日清紡マイクロデバイスは、信号処理系アナログICや電源ICといったアナログIC技術をコアにしながら、モジュールやデータソリューションを展開する「アナログソリューションプロバイダー」へと歩みを進めている。2025年もモジュールやデータソリューションへの投資を継続する。2024年3月から同社代表取締役社長を務める吉岡圭一氏に2025年の事業戦略について聞いた。
――2024年を振り返ってください。
吉岡圭一氏 ひと言で言えば、非常に厳しい1年だった。当初、半導体市況は2024年後半に回復していくとみていたが、回復が遅れている。当社売上高の9割ほどを占める半導体事業の主要ターゲットは、産業機器、車載機器、民生機器の3分野だが、そのうち産業機器は在庫が滞留し、新しい受注が増えず厳しい状況が続いている。
車載機器に関しては、バッテリーEV(電気自動車)向けで一部需要が低迷しているが、PHEV(プラグインハイブリッド)車などバッテリーEV向け以外は比較的堅調に推移している。スマホ、カメラ、ゲーム機など民生機器は顧客によって多少まだら模様にはなっているが、好調に推移した。
――2025年以降の半導体市況はどう見通していますか。
吉岡氏 米国の政権交代など地政学的な面で不透明な部分があるが、産業機器分野の在庫調整局面はしばらく続くとみていて、2025年前半は厳しい市況になると覚悟している。
――厳しい市況を予想する2025年の事業テーマを教えてください。
吉岡氏 「黒字化必達、安定的利益創出事業への革新とSINKA」を2025年のスローガンとして掲げている。
残念ながら2024年は厳しい市況によって営業赤字となる見込みだ。当然のことではあるが、営業活動の強化に取り組むとともに、工夫を凝らして固定費の削減を実施し2025年は必ず黒字転換を果たす。
その上で、安定的利益創出事業での革新、SINKAを実現していく。
――安定的利益創出事業とはどのような事業ですか。
吉岡氏 一つはシリコンサイクルの影響を受けにくい安定した事業で、もう一つは利益率の高い事業だ。
外的影響を受けにくい安定した事業として車載事業の売り上げ比率をさらに伸ばしていく。2024年には、車載ASSPプロジェクトチームという専門組織を立ち上げた。国内外の自動車メーカー、Tier1との対話機会を増やしながら、自動車メーカーごとの要求に迅速に対応することが狙いだ。国内自社工場で生産する品質や特殊パッケージなどに対応するエンジニアリング力が評価され採用数は拡大している。2025年はさらにこうした自動車メーカーとの連携を強化していく。
利益率の高い事業としては、モジュール事業、データソリューション事業を強化していく。2022年の発足以来、デバイス単体をより強化する「深化」、複数のデバイスをモジュールなどにして提供する「進化」、デバイス/モジュールをコアにサービス/ソリューションを提供する「新化」という3つの「SINKA」を強化してきた。その中で、当社にとってより挑戦的な取り組みになる「進化」と「新化」を2025年は一層、加速させたい。
――進化に相当するモジュール事業の戦略を教えてください。
吉岡氏 2022年から佐賀の生産拠点(日清紡マイクロデバイスAT)で稼働させたモジュール実装ラインを生かし、さまざまなモジュールを開発、リリースしてきた。マイクロ波センサーモジュールとミリ波センサーモジュールや、長く培ってきた光半導体、RF技術を基盤にした光センサーモジュールなどだ。光センサーは「回路技術」「デバイス技術」「実装技術」という3つの強みが融合した「三位一体」によって、特徴のある製品を数多く投入し、売り上げも順調に伸びている。オペアンプ、電源ICに続く第3の柱になる製品として期待している。
――データソリューション事業の進捗はいかがですか。
吉岡氏 さまざまなセンサーユニットを使用し、センシングデータをクラウドにアップロードし、そうしたデータから価値を提供するビジネスの構築を図っている。超音波センサーを使用した予知保全ソリューションやにおいセンサーを使ったソリューションなどが開発段階にある。においセンシングについては、介護向けソリューションや無人化の進む最先端半導体工場での火災予防ソリューションとして開発中で一部実証実験も開始し、実用化に着実に近づいている。
――モジュールやデータソリューションといった新たなビジネス展開で、人的リソースの拡充が必要になります。
吉岡氏 特に当社にとって新しいビジネスであるデータソリューション事業のリソースはまだまだ足りていない。人員を増強していくが、積極的にパートナーとの協業も進めていく。モジュール事業での協業になるが、2024年には沖電気工業(OKI)とともに開発した3次元アナログIC技術を発表した。アナログICチップ上に、アナログやロジックといったさまざまなICチップを積層できる技術であり、新たなセンサーデバイスなどを構築できる可能性のある技術だ。今後もこうした協業をさまざまな領域で実施したい。
――2024年3月に社長に就任されました。社長としての目標をお聞かせください。
吉岡氏 日清紡グループにおける2035年ごろの事業ポートフォリオとして、当社のマイクロデバイス事業と、日本無線や国際電気(旧:日立国際電気)が手掛ける無線/通信事業といったエレクトロニクス関連事業でグループ売上高の8割以上に引き上げていく目標を掲げている。2023年実績は、無線/通信事業が29%、当社のマイクロデバイス事業が15%ほどであり、大きく事業を拡大させなければならない。そのための準備、礎を築くことが社長としての役割だと考えている。
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提供:日清紡マイクロデバイス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2025年2月15日