ETAS(イータス)は2025年、自動車電子システムの計測、適合、診断ツール「INCA」、オートモーティブミドルウェア、サイバーセキュリティなどのソリューションを軸に、ビジネスの「選択と集中」を加速させる。自動車業界ではこの1年、EV(電気自動車)シフトの減速傾向が明らかになり、SDV(Software Defined Vehicle)市場でも変化が訪れつつある。イータスの日本法人で代表取締役社長を務める水本文吾氏は「柔軟な対応が必要になる」と語る。同氏に、イータス日本法人の2025年における事業戦略などを聞いた。
――イータス日本法人の社長に就任されて1年3カ月が経過しました。2024年を振り返っていかがでしたか。
水本文吾氏 日本法人は、順調にビジネスが拡大した。当社の計測、適合、診断ツール「INCA」など既存ソリューションだけでも日本円ベースで前年比20%増となった。2024年7月に親会社のボッシュから引き継いだ診断ソリューションの売り上げも合わせると4割近い成長を達成した。総じて、手応えを感じた1年となった。
――好調の理由をどのように分析していらっしゃいますか。
水本氏 既存ソリューションの大きな伸びは、主に日本とASEANに見られたものだ。背景には、これらの地域のOEM/サプライヤーが、パワートレインの開発を内燃機関車(ICEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、バッテリー自動車(BEV)のマルチパスウェイで手掛けていることが挙げられる。EV(電気自動車)へと一気に舵を切った欧米や中国とは対照的だ。日本やASEANではEV以外の従来のパワートレインでも新規開発があり、計測/適合ソリューションの需要が高い。BEV開発においても、当社のソリューションへと置き換えが進んでいる。
サイバーセキュリティソリューションではHSM(ハードウェアセキュリティモジュール)の採用が拡大した他、セキュリティ関連のコンサルティングサービスも好調だった。これらが日本法人の成長の追い風となった。
――2025年の戦略についてお聞かせください。
水本氏 イータス全体として「選択と集中」に力を入れていく。需要が高く安定して利益を出しているソリューションを軸足とし、収益性をさらに高めるべくビジネスの選択と集中を強化する。日本は前述した通り、INCAやサイバーセキュリティなどのソリューションが大きく成長しているので、2025年もしっかりとこの成長を維持していく。
それと並行して、新しい取り組みも進める。マイクロプロセッサや統合ECU向けの計測/診断ソリューションでは具体化しつつあるプロジェクトもあり、まずはそれを成功させる。コネクテッドカー用の診断ソリューションの開発も進んでいて、一部の顧客が評価中だ。車両の状態監視をリアルタイムで行う機能や、自動車への診断機能の搭載などを提案していく。
2024年は多くの企業とパートナーシップを締結し、リソースを柔軟に確保するための施策を行った。2025年もパートナーシップの拡大を強化する。
――イータスはSDV(Software Defined Vehicle)ソリューションも展開しています。最近のSDV市場はいかがですか。
水本氏 ここ数年、車両の価値向上のためにどんどん進められていたSDVだが、まだこれからの市場だ。高性能プロセッサやセンサーの採用によるコスト増が想定以上に負担になるなど、容易には進まなかった。現在はSDVの志向が少し変わり、ソフトウェアのリユースや複数のECUの統合など、「コスト削減や最適化のためのSDV」にフォーカスされてきている。もともと、開発のしやすさやコスト削減もSDVの重要な目的の一つではあった。
――それによって、イータスが提案するソリューションに変化はありますか。
水本氏 少なくとも日本では、あまりない。上述したことからも分かるように、SDVは市場がこれから成長していく。イータスとしては、SDVのフォーカスポイントがどこにあろうと、顧客/市場セントリックで柔軟に対応していくことに加え、SDVに資するAUTOSARやADAS(先進運転支援システム)向けの車載ミドルウェアも継続的に提案していく。
――2025年以降の車載ソフトウェア市場について、どのように見ていますか。
水本氏 長期的には必ず拡大していく市場で、縮小することはまずないといえる分野だ。新しい試みも積極的に行われている。イータスは、コアビジネスである計測/適合ソリューション、セキュリティソリューション、車載ミドルウェアに継続的に投資していく。
――米中対立が当面続きそうですが、イータスのビジネス面における影響はありますか。
水本氏 これはドナルド・トランプ氏の再選前からみられる動きだが、日本や欧米の企業が開発拠点を中国からASEANに移し始めている。この影響で、ASEANを統括しているイータス日本法人のビジネスも成長している。車載ミドルウェアの売り上げ増がけん引役となり、2024年におけるASEANでのビジネスは前年比で2倍以上伸びた。特徴的なのが、ASEANのOEMからも引き合いが増えていることだ。当社の顧客の裾野が広がりつつあり、今後も成長が期待できる。
――イータスにおいて日本市場に対する期待はいかがですか。
水本氏 世界の自動車市場において、日本のOEMや部品メーカーは依然として高いシェアを持ち、勢いもある。日本市場の成長に合わせたビジネスの伸びを、われわれも期待されている。SDV市場の変化もしっかりと見極めながら、既存ソリューションを軸に、柔軟に対応できるソリューションを提供することで、日本の自動車産業に貢献していく。
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提供:イータス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2025年2月15日