車載ソフトウェア開発の基盤を再定義する ―― イータスが挑む標準化と自動化イータス 代表取締役社長 水本文吾氏

自動車業界の開発現場は、クルマの機能をソフトウェアで定義するSDV(Software Defined Vehicle)への移行が進む。「電動車」や「自動運転車」の開発競争も本格化する中、開発に携わる技術者の負荷は増すばかりで、技術者不足といった課題も抱えている。こうした中でETAS(イータス)は、「計測・診断の自動化」や「オープンソースの標準化」などを強力に推進することで、SDV時代に対応できる開発環境を自動車メーカー(OEM)などに提供している。イータスの日本法人で代表取締役社長を務める水本文吾氏に、2026年の事業戦略などを聞いた。

PR/EE Times Japan
» 2026年01月14日 10時00分 公開
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開発効率の改善にイータス製品が貢献

――2025年の市場環境はいかがでしたか。

水本文吾氏 2025年は北米市場における自動車関税の問題や中国市場における競争の激化など経済環境が大きく変化した。バッテリーEV(BEV)に対する開発意識の変化も影響した。

 北米市場における自動車関税の問題は、イータスにとって直接的な影響は少ない。しかし、当社の顧客である自動車メーカー(OEM)やTier 1が影響を受けており、一部の顧客では開発投資を削減する動きもあった。日本と東南アジア市場を担当するイータスの日本法人では、こうした状況下でも業績は堅調に推移した。

――厳しい環境で、日本法人が業績を伸ばせたのはなぜですか。

水本氏 日本の顧客は、BEVだけでなくハイブリッドEV(HEV)や燃料電池車(FCV)、内燃機関車など、複数のパワートレイン開発に投資するマルチパス戦略を展開している。案件が増える中、限られたリソースで成果を上げるため、イータス製品を活用して開発効率向上を図っている。

EHANDBOOKのビジネスが前年比で2倍に

――日本市場で好調な製品を教えてください。

水本氏 車載システムの計測・適合・診断ツール「INCA」の良さが再認識された。INCAの機能をフルに活用することで、計測・適合・診断といった作業を自動化、省人化できるためだ。

 高品質の機械学習モデルを自動生成できるツール「ETAS ASCMO」のビジネスも好調に推移した。測定データに基づき、リアルタイムの挙動を学習しAI/MLモデルに変換する。電動モーターや内燃機関など、さまざまなドメインに対応できる。

――電子制御ユニット(ECU)の仕様を可視化するツール「EHANDBOOK」の評価はいかがですか。

水本氏 EHANDBOOKはモデルやドキュメント、Cコードなど数千に及ぶ制御仕様書を、「コンテナ」と呼ばれる1つのファイルにまとめている。このため、OEMとTier 1がこのコンテナファイルを共有し活用することで情報交換がスムーズに行え、開発作業の効率を飛躍的に高められる。

 仕様書の間で受け渡しされるRAM(変数)を容易に追跡したり、モデル仕様書上から適合値を直接確認したりでき、制御仕様の解析を効率化できる。INCAとの連携により、RAMや適合値の設定や解析が容易になり、制御デバッグの効率化につながる。2025年はEHANDBOOKのビジネスが前年比で2倍ほど伸びた。

「EHANDBOOK」の構造[クリックで拡大] 提供:イータス

オープンソースの標準化でイニシアティブを

――2026年の事業戦略をお聞かせください。

水本氏 2025年に事業を再編し「車載システムの計測・適合・診断ツール」、車載ミドルウェアなどの「オンボードソリューション」、車両診断やサイバーセキュリティといった「オフボードソリューション」という3事業に絞り込んだ。これらの事業を基盤にして2026年はさらなる成長を目指したい。

 注力分野の1つとして、中央集中型E/Eアーキテクチャに向けた車載ミドルウェアの「オープンソースの標準化」に取り組む。その中で、Eclipse Safe Open Vehicle Core(S-CORE)プロジェクトの活動を支援していく。S-COREは、POSIX準拠OS上で動作する安全なオープンソースのミドルウェアプラットフォームだ。

 イータスでは、「ETAS Vehicle Software Platform Suite」の一部としてS-COREに基づく生産グレードのミドルウェアを提供していく。次世代の車載ソフトウェアを形作る上で、オープン性と協業は不可欠だと考えている。JASPARが取り組むカーエレクトロニクス領域での標準化活動にも貢献していきたい。

――親会社のボッシュから引き継いだ診断ソリューションの状況を教えてください。

水本氏 走行中やアフターサービスのクラウドベースの車両診断、製造ラインでの構成・テスト・フラッシュを効率化する工場診断、サービスマニュアルのオーサリング・配信で、修理情報を即時提供する車両情報サービスの3つを展開している。次世代の車両情報サービスは生成AIも活用して整備マニュアルなどを自動生成することで、エンジニアの工数を70-80%も削減できる。

 SDV向けの診断規格「SOVD(Service-Oriented Vehicle Diagnostics:サービス指向の車両診断)」に対応した診断システムを提案している。このシステムを導入すれば、リアルタイムかつリモートで車両の状態を瞬時に診断できるようになる。

――自動車分野でもサイバーセキュリティ対策は必須となってきました。

水本氏 日本法人においてセキュリティビジネスは堅調に推移している。コンサルティング需要が増え、対応が追い付かない状況だ。

――イータス日本法人が担当する東南アジア市場についてはいかがですか。

水本氏 地政学的な要因もあり、自動車の開発拠点が中国から東南アジア地域に移行しておりビジネスが拡大している。

AIモデルを組み込みマイコン用のCコードに変換

――学習済みニューラルネットワークモデルを、各種マイコンやプロセッサ向けのCコードに変換するコード生成ツール「Embedded AI Coder」も登場しました。

水本氏 Embedded AI Coderは「PyTorch」や「TensorFlow」あるいは「ETAS ASCMO」など機械学習フレームワークのモデルを入力として用いることができる。生成されたCコードは、実機に組み込んで動作させるほか、イータスが提供しているプロトタイピングツール「INTECRIO」や「EHOOKS」「VECU-BUILDER」による仮想ECUを活用し、早期に動作を検証できる。

AI実装プロセスにおけるコード生成ツール「Embedded AI Coder」の位置付け[クリックで拡大] 提供:イータス

 このツールは、極めて高速でメモリ使用効率が高い。製品開発者がこのツールを活用すれば、組み込み機器にAI機能をシームレスに統合できるようになる。日本ではまだ訴求が十分ではないが、特別なハードウェアなしでもエッジAIを実現でき、多くの顧客に利用してもらえるツールだ。


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提供:イータス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2026年2月13日

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