2026年に創業80周年を迎えるサンケン電気。強みを持つIPM(Intelligent Power Module)に加え、買収したパウデックの高耐圧GaN技術を中核として、パワーエレクトロニクス事業を加速させていく。サンケン電気 技術開発本部 パワーデバイス開発統括部長の小池憲吾氏に、同事業の戦略や開発計画について聞いた。
――2025年を振り返ってください。
小池憲吾氏 大変厳しい1年だった。2025年11月には2025年度通期業績見込みを下方修正し、非常に厳しい結果を見込んでいる。主な要因として、電気自動車(EV)用トラクションモーター市場の立ち上がりが遅れていることや、中国の半導体メーカーの勢いが強まっていることなどが挙げられる。
――パワーエレクトロニクス事業についてはいかがでしょうか。
小池氏 2025年4月1日に、「PSJGaN(Polarization Super Junction:分極超接合、窒化ガリウム)」を手掛けるパウデックの買収を発表し、10月1日付で吸収合併した。GaNパワーデバイスのビジネスに再チャレンジできる土台が整ったことは、当社にとって非常に大きい。
サンケン電気はLEDデバイスにおいてGaNエピタキシャル膜の研究、開発、生産実績があり、GaNデバイスについては過去数十年にわたり知見を蓄積してきた。GaNを用いたパワーデバイスについては、展示会で試作品を披露したこともあったが、残念ながら当時は本格量産には至らず、事業化を断念した過去がある。
GaNなどの化合物半導体は近年大きな盛り上がりを見せている。パウデック買収によって、もう一度この成長市場に挑戦する機会を得られた。GaNの知見を持つわれわれから見ても、パウデックは素晴らしい技術を持っている。これがGaN市場参入の最後のチャンスだと考えているので、サンケン電気の技術と組み合わせることで高品質なパワーデバイスを開発し、市場に投入していきたい。
――2024年1月の能登半島地震で被災した石川サンケン志賀工場(石川県志賀町)の現状についてお聞かせください。
小池氏 志賀工場は建屋の被害が大きく、残念ながら製造の継続が厳しいという判断になった。2026年4月末の閉鎖に向けて、石川サンケン堀松工場を始め、関係会社への移管作業が計画通りに進んでいる。
――半導体/エレクトロニクス業界は先を見通しにくくなっていますが、2026年のパワーデバイスの市場環境をどうみていますか。
小池氏 中国の市況がよくないので、民生関連はそれほどよくはないだろう。一方で自動車関連については、一定以上の安定した需要があると見込んでいる。AIのデータセンターは非常に活況になると予測している。
――2026年以降を見据えた中長期的なパワーデバイス事業の戦略をお聞かせください。
小池氏 パウデックを吸収合併したこともあり、GaNが一つの柱になる。パウデックのPSJGaNは、サファイア基板をベースに、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)をGaNで挟む独自の構造を取っており、これによって1200Vや1700Vの高耐圧化が可能になる。通常、GaNパワーデバイスは600V〜800Vの中耐圧品が多いので、高耐圧品は大きな差別化要因だ。高耐圧PSJGaNを中核としたソリューションで、巨大市場である中国に対しても引き続き攻勢をかけつつ、欧州、インドなどの新興市場も重点的に狙う。
AIデータセンターでは電源システムが変換点にあり、従来のAC220VではなくDC800Vを用いる構想が検討されている。高耐圧PSJGaNはこうした領域で強みを発揮できると期待している。
PSJGaNの信頼性確認は完了し、現在は社内にパウデックとサンケンの技術を掛け合わせた量産ラインを立ち上げている。2026年を通して、量産に向け開発を加速させる。併せて、PSJGaNの性能を引き出すドライバーICも開発中だ。GaNデバイスは高周波用途で使用されることが想定されるが、高速スイッチングをすると誤動作しやすくGaN単体で使いこなすのが難しい。われわれが強みとするパワーマネジメント技術やパッケージ技術を駆使しながら、使い勝手のよいGaNソリューションの製品化を急ぐ。
――サンケン電気はIPMでも強いポジションを保持しています。
小池氏 国内3位、世界4位※)の地位を確立している。IPMでもGaNの技術を大いに活用していく。PSJGaNを搭載した、既存品よりも一回り小型の面実装型IPMを開発中だ。まずは白物家電向けIPMからPSJGaNの採用を始め、業務用空調やバッテリー駆動自動車(BEV)といった高耐圧領域のIPMに採用を広げていく。
※)富士経済「2025年版 次世代パワーデバイス&パワエレ関連機器市場の現状と将来展望」
さらに、パワエレ向けのマイコン「MD6605」の量産を2026年に開始する。5世代品となる本製品ではRISC-Vコアを採用し、22nmプロセスを用いる。パワエレ用マイコンは、システム効率を上げ、パワーデバイスの性能を引き出すためにも重要な製品で、当社は約10年前から手掛けてきた。現在、MD6605を搭載した民生/産機向けのAC-DC電源ICや、民生/産機モーター用のデジタル制御IPMなどを開発中だ。
――2026年、サンケン電気は創業80周年を迎えます。パワーデバイスメーカーとしての意気込みをお聞かせください。
小池氏 半導体メーカーあるいはパワーデバイスメーカーとして強いデバイスを持っていることは重要だ。特に競争力の源泉となるパワーデバイスは重要で、強いパワーデバイスがあるからこそ、制御ICやドライバーICと組み合わせて優れた電源ICやIPM、GaNデバイス応用製品などを展開できる。創業80周年に当たる2026年は、さまざまなことに果敢に挑戦していった創業者の精神に立ち返り、GaNパワーデバイス事業への再チャレンジも含めて攻勢をかけていく。
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提供:サンケン電気株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2026年2月13日