共創で付加価値を探る、アドバンテックの成長支える“IoTの3本柱”とは:日本支社の責任者が語る
産業用IoTプラットフォーム「WISE-PaaS」を中核として、エコシステムを着実に広げているAdvantech(アドバンテック)。IoTについては、扱う製品やターゲット市場によって、「エンベデッドIoT事業部」「インダストリアルIoT事業部」「サービスIoT事業部」に分かれている。各事業部の日本の責任者に、日本市場における戦略や注力製品を聞いた。
“共創”で付加価値を生み出す「エンベデッドIoT事業」
――エンベデッドIoT事業部は、どのような製品を展開していますか。
Steve Chang氏 組み込みコンピューティング市場のリーダー的存在として、組み込み用ボードコンピュータ、インテリジェントシステム、産業用周辺機器、デザイン・イン・サービスを幅広く提供している。
――エンベデッドIoTグループの基本的な戦略をお聞かせください。
Chang氏 従来の組み込み製品に加え、先端テクノロジーを活用した、AI(人工知能)やIoT向けの製品を拡充し、サービスおよびサポート体制を強化して、幅広いパートナーとともに“共創”によってビジネスを行うというのが基本戦略だ。具体的には、以下の4本の柱がある。
- エッジAI推論システム、デバイス管理「WISE-PaaS/DeviceOn」および、クラウド機能をカバーする統合IoTソリューションの最先端テクノロジーの継続的に提供する
- 組み込みデザイン・イン・サービスからIoT統合ソリューションまでをワンストップモデルで提供する
- “Co-creation(共創)”ビジネスモデルによって、パートナー各社が、AIとIoTを組み合わせたアプリケーションとビジネスに移行できるようにする
- 顧客中心のサポートとサービスを提供するために、日本の組み込みサービスチームの能力を強化する
――2020年の注力製品は何でしょうか。
Chang氏 特に、IntelのVPU(Vision Processing Unit)を搭載した組み込み用モジュールや、同モジュールを内蔵したボックス型コンピュータを主力としたエッジAI推論システム製品の販売に注力する。併せて、事前学習済みのモデルから推論エンジンを生成し、エッジへの実装を容易に行えるソフトウェアツール「エッジAIスイート」も用意し、ハードウェアとソフトウェアの両面で、顧客が迅速なアプリケーションを開発できるようサポートしたい。
機械学習の分野でノウハウを持つ企業や、異なる業種で知見を持つエンドユーザーとも提携し、より優れた付加価値を“共創”して、提供していく。
IoTビジネスでは、「WISE-PaaS/DeviceOn」の拡販に力を入れる。DeviceOnはIoTデバイスのリモート監視を行うためのツールで、例えば、当社のボックスシステムや組み込みボードタイプのコンピュータを組み込んだ顧客の機器や装置を集中管理し、異常アラート通知や電源のスケジュール制御、ブルースクリーンからの復旧などをリモートで行える。セキュリティ対策やアプリケーションのOTA(Over the Air)アップデートなどの機能も備えている。DeviceOnは、アドバンテックのコンピュータ製品であれば無償利用も可能なので、ぜひ使ってみていただきたい。
AIとIoTによるDXを加速させる「インダストリアルIoT事業」
――インダストリアルIoT事業部と、主な製品について教えてください。
古澤隆秋氏 インダストリアルIoT事業部は、PLCやNCマシンのデータを収集するエッジコンピューティング、重要な産業向けIoTインフラストラクチャを構築するSCADAおよび、WISE-PaaSサービスを提供している。工場、製造設備、産業基盤の3つの市場に焦点を当て、新たなビジネスモデルや可能性を生み出している。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現に向け、エッジセンシングデバイス、ネットワーク機器、ストレージやサーバからクラウドプラットフォームに至るワンストップの製品ラインアップを提供している。それとともに、ビッグデータ収集、通信の安全性、業界に特化した産業用コンピュータプラットフォームなどの技術を開発してきた。現在も、多数のスマートファクトリーやスマートシティーの実現に向けたプロジェクトおよびソリューションを、日本ラッドなどの共創パートナーとともに提供している。
センシングデバイスや通信デバイスの分野では、アドバンテックは、Wi-Fi、サブギガヘルツ帯(920MHz帯)無線、LoRaWANを介してデータを収集するWISEシリーズを提供している。特に、キロメートルクラスの長距離無線通信が可能なLoRaWANについては、アナログ信号、温度センサー入力、DI/DOを持つ「WISE-4610」、振動センサーを内蔵した「WISE-2410」があり、より広範囲で容易にセンサーデータを収集できる。
エッジコンピューティングおよびHMI(Human Machine Interface)製品では、幅広いアプリケーションに適合する耐久性と長寿命を備えたファンレスPCをそろえている。例えば「UNOシリーズ」には名刺サイズ並みの小型PCもあり、アプリケーション拡張も可能だ。
産業用IoTの進化に重要な役割を果たすAI技術は、さまざまなタスクや個別の設計が必要なアプリケーションに特化する形で実装される。アドバンテックは、エッジセンシングからエッジAIシステム、推論サーバ、学習サーバ、ストレージまで、完全なラインアップをそろえたAIプラットフォームを提供する。
産業用IoTに向けた「SKYシリーズ サーバ&ストレージ ソリューション」には、GPUサーバ、IoTサーバ、キャリアグレードサーバ、マルチノードサーバおよび、一般的なフォームファクタのサーバ(シャシーおよびマザーボード)が含まれる。コンポーネントからシステムまで、柔軟な構成と長期供給を提供する。さらに、SKYシリーズによるプライベートクラウド「WISE-STACK」も用意している。
WISE-PaaSは、産業向けに特化したクラウドプラットフォームだ。2019年8月に提携を発表したIIJ(インターネットイニシアティブ)との協業により、高セキュア(閉域)なサービスをすぐに開始できる。さらに、「EdgeLink」を搭載したハードウェアによりソフトウェアなどの開発が不要だ。すぐにクラウドに移行できない顧客に対しては、オンプレでも、各種ダッシュボードにより顧客の課題を可視化できるソフトウェア「WebAccess」を用意している。
社会のニーズに沿ってプラットフォームを拡充する「サービスIoT事業」
――サービスIoT事業部では、主にどのような製品を提供していますか。
マイク小池氏 サービスIoT事業部は、大きく3つの分野に向けてプラットフォームを展開している。医療向けの「iヘルスケア」、リテール・スマートシティー向けの「iシティーサービス」、物流・フィールドサービス向けの「iロジステックス」だ。
iヘルスケアでは、医療用パネルPC、病棟向けのナースコールシステムプラットフォーム、手術室用画像録画ソリューションや医療用高精細ディスプレイの他、遠隔医療向けプラットフォーム、ビーコンを使用した病院内リアルタイム位置情報検索システムで構成される。
iシティーサービスでは、飲食店向けの顧客受付端末用キオスク、テーブルトップセルフオーダー用のタブレットや小売店用モバイルPOS用のタブレットや従来型のレガシーPOS端末がある。また、在庫管理向けタブレット、バーコードリーダーのソリューションプラットフォーム、ドライブスルー向けのキオスク端末や屋外イベント向けバッテリー駆動型キオスクの他、空港やホテルに設置されるインタラクティブ・デジタルサイネージ・ソリューションプラットフォームなどのラインアップがある。
iロジステックスでは、フレート管理用車載PC、安全運転支援カメラソリューションや超低温倉庫向けの堅牢型PC、低温物流向けのリアルタイム温度管理センサーソリューション、また、UWB(Ultra Wide Band)を使用した倉庫内リアルタイム位置情報システム、複数の環境センサーを使用したIoTソリューションなどをそろえている。
これらのソリューションを、“インテリジェントサービス”というキーワードの元に、バリエーションを拡充している。
――具体的な例を教えてください。
小池氏 一例が、食品業界向けのコールドチェーン(生産から消費まで低温に保つ物流方式)管理ソリューションだ。
平成30年6月13日に公布された食品衛生法等の一部を改正する法律により、原則として全ての食品等事業者はHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理制度への対応が必要となった。これにより、食品流通業界では、フードサプライヤーから運送、倉庫、店舗までのサプライチェーンマネジメントが不可欠になる。
アドバンテックのコールドチェーン管理ソリューションは、温度および湿度センサー、ゲートウェイ、センサーのコンフィギュレーションを行うためのAndroidアプリで構成され、コールドチェーンに沿って収集されたデータを表示し、温度異常の発生地点をマップ上に表示するバックエンドダッシュボードを提供する。温度・湿度センサーからのデータは、ゲートウェイを経由し、クラウドにアップロードされる。ユーザー管理者は、同プラットフォームを使用して、さまざまな店舗のコールドチェーンロジスティクスを、リアルタイムで同時に監視できる。
アドバンテックのサービスIoT事業は、このように、社会のニーズに応える製品やソリューションを生み出していく。
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提供:アドバンテック株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2020年4月30日