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AI×IoT具現化へ ―― パートナーと新たな価値を創出するアドバンテックの2019年戦略アドバンテック 社長/日本地区最高責任者 マイク小池氏

AI×IoTを具現化するために必要なハードウェア/ソフトウェア環境を整えたAdvantech(アドバンテック)。今後は専門領域で強みを持つパートナーと手を組み、新たな価値を生み出していく計画だ。Advantech日本法人の社長を務めるマイク小池氏に、2019年の事業戦略などについて聞いた。

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「Co-Creation(共創)」に向けてパートナーと連携強化

――Advantech(アドバンテック)にとって2018年はどのような年でしたか。

マイク小池氏 IoT(モノのインターネット)向け組み込みプラットフォーム(ハードウェア)とソフトウェアからなる「エンベデッドIoTソリューション」ビジネスと、あらゆる産業の自動化を支えるための「インダストリアルIoTソリューション」ビジネスが堅調に推移した。

 昨年までこれらの事業は、ダイレクト販売とチャネル販売の比率がほぼ同等だったが、2018年はチャネル販売が大きく伸びた。特に、東京エレクトロンデバイス(TED)のマーケットセグメントにおいて対象となるビジネス領域を広げるなど、より深い協力関係を構築した。

 市場別にみると、半導体設備関連や医療機器関連向け需要が好調に推移した。チャネル販売を拡充したことで顧客の裾野が広がった。具体的な売上高などは公表していないが、過去最高の記録を更新した。

――2018年もさまざまな施策を打ち出されました。

小池氏 2018年3月に日本ラッドとの資本提携を発表した。アドバンテックが日本ラッド株の19%を保持することで合意した。両社はこれまで、インダストリアルIoT(IIoT)分野で新規開拓を積極的に行ってきた。今回の資本提携により、日本ラッドは日本における「Co-Creation(共創)」モデルのプライムソリューションセールスパートナーとして、新たなスタートを切った。

 日本ラッドは、日本のWISE-PaaSコンピテンスセンターとして、スマートファクトリーやIndustry 4.0の市場を中心に、アドバンテック製IIoT製品、WISE-PaaS、SRP(Solution Ready Package)を採用したソリューションを提案することになる。アドバンテックが全世界で展開するDFSI(Domain Focus SIer)というポジションに相当するパートナーでもある。

 2018年7月には、前述の通りTEDとエッジコンピューティングソリューションの販売推進に向けて、パートナーシップを一段と強化した。TEDとは2013年より、アドバンテックの組み込みビジネスパートナーとして協業してきた。今回の提携強化により、Microsoft Azureクラウドサービスと連係したAI×IoTエッジコンピューティングにおけるソリューションとビジネス開発を共に注力していくことになる。

 その第1弾として、工場に設置された製造装置の稼働状態を可視化して、効率的な稼働を実現するための「工場見える化キット」の製品化を進めている。製品化に向けてTEDの連結子会社であるアバール長崎の本社工場で実証実験を行っているところだ。

 2018年10月には、オムロン子会社であるオムロン直方の株式80%を取得することで合意した。その内訳はAdvantechの台湾本社が50%、日本法人が30%の株式をそれぞれ取得する。設計・製造サービス(DMS:Design Manufacturing Service)のリーディング企業を目指す当社にとって、日本の組み込みシステム分野における市場シェアの拡大と、地域に根差した製造サービスの能力を増強する有力なパートナーとなる。

36種類のSRPを用意

――2018年11月には中国・蘇州で「IoT Co-Creation Summit(IoT共創サミット)」を開催されました。

小池氏 アドバンテックは、IoT戦略を3つのフェーズに分けて展開するとともに、これらを同時並行で進めている。第1フェーズでは、ハードウェアプロバイダーとして、IoT向けプラットフォームの拡充に取り組んだ。第2フェーズでは、ハードウェアとWISE-PaaSなどのソフトウェアを統合したプラットフォーム「IoT SRP(Solution Ready Package)」の提供に力を入れた。

 そして、今回の第3フェーズは「IoT Co-Creation」である。このフェーズでは、異なる産業領域でそれぞれ強みを持つSIer(システムインテグレーター)と共創して、新たな価値を生み出していく。今回のイベントは、第3フェーズのキックオフミーティングと位置付けている。


3つのフェーズに分けて展開するアドバンテックのIoT戦略

 2日間開催したイベントには、全世界から7200人の登録があり、実際に6000人が参加した。日本からも合計180人が参加した。ここでは、各領域で強みを持つパートナー(DFSI)との共創によって生み出された36種類のSRPが紹介された。サミット会場では、新たにDFSIを幅広く募集する方針も示された。

 サミット2日目には、日本のCo-Creationパートナー9社とともに「ジャパンセッション」を行った。会場では、IoTソリューションのグローバル展開などについて、IoT×植物工場プロジェクトに取り組むMIRAIをはじめ、Bosch Japan、三菱電機、EdgeCrossコンソーシアム、ルネサス エレクトロニクス、フィックスターズ、コガネイ、TED、日本ラッドなど のパートナーが講演した。

2019年も2桁以上の伸長率見込む

――2019年の事業環境をどのように見ていますか。

小池氏 米中貿易問題の影響など、事業を取り巻く環境は不透明な部分がある。しかし、AI×IoTビジネスの創出に向けた動きは極めて旺盛である。当社はこの領域にフォーカスしてきた。この動きを加速するため、Co-Creationビジネスを積極的に展開する。

――2019年の業績見通しと具体的な施策を教えてください。

小池氏 製造業に向けたIIoT関連の需要は引き続き好調で、FA(ファクトリーオートメーション)分野とスマートシティー分野に関連したビジネスを中心に、2019年も2桁以上の伸長率を期待している。

 目標達成に向けて、日本では大きく3つの施策を展開したい。『IoT Co-Creationの具現化』『SRPの拡販』『DFSIパートナーの開拓』である。

 もちろん、エンベデッドプラットフォームの拡充などにも継続して取り組む。例えば、AIに対応したエンベデッドプラットフォーム製品だ。以前から、AIチップメーカーと連携を深めており、AI対応エッジコンピュータを2019年前半にも市場に投入する予定となっている。GPUやFPGAを用いた高性能なAI推論システムと、画像認識向けAIエッジ推論システムなどを用意する。

 事業としてはこれからも、『インテリジェント・プラネットの実現』というビジョンの実現に向けて、3つのフェーズ(フェーズ1、2、3)を同時並行で展開し、各フェーズにおいて十分なサービスを行っていく。IoT Co-Creation Summitを開催したことで当社はさらに進化し、『グローバルソリューションインテグレーター』という領域で、新しい立ち位置を確立できたと考えている。

――種類あるSRPの中で、日本市場にも適合する製品はどのようなものがありますか。

小池氏 一例だが、組み立て装置や工作機械など、工場内の設備を統合的に管理し、生産設備の稼働率改善などを実現するためのパッケージがある。パートナーが開発した生産管理システムと当社のハードウェア/ソフトウェアを組み合わせてパッケージに仕上げた。基本的に汎用的な製品だが、2割程度はユーザー側でカスタマイズも行える。導入のスピードを早めることができるのが、SRPを利用する大きなメリットである。


インダストリー4.0/iファクトリー向けSRPソリューション

 施設や装置の管理・モニタリングに向けたSRPとしては、EV(電気自動車)の充電管理システム、モーターなど生産設備の振動をモニタリングし、データ解析によって予知保全を行うソリューション、水質管理のソリューション、風力発電システムを監視するソリューションなどを用意した。さらに、医療関連では病棟を管理するソリューション、リテール関連では店舗のトータル管理ソリューション、物流向けはコールドチェーン管理ソリューションなど、適用できる分野は多岐にわたる。


ドメインフォーカス型から汎用型までさまざまな種類がそろうSRPソリューション

向こう3年間でDFSIを80社以上獲得へ

――SRPは、既に基本的な領域をカバーしているように見えます。これからの活動方針などはありますか。

小池氏 IoT Co-Creation Summitにおいてその方針が示された。そのターゲットは、全世界で向こう3年間に、『DFSIを80社以上獲得する』こと、『SRPを毎年20種類以上追加する』こと、『WISE-PaaS のVIPユーザーを1000社以上増やす』こと、である。IoT時代を実現するためのハードウェア/ソフトウェア環境は整った。これからはパートナーと共創し、IoTを具現化する段階にきている。AI技術との連係もIoT導入を加速する要因になろう。

――日本市場ではどのような展開となりますか。

小池氏 DFSIについては全社で80社のパートナーを獲得する計画になっているが、このうち15社程度は日本のパートナーを開拓したい。ターゲットとするアプリケーションはFAやスマートシティー、リテール、物流、医療などの領域である。これらの市場にフォーカスしたパートナーと手を組みたい。

――DFSIの発掘はどのように進められますか。

小池氏 さまざまなSRPを用意する中で、これを普及させるためにはDFSIが最も重要となる。IoTは新しい市場であり、パートナーもこれまでは試行錯誤している感じであった。IoT時代を共創するためのパートナーがDFSIである。

 DFSIとなる条件は、各領域に対して深い知識や情報を持っていること、エンドユーザーに近いレベルのサービスを行える能力。この2つが必須である。つまり、工場の現場やスマートシティー、病院などにおけるシステムを理解し、課題解決に向けたソリューションの提案や的確なアドバイスができる能力を持っていることが重要である。大手のSIerでも、ニッチな領域を極めたパートナーがいれば手を組み、一緒に市場を開拓したい。


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提供:アドバンテック株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2019年2月15日

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