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“ソリューション・プロバイダ”として日本企業とより密な関係をフリースケール・セミコンダクタ・ジャパン 社長 ディビッド M. ユーゼ氏

フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは、日本企業と協業し、通信機器や車載機器を短期間で開発できる製品群の提供に注力してきた。社長のディビッド M. ユーゼ氏は、「2014年も協業関係の拡大を図り、“ソリューションプロバイダ”としての成長を目指す。特にIoT(モノのインターネット化)の分野では、高い専門技術を持つ中小企業に注目している」と語る。

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顧客との確かな信頼関係によって売り上げが増加

――2013年の業績を振り返っていただけますか。

ディビッド M. ユーゼ氏 2013年の世界半導体市場規模はほとんど成長せず「横ばい状態」が続いたが、当社は成長を持続した。四半期ごとに利益は増加し、売上高も2013年9月までの実績で前年比4%増を達成している。日本におけるデザインウィンも順調に増えていて、私が日本法人社長に就任する前の2009年に比べて、2013年は40%もアップした。

――成長の原動力となっているのは何ですか。

ユーゼ氏 顧客と信頼関係をしっかり構築できていることが大きい。私は、社員の営業活動を1つ1つトラッキングし、顧客からどのような要望を受けているのかをチェックした。顧客の話に丹念に耳を傾け、どのようなニーズがあるのかを丁寧にすくい取っていった。

“One Great Team!”の精神で、強いパートナーシップを

――2013年の半導体業界のトレンドの1つにIoT(モノのインターネット化)がありました。

ユーゼ氏 当社は、センサーからマイコン、プロセッサまでIoTに最適な製品ポートフォリオを持っている。低消費電力、小型、高性能、無線通信技術といったIoT分野のニーズに応えられるように開発を続けている。

 IoT関連技術を手掛ける多くの企業とも既に協業している。中でも、2013年10月にOracleと協業関係を構築することで合意したのは、大きな動きだった。Oracleの巨大なエコシステムを持つJavaプラットフォームと、性能とセキュリティの面で定評のある当社の組み込み機器向けマイコンは、IoT製品の開発に最適な組み合わせになるだろう。今後は、Oracleの組込み機器向けJava SE実行環境と、当社のARMマイコンなどをベースとして、IoTサービスの導入と管理を一元化する安全なサービス・プラットフォーム「ワンボックス」の開発に取り組む。

――直前の2013年9月には、ロームとの協業も発表されました。

ユーゼ氏 当社は2011年から、毎年日本企業との協業を発表している。2011年は富士電機、2012年はアルプス電気、そして2013年はロームだ。当社は車載向けマイコンが強く、ロームは電源管理ICや個別部品で強みを持っている。ロームとは車載分野だけでなく、民生分野でも協力していく予定だ。

 こうした協業関係を構築し、“ICメーカー/ハードウェアメーカー”から“ソリューションプロバイダ”となることが大きな目標だ。当社は、パートナー企業や販売代理店、顧客など、全てを包括するチームとして「OGT!(One Great Team!)」というスローガンを掲げている。根本にあるのは、武田信玄の名言「人は城、人は石垣、人は堀……」だ。とにかく人でもパートナー企業でも、相手を大切にするという精神で協業関係を広げ、深めている。

 どんな企業にも弱点はある。当社で言うなら、ソフトウェアの面はそれほど強くないし、MOSFET、抵抗器、キャパシタといった個別部品の製品ラインアップは持っていない。だが、こうした弱みはパートナーシップを組むことで補える。だからこそソフトウェア面でいえば、イーソル、メンター・グラフィックス、Oracle、Wind Riverといった多くの企業と協業してきている。ロームは、個別部品は強いがSoCやマイコンには注力していない。そのため、ロームとも、理想的な協業関係を結ぶことができると考えている。

Power ArchitectureコアとARMコアの両方を使用できる新アーキテクチャ

――今後、注目の製品は何でしょうか。

ユーゼ氏 2013年に大変、多くの引き合いを得た77GHz帯ミリ波レーダー送受信チップセット「MRD2001」と「Qorriva MPC577xK」マイクロコントローラによる車載レーダー向けのトータル・ソリューションや、アナログ回路搭載型マイコン「S12 MagniV」、アプリケーション・プロセッサ「i.MX シリーズ」などは、2014年はさらにデザインウィンが進むと期待している。

 そのうちの1つi.MXシリーズの最新製品「i.MX 6プロセッサ」は、シングルコアからクアッドコアまで、ピン互換性とソフトウェア互換性を備えた幅広い製品ラインアップがある。それほど性能が必要ではない用途でも、ハイエンドの用途でも、1つのプラットフォームとしてi.MX 6シリーズを提供できる点が評価されている。

 ローエンドからハイエンドまで1つのプラットフォームで提供するというコンセプトは、ネットワーキング向けのQorIQマルチコア・プロセッサの「Layerscape」アーキテクチャでも同様だ。Layerscapeアーキテクチャは、個別に拡張可能な3つの独立した階層設計を取り入れており、長い実績を誇るPower Architecture コアと近年拡大を続けるARMコアを用途に応じて選択できる特徴を持つ。当社は、携帯電話基地局やMFP(マルチファンクション・プリンタ)、FA(ファクトリ・オートメーション)、通信機器といった、高い性能が必要な用途に向けてPower Architecture製品を提供してきた。Layerscapeアーキテクチャが追加されたことで、ARMコアへの移行を考えている顧客にもメリットがあり、2014年は採用が拡大すると期待している。

――Power Architecture製品からARMコアへの移行は、全体的に進んでいるのでしょうか。

ユーゼ氏 用途分野別による。産業機器やFA、自動車のエンジン制御といった分野ではPower Architecture製品が長年使われていて、それは今後も変わらないだろう。一方で、同じ車載分野でもインフォテインメント・システムのような民生寄りのアプリケーションでは採用が広がっている。通信分野においては、宅内向けゲートウェイ機器、企業向けアクセス・ポイント、スマートエナジー・システム、といったより小型の通信機器へのQorIQプロセッサ採用の拡大を狙っている。

IoT分野では大企業のみならず中小企業とのパートナーシップ構築を目指す

――2014年のビジョンをお聞かせください。

ユーゼ氏 売り上げについては前年比10%増を目指す。デザインウィンは20〜25%増を目標としている。さらに、“ソリューション・プロバイダ”として成長すべく、Win-Winの関係を構築できるパートナーも引き続き探していきたい。

 これまでは比較的大きな企業と協力関係を結んできたが、今後は、特にIoT分野では中小企業に注目していく。これらの企業は専門性の高いユニークな技術を持っているところが多いからだ。既にそうした小規模の企業を4〜5社見つけている。IoT市場は、まだ手探り状態なので、当社の製品ポートフォリオを生かし“IoTといえばフリースケール”と言われるレベルを目指す。例えば、当社では2012年よりOGT!Racingというプログラムのもと、カーレーシングにおいてバイオロジカル・センシングや車両周辺情報(バードビュー)の実装実験を行ってきた。2014年はこれらを発展させて「Intelligent Garage」をテーマに、人・クルマ・ガレージをつなぎ、これらのデータ解析・自己診断を行う実験をパートナー各社と行っていく予定だ。これはまさにIoTビジネスにつながるもので、カーレーシング、市販車、一般ドライバーといったクルマに限定した研究開発ではなく、医療やEV充電スタンド、ディーラー、保険といった新しいビジネス・モデルの創出につなげて行きたい。

 さらに、当社にとって重要な車載分野には今後も注力していく。特に、自動車メーカーとの直接的なパートナーシップを強化していきたい。鍵の1つになるのが、名古屋オフィスだ。私が就任した時には1つの会議テーブルに収まるような人数だったが、今では1フロアの半分を占めるほどに拡大した。自動車メーカーには、専門の営業リソースを当てて、私自身も直接訪問している。名古屋オフィスは、当社の自動車事業の本拠地となる。

 産業分野と民生分野、通信分野にも多くのリソースを投入するつもりだ。当社が伝統的に強い電子書籍リーダー端末やPMP(Personal Media Player)の他、詳細は明かせないが日本特有のかなり大きな民生機器市場に投入する製品の準備を整えている。

――フリースケールにとって、日本市場はどのような存在でしょうか。

ユーゼ氏 フリースケールは、モトローラの時代から50年にわたり日本市場と付き合いがある。当社にとって日本市場が非常に重要なのは今後も変わらない。

 私が就任して1年もたたないうちに東日本大震災が発生した。半導体業界も大変な打撃を受けたが、必ずすぐに立ち直れると信じていた。信頼される外資系半導体メーカーとして、今後も日本市場の発展に貢献していきたい。




提供:フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年2月13日

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