小型/低消費電力の強みを中高耐圧電源ICでも トレックストレックス・セミコンダクター 代表取締役社長執行役員 木村岳史氏

トレックス・セミコンダクターは、小型/低消費電力を強みにする電源ICを中高耐圧領域へと拡大させる。技術営業を強化しながら、36V耐圧のコイル一体型電源ICを投入し、産業機器、車載機器市場での売り上げ拡大を目指す。同社の2025年事業戦略について2024年4月に代表取締役社長執行役員に就任した木村岳史氏に聞いた。

» 2025年01月16日 10時00分 公開
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短期的には「販売力強化」に取り組む

――社長就任初年度を振り返ってください。

木村岳史氏 年度当初は下期(2024年10月)以降に市場が回復すると予想していたが、予想に反して需要回復は限定的で厳しい年になった。特に中国市場の不振の影響で国内産機市場の在庫調整が長引いている。

 ただ足元をみると、海外市場とりわけアジア市場での短納期受注が増えていて、回復の兆しが見え始めている。国内産機市場の在庫調整も2025年春ぐらいには一段落し、その後回復していくとみている。

――事業方針について教えてください。

木村氏 小型、低消費電力を特徴にした電源ICやアナログICを民生機器/コンピューティング、産業機器、自動車の3分野に展開していくという基本方針に変わりはない。

 ただ足元は厳しい市場環境であり、ここ1〜2年の短期的には販売力の強化に取り組んでいく。中長期的には、産業機器、自動車分野での事業拡大に向けて、民生機器/コンピューティングで培ってきた小型/低消費電力技術を36Vや60V以上の中高耐圧分野へと広げていく。

FAE増員しコイル一体型電源IC「micro DC/DC」などを拡販へ

――販売力強化に向けどのような取り組みを進めていますか。

木村氏 2024年10月に技術営業の専門組織を立ち上げ、フィールドアプリケーションエンジニア(FAE)を大幅に増強した。これまで製品開発に携わってきたエンジニアをFAEとして、顧客に接する場所に配置することでより細かな技術サポートを提供するとともに、顧客ニーズを次の製品開発に生かす狙いがある。

 2025年3月にはコイル一体型DC/DCコンバータ「micro DC/DC」の36V耐圧品をリリースする予定だ。micro DC/DCはノイズが小さく、機器の小型化に貢献するなど多くの利点がある。ただ、通常のDC/DCコンバータに比べ単価はどうしても高くなるため、技術的優位性をしっかりと説明する必要がある。産業機器の12V系、24V系のプライマリー電源に対応する36V耐圧品は新たな需要を取り込める商品であり、技術営業部門を生かして受注を拡大させていく。

トレックスの新製品例。左が36V耐圧の降圧DC/DCコンバータ「XC9704/XC9705シリーズ」。右がコイル一体型DC/DCコンバータ「XCL109/XCL110シリーズ」。まもなく36V耐圧DC/DCコンバータとコイルを一体化させた新製品も投入する予定だ[クリックで拡大] 提供:トレックス・セミコンダクター

――2025年の注力商品について教えてください。

木村氏 micro DC/DCについては36V耐圧品だけでなく、低耐圧品でも大電流対応などラインアップの拡大を進めていて、より多くのニーズに対応できると期待している。

 2023年にリリースした実装面積が3.52mm2の超小型DC/DCコンバータ「XC9290/XC9291シリーズ」はPC用カメラモジュールなどで予想以上に採用され、2025年も期待できる商品だ。

 電源以外でも、理想ダイオード機能を搭載したロードスイッチICに期待している。類似製品があまりない独自性の強いデバイスであり、モバイル機器などのバッテリーからの逆流防止用途などで多くの引き合いを得ている。産業機器向けなどの品種を拡充していく。

長期安定供給体制を拡充して車載機器市場への浸透を加速

――子会社の半導体受託専門企業(ファウンドリー)であるフェニテック・セミコンダクターと連携して、パワー半導体事業も開始されています。

木村氏 フェニテックは、ディスクリート製品の製造がメインであり、その中でパワーデバイスの製造にも強みをもっている。シリコンをベースにした、パワーMOSFETやIGBTをはじめ、化合物半導体のSiC、酸化ガリウムといった次世代のパワーデバイスの開発も進めている。SiCのSBD(ショットキーバリアダイオード)は既に量産し、2025年3月までにはSiC-MOSFETの量産を始める計画だ。その中で、一部のパワーデバイスをトレックスブランドとしてリリースしている。

 2024年にパワー半導体事業推進部を設けて、パワーデバイスと電源ICを組み合わせたソリューションの模索など本格的な事業拡大に向けた準備を進めている。

トレックス・セミコンダクターグループの構成[クリックで拡大] 提供:トレックス・セミコンダクター

――車載向けビジネスの見通しはいかがですか。

木村氏 車載情報機器などで電源ICの採用が拡大している。ただ、トレックスはファブレスで製造委託先工場の統廃合というリスクがあり、車載市場で要求される長期安定供給体制の構築が容易ではなく、事業拡大のネックになっていた。この課題に対し、フェニテック鹿児島工場に今期を最終年度とした約44億円の設備投資を実施し、トレックス専用ラインを構築してきた。既に稼働を始め、2025年度中にはフェニテックにおけるトレックス製品の生産能力は2022年度比の3倍に達する見込みだ。自社工場ともいえる製造ラインの稼働で、より長期安定供給を提供しやすくなり、車載向けビジネスを拡大させる体制が整った。

「成長し続けていく」

――2025年の目標をお聞かせください。

木村氏 2025年に限らないが「成長し続けていく」が目標だ。企業として業績を成長させることはもちろん、社員一人一人も成長し続けていき、企業としての成長、人としての成長を実感できるような会社にしていきたい。2025年3月には、会社設立30年という節目を迎える。その節目に合わせて、10年後のトレックスを考える社員中心のプロジェクトや、既存の開発ロードマップとは別に10年後の新しい製品ポートフォリオを検討するプロジェクトなどをスタートさせた。当社はファブレス半導体メーカーであり、常に新しいことに取り組み、技術進化を遂げなければ成長はない。さまざまな新しいことにチャレンジし、成長を実現する。


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提供:トレックス・セミコンダクター株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2025年2月15日

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