未来の実装技術は、材料・装置・プロセスの融合から生まれる――千住金属工業に聞く「工法」という考え方:低温実装、フラックスレス接合など、次世代の要求に応える工法開発
自動車の電動化、AIデータセンタの拡大、環境規制への対応など、半導体/エレクトロニクス業界は大きな転換期を迎えている。そこに求められる実装技術も、単に「接合する技術」から、信頼性・省エネルギー・コスト・環境性能を同時に満たす総合的な技術へと進化している。こうした変化に対し、はんだ材料と実装装置の双方を手掛ける千住金属工業は、材料・装置・プロセスを一体で考える「工法提案」に取り組んでいる。今回、同社に実装技術の今後や、その取り組みについて聞いた。
半導体/エレクトロニクス業界は現在、自動車の電動化やAIの急速な普及、サステナビリティ対応など、大きな変化の中にある。これによって、安定動作や信頼性の要となる実装技術への要求も変化してきている。
こうした要求に応える提案を行っているのがはんだ付け装置とはんだ材料の両方を自社で手掛ける千住金属工業だ。同社は2026年6月10〜12日に開催された「第27回 実装プロセステクノロジー展」(東京ビッグサイト)に出展し、材料・装置・プロセスを組み合わせた工法としての実装技術を紹介した。今回、千住金属工業が見る実装技術の今後や、それに向けた取り組みについて聞いた。
実装技術は「選択型」から「すり合わせ型」へ
材料開発を担当する川又氏は、実装技術のトレンドについて「市場では5〜10年後を見据えて、信頼性などの性能面に加え、コストや環境配慮の要求も高度化している」と語る。
性能面では、AIデータセンタ向けやxEV向けパワー半導体などで高電圧・大電流化が進んでいて、それに耐えうる信頼性が求められる。自動車向けでは放熱性や電気伝導性、耐久性も重視される。
コスト低減のニーズも高い。川又氏は「貴金属価格の高騰を受けて、コスト低減はこれまで以上に重要になっている。銀(Ag)の使用量が少ないはんだ材料を求める声も大きい」とする。また、昨今はGPUなど高価なデバイスが多く、実装不良が発生した場合の損失も大きいことから、高精度な実装がこれまで以上に重視される。
環境配慮としては、CO2排出量が少ないことやリサイクル性の高さが求められる。「性能向上のための添加元素はリサイクルの妨げになることがあるので、当社では、性能とリサイクル性の両立を意識して開発している」(川又氏)
こうした高度かつ多様な要求に対しては、材料や装置のどちらか一方だけで対応するのではなく、それぞれの特性を理解した上で、用途や要求性能に応じて最適な組み合わせを追求することが重要になっている。
川又氏は「実装技術では、材料や装置を個別に選択するだけでなく、それぞれの技術を融合させて最大限の性能を引き出す『すり合わせ型』の考え方が重要になっている」と語る。
材料・装置・プロセスを融合した「工法提案」
こうした市場背景を踏まえて、千住金属工業は製品開発から顧客への提案、導入後のフォローまで、製品単体ではなく材料・装置・プロセスの3要素をパッケージ化し、「工法」として提案している。営業を担当する坂巻氏は「材料と装置をどちらも自社で開発できる企業は少なく、これが当社の大きな特徴のひとつとなっている」と話す。
開発段階では、自社の材料と装置を組み合わせて評価を行う。「他社の装置を想定した開発も行うが、顧客がどのような装置を使うか分からないと手探りの状態になる。自社の装置と一体で改良する方がより性能を極めやすい」(川又氏)。材料メーカーと装置メーカーが協業して開発することも増えてきているが、機密保持や開発方針の違いなどから連携には一定の制約があり、1社でどちらも開発する場合と同等の効果は見込みにくい。
さらに、千住金属工業では開発段階から顧客の声を取り入れている。顧客の製品開発状況をヒアリングし、自社の装置や開発中の材料を用いて評価を行い、材料開発に反映する。これによって、より実装現場の課題に即した材料開発が実現する。
坂巻氏は「工法の提案は、モノを売るというよりも、顧客の目的達成に向けて一緒に取り組むことが重要だ」と述べる。装置と材料の組み合わせ、装置の設定条件などの相談に乗るほか、研究開発の担当者が立ち会って評価を行うこともある。
「顧客が新しい材料と設備の導入を検討していた際、当社の拠点において、材料と設備の組み合わせについて立ち会い評価を実施した。その結果、導入・採用が決定した事例もある」(坂巻氏)
坂巻氏が在籍するのは、自動車産業が盛んな愛知県に2021年に開設した中部事業所(愛知県瀬戸市)だ。実装装置をはじめ、実装品質を評価・解析する設備まで一通り備えており、顧客が新製品の開発にあたり、評価・検証のために同拠点を訪れることも多い。
「自動車向けは特に安全基準などが厳しく、評価に時間がかかる。共同で評価を行うことで課題をその場で把握できるため、顧客の開発期間の短縮にも貢献できる」(坂巻氏)
導入後に不具合が発生した際も、装置と材料のサプライヤーがそれぞれ異なると、原因の切り分けや対策の検討に時間を要することがある。一方、千住金属工業では材料と装置の両方を手掛けているため、実装品質に対する責任を一元的に担い、原因究明から改善提案まで迅速に対応できる。
川又氏は「顧客の開発サイクルが早くなっているので、素早い対応が重要だ。すぐに連絡をとり、状況確認ができる体制を整えている」と語る。
フラックスレス実装を可能にする、ギ酸リフロー炉の挑戦
千住金属工業が材料・装置・プロセスを一体で手掛けている実例が、ギ酸雰囲気真空リフロー炉「SFRシリーズ」だ。主に車載機器や半導体分野の実装に向けて提案する。
はんだ付けの際、通常は金属表面の酸化膜除去のためにフラックスが必要だ。一般的にはフラックス入りのはんだ材料を使うか、別途フラックスを基板に塗布する。しかし、残渣の洗浄に手間がかかることや、フラックスから発生する気泡(ボイド)が接合強度の低下や熱・電気伝導性の低下を招くことが課題となっていた。
SFRシリーズは、ギ酸雰囲気中でリフローを行う装置だ。ギ酸には金属表面の酸化膜を還元する作用があり、フラックスの役割を代替できる。フラックスレスのはんだ材料を使用することで残渣の洗浄工程が省略でき、ボイドの発生も抑制できる。
千住金属工業はSFRシリーズと相性の良い材料として、優れた放熱性能に加え接合部のはんだ厚みと平行度の安定化を実現した「Niフィラー入りソルダプリフォーム」、残渣ゼロにより無洗浄を実現した「GSN20ペースト」などを推奨している。GSN20ペーストにはフラックスが含まれるが、リフロー時に揮発するため洗浄は不要だ。
ギ酸リフロー炉自体は他社も手掛けているが、千住金属工業は熱風循環加熱方式を採用していることが特徴だ。同方式は熱板や輻射による加熱方式と比べて加熱能力が高く、熱容量の大きい基板にも対応できるほか、温度のばらつきも低減できる。熱風循環加熱方式はもともと千住金属工業の窒素(N2)雰囲気リフロー炉に採用していた方式で、そのノウハウを生かした。
さらに、他社のギ酸リフロー炉はバッチ式がほとんどであるのに対して、SFRシリーズはインライン搬送に対応している。このため量産ラインに導入しやすく、生産効率を高められる。装置設計を担当する齊藤氏は「熱風循環加熱方式とインライン搬送対応の両方がそろったギ酸リフロー炉は国内では他に例がない」と説明する。
ギ酸リフロー炉は汎用的なN2リフロー炉と比較すると高価な装置だが、齊藤氏は「長期間使うものであることを想定すると、その価値はある」と強調する。洗浄工程を不要とすることでコストダウンが見込めるほか、環境負荷低減にも貢献する。さらに、フラックスレス実装によりボイドを低減できるため、接合強度や放熱特性などの接合信頼性向上が期待できる。
実績を重ね、適用領域を広げる低温はんだソリューション「MILATERA」
低温はんだ材料を中心としたソルダリングソリューション「MILATERA」も、材料・装置・プロセスを一体で手掛けるものだ。
一般的な鉛フリーはんだのはんだ付けは通常220℃前後の高温で行う。近年は熱容量が大きいデバイスも多いことから、消費電力の増大による環境負荷やコスト増加が課題となっていた。
MILATERAの融点は約140℃で、一般的な鉛フリーはんだより約80℃低い。この結果、実装温度を下げられるため装置の消費電力を抑制できる。さらに、工場の空調負荷低減にもつながり、CO2排出量削減とコスト抑制に貢献する。
加えて、低温実装では基板や部品への熱ダメージも抑制できる。その結果、より幅広い基板や部品を選択できるようになり、設計の自由度が高まる。高耐熱性の基板や部品はその分高価なので、代替によってコストダウンも見込める。
千住金属工業はMILATERAの工法として、低温ウェーブはんだ付け工法と低温リフローはんだ付け工法を提案する。従来、スズ-ビスマス(Sn-Bi)系低温はんだを用いたウェーブはんだ付けでは、ドロスの増加や実装品質の不安定化が課題だったが、専用ノズルの開発などによってこれらを解決した。また、リフローはんだ付けに用いるSn-Bi系は、接合部が脆くなりやすいことが課題だったが、添加元素によって延性の高い合金を開発した。
耐落下衝撃特性を改善し、ノートPCやスマートフォンといった持ち歩きを前提とした製品にも利用できるようになった。MILATERAの提案を担当する千葉氏は「当社は材料と装置の両方を手掛けていて、それを取りまとめる体制もあることから、こうした開発が実現した」と述べる。
MILATERAは2023年の発表以来、民生機器向けでの採用例が多かったが、現在は実績が積み重なってきたことで車載向け/産業機器向けでも採用を検討している顧客が増えている。車載向けでは、まず電装品を中心に評価・採用が進んでいる。
MILATERAブランドの新製品開発も既に始まっている。「特性の良い合金が開発できたので、そこに合わせるフラックスの改良を進めているところだ」(千葉氏)
変化の時代に寄り添う実装のパートナー
実装への要求は、今後さらに高度化・多様化していく。だからこそ、顧客の要求や目的を達成するために、材料・装置・プロセスを個別に考えるのではなく、一体となって最適な工法を設計することが重要になる。
千住金属工業は、はんだ材料と実装装置の両方を手掛ける強みを生かし、材料・装置・プロセスを融合した「すり合わせ型」の工法提案によって、顧客のものづくりを支える実装パートナーとして新たな価値を提供していく。
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提供:千住金属工業株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2026年9月16日








