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モーターを高効率、高精度へ導く“革新的アイソレーション&エンコーダ”超高分解能エンコーダ、SiC/GaN対応ゲート駆動フォトカプラ

モーター駆動/制御関連技術が一堂に集まる展示会「TECHNO-FRONTIER」が5月に開催された。その中で、アイソレーション/エンコーダの大手ベンダーであるアバゴ・テクノロジー(Avago Technologies)は未発売の製品も含め、革新的な機能/性能を実現したアイソレーション/エンコーダを披露した。

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 モーターの高効率化が急務だ。

 世界規模で省エネルギー化が叫ばれる中で、全世界の消費電力量の4割をモーターが占めるとされる。モーターの消費電力を抑えない限り、省エネルギー化は実現できないといっても過言ではない。

 その一方で、機器の高性能化に伴い、よりモーターを高精度に制御したいというニーズも増すばかりだ。高効率と高精度が求められるモーターではさまざまな技術革新が必要だ。産業分野に代表されるインバータやサーボモーターでは安全性を確保しながら、高効率、高性能に挑まなければならない。

 その中で、モーター制御におけるキーデバイスであるゲートドライバ/アイソレーションアンプ、エンコーダの大手メーカーであるアバゴ・テクノロジー(Avago Technologies/以下、アバゴ)は、2015年5月に開催された展示会「TECHNO-FRONTIER 2015」で、モーターの効率、精度を高める革新的技術を盛り込んだ製品を一堂に展示した。


「TECHNO-FRONTIER 2015」でのアバゴ・テクノロジーブース

 SiC/GaNといった次世代パワー半導体の能力を最大限引き出す高速ゲート駆動フォトカプラに、シャント抵抗で最大400Aの大電流まで検出可能なアイソレーションアンプ、ほぼ無限の分解能を実現するエンコーダなど……。

 未発売の製品を含むアバゴの革新的なモーター制御デバイスを紹介していこう。

ゲート駆動フォトカプラを“スマート化”

 マイコンなどからの制御信号を受け、電気的絶縁を取りながら、IGBTなどのパワー素子を駆動するゲート駆動フォトカプラ。アバゴは、このゲート駆動フォトカプラの“スマート化”を進めている。

 従来のフォトカプラは、マイコンの制御信号でフォトカプラを駆動するため一度、外付けのLEDドライバを介す必要があった。ゲート駆動に不可欠な短絡検出、FAULTフィードバックといった保護回路をディスクリート素子で組む必要があった。

 これに対し、“スマートゲート駆動フォトカプラ”は、LEDドライバや保護回路などを内蔵したもの。さらに大容量のパワー素子を駆動する場合に追加する必要のあった外部バッファもフォトカプラに取り込んだ“オールインワン・スマートゲート駆動フォトカプラ”(ACPL-337J/336Jなど)も実現している。


スマートゲート駆動フォトカプラの説明パネル (クリックで拡大)

3レベル、SiC/GaNといった次世代パワー素子に

 アバゴはこの“スマートゲート駆動フォトカプラ”のラインアップを拡充し、特に次世代型パワー素子への対応を進めている。

 例えば、MOSFETバッファ外付けタイプのスマートゲート駆動フォトカプラ「ACPL-339J」は、富士電機の3レベルインバータ回路用IGBTモジュールの評価用ゲート駆動用ボードに採用されている。3レベルインバータは高効率化とともに、フィルタなどを大幅に小型化できる制御技術。そうした3レベルインバータの小型化メリットにふさわしいコンパクトなゲート駆動回路を実現できるソリューションとしてACPL-339Jが採用された格好だ。


スマートゲート駆動フォトカプラ「ACPL-339J」を搭載した富士電機の3レベルインバータ回路用IGBTモジュールの評価用ゲート駆動用ボード。基板中央に4つ並ぶ白いパッケージのデバイスが「ACPL-339J」だ (クリックで拡大)

 高効率なモーター駆動を実現する次世代パワー半導体であるSiC/GaNへの対応も進めている。SiC/GaNといった次世代パワー素子は、スイッチング周波数が速く、ゲート駆動フォトカプラにも高速性が要求される。短絡保護した、MOSFETバッファ対応のスマートゲート駆動フォトカプラ「ACPL-339J」は、最大300nsの高速伝達遅延時間、10ns未満の高速立ち上がり/立ち下がり時間を実現し、SiC/GaNに対応する。

 なお、ベーシックなゲート駆動フォトカプラとして既に伝達遅延時間最大120ns、立ち上がり/立ち下がり時間8ns(typ)という性能を実現した「ACPL-W346」を製品化し、Creeの1200V定格SiC-MOSFET/SiC-SBDの評価ボード(型番:CRD8EF1217P-1)に採用されている。

 このように、アバゴのゲート駆動フォトカプラは、パワー素子のプロからも支持されている。

 アバゴでは、ACPL-W346のような高速ゲート駆動フォトカプラを今後スマート化していく方針。さらに、ACPL-339Jをベースに、MOSFETバッファ内蔵型のSiC/GaN対応オールインワン・スマートゲート駆動フォトカプラを2015年中にも製品化する方針だ。

不可能を可能にするアイソレーションアンプ

 モーター制御に欠かせない電流/電圧検出用アイソレーションアンプでもさまざまな革新的な製品開発を進めている。2015年末の製品化を目指して開発中の電流検出用アイソレーションアンプ(シグマ-デルタ型モジュレータ)「ACPL-C799」もその1つだ。


「ACPL-C799」の説明パネル (クリックで拡大)

 ACPL-C799は、シャント抵抗を電流センサとして使用しながら、400〜500Aという大電流の検出に対応する。

 これまで、シャント抵抗+アイソレーションアンプでは、最大50A程度の電流検出に限られ、スピンドルモータの相電流検出など大電流対応が求められる用途では、シャント抵抗での損失増大などの要因から使用が難しく、ホール素子による電流センサが使われてきた。

 ACPL-C799は、従来、±200mV必要だったリニア入力電圧範囲を、±50mVにすることで、より小さな抵抗値のシャント抵抗が使用できるように、大電流対応を可能にした。入力電圧範囲が狭まると、検出信号がノイズに埋もれ、的確な電圧値を出力できなくなるが、内部のシグマ-デルタ型A-Dコンバータの信号-ノイズ比を高めることで、高精度の出力を実現した。

 同社では「シャント抵抗+アイソレーションアンプは、ホール電流センサに比べ、温度変化に強く、システムコストを低減できる。国内外の抵抗器メーカーと連携し、ACPL-C799に適したシャント抵抗とともに提案していく」という。

 アバゴでは、ホール電流センサからの置き換えをサポートするため、市場で代表的なホールセンサと同じフットプリントと機能を実現した「シャント抵抗+アイソレーションアンプ評価モジュール」を提供している。このモジュールには、ACPL-C79Aシリーズが搭載されている。


代表的なホール素子と同じフットプリントと機能を実現したシャント抵抗+アイソレーションアンプ評価モジュール (クリックで拡大)

LVDSで25MHzサンプリング!

 光学絶縁型シグマ-デルタ・モジュレータとしては、サンプリングクロック対応を、25MHzまで高めた「ACPL-798J」がある。これまで、サンプリングクロックを高めた場合、放射ノイズを増大させることから、16MHz程度まで抑えなければならなかった。その中で、ACPL-798Jは、信号インタフェースに電磁界を外部に放射しがたいLVDSを採用し、25MHzまでの外部クロック入力に対応させた。「サブミクロン単位で、サーボモーターを制御したいというニーズが高まっており、高速サンプリング対応のACPL-798Jは最適解だろう」とする。

置き換えるだけで分解能が5倍に

 モーター制御の精度を左右するキーデバイスであるエンコーダ。アバゴは、数十年以上前からエンコーダを提供し、約30年前に発売した「HEDS-9100シリーズ」は3チャンネル透過型エンコーダの定番製品となり、今でも広く利用されている。

 そしてこのほど、アバゴは、このHEDS-9100シリーズと全く外見が同じ「AEDT-9810シリーズ」を発売した。

 新製品であるAEDT-9810シリーズは、HEDS-9100シリーズに高性能逓倍回路を追加して、これまでより5倍の高分解能(5000Line Per Inch)を実現したエンコーダだ。コードホイール(スリット板)や周辺部品、基板の変更なく、エンコーダの分解能を5倍に高めることができてしまうのだ。

 アバゴでは、AEDR-8500シリーズなどの3チャンネル反射型エンコーダで高性能逓倍回路を搭載した製品をラインアップしてきた。この実績ある技術を、透過型エンコーダに応用したわけだ。そして、これまでHEDS-9100シリーズをベースに提供してきたパッケージ製品でも同型のAEDT-9810シリーズ搭載版製品を用意し、高分解能エンコーダへの置き換えを提案している。


逓倍回路を内蔵した3チャンネル小型反射式エンコーダの概要

技術力でさまざまな制約を緩和

 このようにエンコーダは、信号を逓倍することで簡単に分解能を高めることができるが、逓倍前のアナログ信号にノイズがなく、高い精度であることが必須条件としてある。アバゴでは、独自の受光素子、回路技術により、高精度、低ノイズの信号処理を実現し、高次の逓倍回路が適用できるエンコーダを実現している。また高品質信号処理により、LED/受光素子とスリット板の位置関係が多少ズレていても安定した出力が行えるのだ。そのためエンコーダに振動が加わるような環境でも使用でき、他のエンコーダに見られる精密な位置合わせの必要もない。


AEDT-9810シリーズ(写真右)と同等分解能をうたう競合製品の比較デモ。エンコーダを同条件で動かしても、AEDT-9810シリーズは安定した波形で継続的に出力するが、競合製品の出力は歪んでしまう

 アバゴでは、高品質のアナログ信号を出力できるエンコーダの利点を生かし、高次の逓倍器を外付けし、超高分解能を実現できるアナログ出力エンコーダ「AEDR-8723」をラインアップ。モータードライバメーカーのテクノハンズは、AEDR-8723と200倍の逓倍回路を組み合わせたリニアモーター向けエンコーダ「TA-200」を製品化。同エンコーダは従来にない小型サイズで0.4μmという分解能を誇る。「ユーザーからは、2000倍の逓倍器との連動も実証済みという話も聞いており、高次の逓倍器を付けることでほぼ無限ともいえるような分解能も実現できる可能性のあるデバイス」(アバゴ)としている。

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提供:アバゴ・テクノロジー株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2015年7月24日

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