パワー/センサー/アナログ・ミックスドシグナルの3本柱でメガトレンドに攻勢、オンセミオンセミ 代表取締役社長 林孝浩氏

オンセミ(onsemi)は、自動車/産業/AIデータセンター市場をターゲットに、「パワーデバイス」「センシング」「アナログ/ミックスドシグナルプラットフォーム」の3分野で攻勢をかけている。新製品の投入に加え、SUBARUやデンソーとの協業やSiC事業の買収を発表するなど、パートナーシップの強化と積極的なM&A戦略で中核事業の拡大を狙う。「先端技術と製造最適化で顧客のイノベーションをサポートしたい」と語る日本法人社長の林孝浩氏に2025年の事業戦略を聞いた。

» 2025年01月16日 10時00分 公開
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2024年は売上高減少も車載ビジネスで確かな手応え

――2024年を振り返って、どんな1年でしたか。

林孝浩氏 足元の状況は厳しかった。2024年7〜9月期の全社売上高は17億6190万米ドルで、前年同期を19%下回った。特に大きく落ち込んだのは、在庫調整局面が続く産業分野だ。自動車関連の売上高は、電動化のトレンドでクルマ1台当たりに搭載されるデバイス数が増えてきているものの、前年同期比で減少した。

 とはいえ、ADAS(先進運転支援システム)やxEV(電動車)向けに、パワーデバイスやセンサーの引き合いは多かった。2024年11月にはSUBARUとイメージセンサー設計で協業を発表し、12月にはデンソーと車載半導体分野での連携強化を発表するなど、日本市場での自動車向けビジネスで大きな進展があった年でもあった。3年後、5年後のビジネスにつながるような良い1年だったといえる。

開発期間を短縮するアナログ/ミックスドシグナルプラットフォーム

――2025年の市況はどのようになると分析されていますか。

林氏 予想するのは難しいが、年後半に向けて回復局面になるのではないかとみている。2024年は在庫調整が続いていたとはいえ、自動運転技術の進展や電動化で半導体の需要が高まるという大きなトレンドは変わっていない。このトレンドは今後さらに加速していくだろう。

――そうしたトレンドを踏まえて、オンセミの製品戦略についてお聞かせください。

林氏 自動車/産業/AI(人工知能)データセンター市場をターゲットに、「パワーデバイス」「センシング」「アナログ/ミックスドシグナルプラットフォーム」を大きな柱として顧客の課題解決に努めていく。

オンセミの製品戦略 オンセミの製品戦略[クリックで拡大] 提供:オンセミ

 パワーデバイスは、SiC(炭化ケイ素)を用いた製品群「EliteSiC」の強化を継続する。2024年7月には第3世代品「EliteSiC M3e MOSFET」を発表した。前世代品と比べて、導通損失を30%、ターンオフ損失を最大50%低減できる。12月にはQorvoから子会社であるUnited Silicon Carbide(UnitedSiC)を含むSiC JFET事業を買収することを発表した。これによってEliteSiCのポートフォリオを拡充し、AIデータセンター市場にもアプローチしていく計画だ。

 センシングは、「Hyperlux」イメージセンサーファミリーを中心に展開する。AI推論処理に最適な画像を取得できる「AR0823AT」は、SUBARUの運転支援システム「アイサイト」の次世代システムにも採用された。高いシェアを持つ超音波センサーもADASのメガトレンドに向けて重要視している。

自動車1台に、多くのオンセミ製品が採用されている 自動車1台に、多くのオンセミ製品が採用されている[クリックで拡大] 提供:オンセミ

――アナログ/ミックスドシグナルでは、ユニークな製品の発表がありました。

林氏 アナログおよびミックスドシグナルプラットフォームは、2024年11月に65nm バイポーラCMOS-DMOS(BCD)プロセスを活用した「Treoプラットフォーム」を発表した。「通信」「パワーマネジメント」「センシング」「コンピュート」の4つのサブシステムからライブラリ化したIP(Intellectual Property)を組み合わせ、迅速にICを開発できる。自動車も産業機器も、開発サイクルの短縮がより強く求められている中、Treoプラットフォームを用いれば最も時間がかかるであろう半導体開発の期間を短縮できる。1〜90Vと広い電圧範囲に対応しているので、自動車電源の12V系から48V系への移行もスムーズになる。TreoプラットフォームのIPライブラリは今後も拡充を続けていく。

「Treoプラットフォーム」の概要 「Treoプラットフォーム」の概要[クリックで拡大] 提供:オンセミ

効率的な開発に向け事業グループを再編

――製品開発以外でも取り組まれていることはありますか。

林氏 事業グループの再編だ。これまでは「パワーソリューションズ・グループ(PSG)」「インテリジェントセンシング・グループ(ISG)」「アドバンストソリューション・グループ(ASG)」の3つの事業グループがあった。2024年3月に、PSGの一部であった集積回路部門(ICD)とASGを統合して「アナログ&ミックスドシグナル・グループ(AMG)」を新設し、PSG、ISG、AMGの3グループに再編して、より効率的でスピーディな開発を実現できる体制を構築している。

 生産体制の強化も続けている。2024年6月にはチェコのSiC製造拠点拡大を発表した。今後も、地政学リスクに懸念を持つ顧客にも安心してもらえるような体制を整えていく考えだ。

先端技術と製造最適化で日本の顧客に貢献

――日本での事業方針についてもお聞かせください。

林氏 オンセミでは日本を重要な市場と見て、「アジア」「ヨーロッパ」「南北アメリカ」と並ぶ独立した地域として位置付けている。品質や技術力を重視する日本の顧客からのフィードバックの意義も大きい。

 自動車向けにはxEVやADAS、安全システム向けに幅広い製品ポートフォリオを提供し、日本の顧客の成長にコミットする。産業向けは、HVAC(暖房・換気・空調)のように大電力を必要とする用途にはパワーデバイスで、マシンビジョンにはイメージセンサーで貢献できるだろう。今後も先端技術と製造最適化でイノベーションをサポートしていきたい。

 さらに、社会課題の解決にも取り組む。オンセミは2030年までに50%の再生可能エネルギー利用、2040年までにはネットゼロを目標としている。ADASによる死亡交通事故の防止にも注力していく。


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提供:オンセミ
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2025年2月15日

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