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メモリ市場が大爆発 「5年の壁」を乗り越えられるか湯之上隆のナノフォーカス(93)(1/4 ページ)

AIの強烈な追い風に吹かれ、メモリ市場が「大爆発」している。この「メモリバブル」はいつまで続くのか。メモリ市場の歴史とともに考えてみたい。併せて、超好況のいまだからこそやっておきたい「不況への備え」を提言する。

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メモリ市場が「大爆発」


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 いま、半導体業界、とりわけメモリ市場が「大爆発」と呼ぶべき異常な拡大を見せている。「好調」とか「活況」といった生やさしい言葉では、もはやこの現象を表現しきれない。グラフを一目見れば、誰もがその尋常のなさに息をのむはずだ。

 図1は、WSTS(世界半導体市場統計)のデータを基に、種類別半導体の3カ月移動平均出荷額を1991年から2026年5月まで示したものである。Mos Micro、Mos Memory、Logic、Analogという主要4カテゴリーは、過去30年以上にわたって、好不況の波を伴いながらも、おおむね横並びで緩やかに右肩上がりに推移してきた。これが、半導体業界が歩んできた「正常な歴史」である。


図1 種類別半導体の3カ月移動平均出荷額(〜2026年4月)[クリックで拡大] 出所:WSTSのデータを基に筆者作成

 ところが、2024年あたりからLogicが、そして直近ではMos Memoryが、それまでの常識を完全に無視した、文字通り垂直に近い角度で跳ね上がっている。とりわけメモリの伸びは異様で、グラフの上端を突き破る勢いだ。これまで30年間で積み上げてきた成長の歴史が、まるで助走であったかのように見えてしまうほどの、急激な立ち上がりである。

 長年、半導体市場を定点観測してきた筆者の経験から言っても、これほど急峻な角度でメモリ市場が立ち上がった例は、過去に一度もない。これは、半導体産業の構造そのものを揺るがす、歴史的な異常事態だと言ってよい

約10年で約10倍、前年成長率は驚異の285%

 この爆発ぶりを2016年以降に絞って示したのが図2である。Mos Memoryの月次出荷額は、2016年には56億米ドル前後だった(なお、特に記載がない限り、本稿の「ドル」は「米ドル」を表すものとする)。その後、2017〜2018年の「メモリバブル」で一度盛り上がったものの、2023年初頭の不況期にはわずか58億ドルまで落ち込んでいた。半導体不況のどん底である。

図2 種類別の半導体の3カ月移動平均出荷額(2016年〜2026年4月)[クリックで拡大] 出所:WSTSのデータを基に筆者作成
図2 種類別の半導体の3カ月移動平均出荷額(2016年〜2026年4月)[クリックで拡大] 出所:WSTSのデータを基に筆者作成

 ところが、そこからの回復、いや暴騰ぶりはすさまじい。直近の2026年5月ではメモリの月次出荷額は633億ドルにまで急騰している。2016年の水準からすれば、約10年間で11倍以上に膨れ上がった計算だ。底だった2023年初頭と比べれば、わずか数年で約10.7倍である。

 同じく図2では、NVIDIAのGPUを含むLogicも、133億ドルから316億ドルへと拡大しており、こちらにも「NVIDIAのGPU効果」「AI効果」がはっきりと表れている。とはいえ、メモリの爆発的な伸びの前では、Logicの成長すら穏やかに見えてしまうほどだ。

 成長率で見れば、その異常さはさらに際立つ。図3は同じデータの前年成長率を示したものだが、Mos Memoryの直近の前年成長率は285%という、過去に類を見ない数字をたたき出している。


図3 種類別半導体の3カ月移動平均出荷額の前年成長率(〜2026年4月)[クリックで拡大] 出所:WSTSのデータを基に筆者作成

 参考までに、過去の「メモリバブル」のピーク(2017年頃)でも前年成長率は60%台だった。それと比べても、いかに今回の伸びが桁違いであるかが分かる。同じ図3で他の3カテゴリーを見ると、Logicですら40%台、Mos MicroやAnalogに至っては14〜19%程度にとどまっている。つまり、メモリだけが文字通り「異次元」の伸びを示しているのである。

DRAMとNANDが爆発的に拡大

 メモリ市場の中身を見ると、爆発の主役はDRAMとNAND型フラッシュメモリ(以下、NAND)という、メモリの2大製品である。図4は、TrendForceのデータを基に、DRAMとNANDの世界市場を四半期ごとに示したものだ。

図4 DRAMとNANDの世界市場(2026年第2四半期はTrendForceの予測による)[クリックで拡大] 出所:TrendForceの「データトラック」のデータを基に筆者作成
図4 DRAMとNANDの世界市場(2026年第2四半期はTrendForceの予測による)[クリックで拡大] 出所:TrendForceの「データトラック」のデータを基に筆者作成

 2023年初頭、半導体不況の最中には、DRAMが97億ドル、NANDが87億ドルと、両者ともに底を打っていた。メモリメーカー各社が軒並み赤字に転落し、減産に追い込まれていた、あの暗黒の時期である。

 ところが、2026年第2四半期には、DRAMが1450億ドル、NANDが810億ドルにまで跳ね上がる予測となっている。底だった2023年初頭と比べれば、DRAMは約15倍、NANDは約9倍である。両者を合計すれば四半期で2260億ドル、年換算で9000億ドル超という、にわかには信じ難い規模に達する。

 かつて「メモリは安くて当たり前」「コモディティ(汎用品)」と見なされていた製品が、今や半導体業界の主役の座を、LogicやMPUなどのMos Microから奪い取ろうとしているのだ。

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