スマートフォン「iPhone」歴代モデルの要素技術(前編):福田昭のデバイス通信(527) 2026年度版実装技術ロードマップ(10)(1/2 ページ)
「2026年度版 実装技術ロードマップ」の概要を紹介するシリーズ。今回から「2.2.2 モバイルデバイス、メタバース」を取り上げる。「iPhone」が搭載してきたアプリケーションプロセッサの概略が紹介されている。
「2.2.2.1 モバイルデバイス」の概要(前半部)を説明
電子情報技術産業協会(JEITA)が2026年6月に発行した「2026年度版 実装技術ロードマップ」の概要をご報告するシリーズの第10回である。報告のベースは、2026年6月9日に開催された完成報告会(注:報告会の撮影および録音は禁止)の講演スライドとロードマップ本体だ。ロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(JJTRC:Japan Jisso Technology Roadmap Council)のご協力を得て講演スライドの一部を掲載している。この場を借りて同委員会の皆さまに深く感謝したい。
シリーズの第4回では、「第2章 注目される市場と電子機器群」の第2章第2節「2.2 情報通信」の概要説明を始めた。「2.2 情報通信」は、「2.2.1 コンピューティングの分類および動向」と「2.2.2 モバイルデバイス、メタバース」に大別される。前回で「2.2.1 コンピューティングの分類および動向」の概要説明を完了した。今回から、「2.2.2 モバイルデバイス、メタバース」の概要を述べていく。
「2.2.2 モバイルデバイス、メタバース」は、「2.2.2.1 モバイルデバイス」と「2.2.2.2 メタバースデバイス」「2.2.2.3 5Gミリ波、6G実装動向」で構成される。最初の項目「2.2.2.1 モバイルデバイス」は「(1)スマーフォン iPhoneのAシリーズチップ動向」「(2)スマーフォン iPhoneのカメラモジュール動向」「(3)スマーフォン iPhoneのチップ部品実装技術」「(4)スマーフォン iPhoneの放熱技術」の4つに分かれる。
2017年から2025年までのiPhoneが搭載してきたアプリケーションプロセッサ
「(1)スマーフォン iPhoneのAシリーズチップ動向」では、2017年から2025年までの歴代「iPhone」が搭載してきたアプリケーションプロセッサ(A-CPU)の概略をまとめた。ロードマップ本体では1枚の表組となっているものの、完成報告会の講演スライドでは縦横比の都合から上下2枚に分割している。一覧するにはやや不便だが、ご了承されたい。
アプリケーションプロセッサ(A-CPU)の設計ルールは2017年モデル(iPhoneX/8)の10nm(CPU名は「A11 Bionic」)から、2023年モデル(iPhone15Pro/15Pro Max)の3nm(同「A17 Pro」)まで縮小した。以降は2025年モデルのCPU(「A19 Pro」)まで3代連続で3nmプロセスが使われている。なお「CPU」と表記しているが、実際にはCPUコアとGPUコア、NPUコアをモノリシック集積した大規模SoC(System on a Chip)である。
A-CPUのシリコンダイ面積は2017年〜2025年で、最小88mm2(2020年の「A14 Bionic」)と最大113mm2(2022年の「A16 Bionic」)の間で大小に変化した。2025年モデルの「A19 Pro」は98.68mm2となっている。
最大動作周波数はモデルチェンジごとにわずかずつ、上昇してきた。2017年の「A11 Bionic」が2.39GHzだったのに対し、2025年の「A19 Pro」は4.38GHzに達している。
ここからはパッケージ技術を概説しよう。2017年から2025年まで、パッケージには一貫して「InFO PoP(Integrated Fan-Out Package on Package)」技術が採用されてきた(参考記事:「モバイル端末向けパッケージング技術「FOWLP」(後編))。アプリケーションプロセッサ(A-CPU)をInFO技術によって封止し、その上にLPDDR系のDRAMのパッケージを搭載するパッケージ技術である。
上記のことから、全体としては異種マルチコア集積の大規模プロセッサ(SoC)の上に主記憶(DRAMパッケージ)を載せた、薄型小型モジュールであることが分かる。
パッケージの寸法は縦15mm〜17mm×横13mm前後×高さ0.8mm〜0.9mmである。世代が変わっても、おおよそ同じ寸法を維持してきた。パッケージ裏面にはボール(球)状の電極が連なっている。電極数は1200個〜1700個と幅広い。
主記憶であるDRAMの記憶容量は2017年モデル(「A11 Bionic」)の3GB(24Gbit、LPDDR4)から、2018年モデル(「A12 Bionic」)で4GBのLPDDR4X、2020年モデル(「A14 Bionic」)で6GBのLPDDR4X、2023年モデル(「A17 Pro」)で8GBのLPDDR5と拡大してきた。2025年モデル(「A19 Pro」)では12GBのLPDDR5Xとさらに拡大が進んだ。
歴代「iPhone」が搭載してきたアプリケーションプロセッサ(A-CPU)の変遷(その1)。項目は上から西暦年(Year)とモデル名、CPU名、設計ルール、シリコンダイ面積、ダイ写真、プロセッサコア数、最大動作周波数、パッケージ技術(Package type)まで。パッケージ裏面写真以降の項目は(その2)に続く[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会
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