBLE以上に高度なセキュリティ機能を備える必要がある。そこで、サイプレスではArmの提唱するPlatform Security Architecture(PSA)に準拠したTrusted Firmware-Mのサポートを表明した。

 PSAとは、Armの提唱するネットワークに接続するデバイスをユーザーが安全に使えるように、全てのデバイスで共通して適用すべきセキュリティ対策を定めたフレーム。ArmはPSAに準拠したリファレンスファームウェアとしてTrusted Firmware-Mをオープンソースとして公開していた。PSoC 6シリーズには、このPSA準拠のTrusted Firmware-Mを実現するためのハードウェアを備えている。楕円曲線暗号(ECC)やAES、SHA-1/2/3など、業界標準の対称/非対称暗号化アルゴリズムに対応する「暗号化エンジン」、不正な読み取りからデータを守る「セキュアフラッシュ」、予期せぬメモリアクセスなどを防ぐ「プロテクションユニット」といった一般的なものだけでなく、より高度なセキュアハードウェアを備える。例えば、不正なアクセス時によってデバイスが改変されないように「e-Fuse」(電子フューズ)などを備える。


「PSoC 6 MCU」は、2つのCPUコアが完全に分離されている

 こうしたセキュリティ機能の処理についてはCortex-M0+で実施する構成となっており、Cortex-M4とCortex-M0+間の通信は、IPC(インタープロセッサ通信)を通じて行われ、Cortex-M4はセキュリティ処理を行わないようになっている。「CPUコアが完全に切り分けられ、システム制御とセキュリティ処理を並列処理でき、システムの性能向上や安定した動作が見込める」(末武氏)


マイコン事業部マーケティング部プロジェクト課長 末武清次氏

 このほど、サポートがアナウンスされたPSoC 6 MCU Trusted Firmware-Mには、こうしたセキュリティハードウェアを使用する上で欠かせないドライバやファームウェアがそろい、短期間にPSAへの対応が行える。Cortex-M0+上では、サイプレスが提供するTEE関連機能以外にも、ユーザー独自のセキュリティ機能を追加し、処理することも可能になっている。末武氏は「ここまでのセキュリティ機能を実現できるマイコンは、他には見当たらない。IoT機器はWi-FiやLPWA、LTE Cat.NB1/Cat.M1など、より広範で通信が行える無線の活用が進みつつあり、これまで以上に高度なセキュリティ技術が求められるようになりつつある。PSoC 6 MCUはそうしたセキュリティニーズに対応できる新世代のマイコンである」と語る。

「WICED」と「PSoC Creator」が1つに!

 サイプレスは、2016年にBroadcom社から無線通信チップ事業を継承し、Wi-FiとBluetoothのコンボチップなどのRFデバイスも展開している。そのため、高度なセキュリティを実現できるPSoC 62とWi-Fi対応RFチップを組み合わせたシステムソリューションの提供が可能だ。

 旧Broadcom社のRFデバイス製品は、デバイスの性能に加え、専門的な知識がなくても複雑なワイヤレス関連ソフトウェアを容易に構築できる専用開発ツール「WICED(Wireless Internet Connectivity for Embedded Devices)」でも定評があり、多くのIoT機器開発現場で使用されてきた実績を持つ。

 PSoC 62の登場で、旧Broadcom社のRFチップ製品とPSoCを合わせて使用するケースが今後、多くなることが予想される中で、サイプレスは、PSoCの開発ツール「PSoC Creator」と「WICED」の機能を併せ持つ「Modus Toolbox」を発表した。近く、PSoCと、Wi-Fi/Bluetoothコンボデバイス「CYW4343W」などのRFチップを1つの開発環境で扱えることになる。「同一のソフトウェアライブラリが適用できるなど、あたかもPSoCとRFデバイスが1チップに統合されているような感覚で開発ができるようになるだろう」(末武氏)


開発ツール「Modus Toolbox」の画面例

対応無線増えるIoT機器ニーズに最適なPSoC 62

 サイプレスでは、PSoC 62の評価にも使えるデモキット「PSoC 6 WiFi-BT Pioneer Kit」を用意している。同キットのデモボードには、PSoC 62の他、CYW4343Wを搭載。同ボードでは、PSoC 62内のUDBでSDIOを構築し、CYW4343Wとの高速接続を実現している。また、PSoC 62が内蔵する静電容量タッチセンシングコントローラ「CapSense」を試せる静電容量式ボタン/スライダーも備わっている。


デモキット「PSoC 6 Wi-Fi-BT Pioneer Kit」

 末武氏は「先に出荷しているBLE対応のPSoC 63については、電流当たりの処理能力の高さが評価され、ウェアラブル機器やモバイル機器での採用検討が進んでいる。他にもAIスピーカーや、複数のセンサーを備えるバッテリー駆動型IoT端末などでの評価も進んでいる。こうしたウェアラブル機器や各種IoT機器の多くは、Bluetoothに加えて、Wi-Fiなどの無線機能を新たに追加する動きが加速している。白物家電でも、従来のIRリモコンに代わって、Wi-Fi/Bluetoothを使用した無線リモコン、遠隔操作に対応するケースが増えてきている。そうしたアプリケーションに、低消費電力ながら高度なセキュリティ機能と高い処理能力を実現できるPSoC 6は最適だろう」と語っている。

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提供:サイプレス セミコンダクタ
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2018年4月12日

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