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自動運転/SDV実現への着実な歩みを支えるNXPのソリューション自動運転レベル3以上/ゾーンアーキテクチャの開発は既に可能!

完全自動運転、自動車の機能をソフトウェアで定義するSoftware Defined Vehicle(SDV)。これらの実現は、まだまだ遠い先の未来かもしれない。しかし、自動運転、SDVの実現に向けた半導体デバイス、開発環境は既にそろいつつある。車載半導体大手であるNXP Semiconductorsが展開する、自動運転/Software Defined Vehicle実現に向けたソリューションを紹介していこう。

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 完全自動運転は、100年に1度の大変革期にあるとされる自動車業界が向かう先にあるゴールの1つだ。ただ、完全自動運転には技術面、制度面などさまざまな課題が山積し、その実現は想像よりも遠い先の未来、はたまた、実現不可能という声さえもある。しかし自動車は現在、完全自動運転に向けて着実に歩みを進めており、日々、完全自動運転の実現に近づいているということは断言できる。

 人が介在しない完全な自動運転を最高峰としてレベル0からレベル5までの6段階で定義される自動運転レベルでいえば、レーダーやカメラで自動車の周囲を監視して人の運転を支援するレベル1や、周囲の状況を鑑みアクセル/ブレーキ操作など部分的な運転操作を自動化するレベル2に相当する機能を持った自動車は既に珍しい存在ではなくなっている。

 ある市場予測では、2030年には、新車の約85%がレベル1以上の運転支援機能を備え、さらにそのうちの半分以上が、レベル2+と定義される高速道路走行時など条件付きの自動運転モードを備えると予想されている。同時に2030年には、人ではなくシステムが主体になって運転するレベル3以上の自動運転車が実用化され、市街を走るとも予想されている。


自動運転レベルごとのセンサー搭載イメージおよび、2030年時点の自動運転レベル別新車販売台数比率[クリックで拡大] 出所:NXPジャパン

 こうした自動運転化への歩みが着実に進んでいくといえる背景には、世界各国の法制度化も挙げられる。各国の行政や団体が定める新車アセスメントプログラム(NCAP)において、自動緊急ブレーキの搭載義務化が始まっており、今後もより高度な安全機能の搭載義務化が見込まれている。

 法制度の後押しも受けて着実に進む自動運転化の流れの中にあって、特に自動車への搭載数が増えているのが、レーダーシステムだ。夜間や悪天候時などでも確実に周囲の物体や人を検知できるという特長を備え、カメラを上回る数の搭載点数が見込まれており、自動運転システムの土台を成す最も基本的なセンサーになりつつある。加えて、レベル3〜レベル5の自動運転システムに要求される高度な性能を既に満たしつつある先進性という点もレーダーシステムの特長で、自動運転実現の可能性を高める存在にもなっている。

レベル3以上にも対応可能なレーダーソリューションの登場

 レーダーへの性能要求は、まずは物体として車両検出レベルから始まり、人や自転車などの検出性能が求められてきた。今後はより小さな物体を検出する性能が求められるようになる。検知エリアも当初は、自動車前方や運転手の死角を補うように自動車後方のコーナー程度だったが、自動車の周囲360度すべてを検知する“サラウンドセンシング”が要求されるだけでなく、検知距離も数百メートル先から手前数メートルまでを広くカバーする必要が出てきている。さらには、物体との距離、物体の相対速度、物体の方位(角度)という3つの情報に加えて、物体の高さという4つ目の情報を検知し、まるでカメラのように立体的に物体を捉える“4D イメージングレーダー”もレベル2+以上の自動運転システムには必須になるとされる。


自動車領域で求められるレーダーシステムイメージ[クリックで拡大] 出所:NXPジャパン

 このように高度な性能が求められるレーダーシステムだが、先述の通り、既にその性能要求は満たされつつある。2022年1月、車載半導体大手のNXP Semiconductors(以下、NXP)がレベル2+からレベル5の自動運転システムに対応する車載レーダーソリューションの量産開始を発表した。

 NXPは、シリコンゲルマニウム(SiGe)によるレーダーを皮切りに、より高解像、高精度を実現する77GHzレーダー、さらには77GHzレーダーのRF CMOS化をいち早く実現し、車載向けレーダー市場をリードしてきた。そして2022年、実績ある77GHz RF CMOSレーダートランシーバー「TEF82xxファミリ」と、レーダー信号処理プロセッサ「S32R45」で構成する4D イメージングレーダー・ソリューションの量産を開始する。


4D イメージングレーダー・ソリューションの概要[クリックで拡大] 出所:NXPジャパン

 レーダー信号処理プロセッサのS32R45は、クアッドコアの「Arm Cortex-A53」とトリプルコアの「Arm Cortex-M7」を搭載したプロセッサ。最大で4個カスケード接続したレーダートランシーバーを直接駆動でき、4Dイメージングレーダーシステムを構築できる。また300mまでの長距離、150mまでの中距離、50mまでの広角といった3つの検出範囲を1つのレーダーシステムでカバーする「3-in-1センシング」(マルチモードスキャン)が行える他、角度分解能1度未満という高い解像度も実現している。

 このソリューションの登場で、自動運転レベル1〜2でも要求されるコーナーレーダーやロングレンジレーダーから、レベル5まで対応可能な4Dイメージングレーダーまであらゆる車載レーダーを、レーダー信号処理プロセッサ「S32Rファミリ」と77GHz RF CMOSレーダートランシーバー「TEF82xxファミリ」の組み合わせで実現できるラインアップが整ったことになる。

トランシーバ+プロセッサの1チップ化

 こうしたスケーラブルな車載レーダーソリューションを構築したNXPだが、今後も車載レーダー関連ソリューションの開発を積極的に進めていくという。その1つが、レーダートランシーバーとレーダー信号処理プロセッサの1チップ化だ。

 NXPジャパン マーケティング統括本部でRFプロセッシング部担当部長を務める本間孝史氏は「自動運転レベルが上がるに連れ、レーダーの搭載点数は増える。レベル1では1〜3個の搭載だが、レベル2+では5個以上、レベル3〜5では6個から最大10個に増える見込み。搭載点数が増えれば、サイズや消費電力といった課題がより顕著になる。そこで、現在2チップ構成のレーダーソリューションを1チップ化する」と言う。

 NXPでは現状、40nmプロセスを用いて77GHz RF CMOSレーダートランシーバーを製造しているが、これをより微細な28nmプロセスに移行させつつ、コーナーレーダーやロングレンジに向けた1チップソリューションを2025年に投入する計画で開発を進めている。


NXPの車載レーダー向けソリューション一覧。ロングレンジ/コーナーレーダー向けに1チップ製品を開発中だ[クリックで拡大] 出所:NXPジャパン

 他にも、レーダー信号処理プロセッサのアクセラレーターをより進化させるなどし、各デバイスの消費電力の低減、小型化を推進していく予定だ。さらには「現在、急速に進みつつある車両アーキテクチャの変革に対応した車載レーダーソリューションを開発、提供していく」(本間氏)とする。

車両アーキテクチャの変革に対応するスケーラビリティ

 車両アーキテクチャの変革とは、レーダーなどセンサーの搭載点数増を伴う自動運転化や電動化により、自動車1台当たりの搭載ECU増に伴うさまざまな弊害を解決し、より効率的に自動運転化、電動化を実現すべく、自動車の基本的な構造(アーキテクチャ)を刷新する動きだ。

現状の車両アーキテクチャは、それぞれのECUが独立してさまざまな制御/駆動処理を行う「分散型アーキテクチャ」を採用する。この分散型アーキテクチャでは、さまざまなECUが連携、協調するような自動運転システムを構築するには、構造が複雑すぎて非効率だ。連携、協調するECU間を個別に接続する必要があり膨大なワイヤーハーネスが必要になる。ソフトウェア開発においても各ECU間でのすり合わせが必要で現実的ではない。

 そこで新たな車両アーキテクチャとして考えられているのが「ドメインアーキテクチャ」だ。レーダーなどADAS/自動運転系、ボディー制御系、パワートレイン制御系というような「ドメイン」と呼ぶアプリケーション/機能領域ごとに、ドメインコントローラーを配置し、そのドメインコントローラー下に各ECUを集約する構造だ。この構造であれば、よりシンプルになり、ドメイン内の連携はもとより、ドメインをまたがる連携協調も、ドメインコントローラー間でのやり取りになり単純化される。ソフトウェアについてもある程度の処理がドメインコントローラーに集約されるため、比較的開発が容易で、ソフトウェアをアップデートすることも可能になる。


車両アーキテクチャの変革イメージ[クリックで拡大] 出所:NXPジャパン

 さらにドメインアーキテクチャよりも集約を進めたよりシンプルなアーキテクチャとされる「ゾーンアーキテクチャ」への移行も検討されている。このアーキテクチャは、「セントラルブレイン」とも呼ばれる中央のコンピュータに制御処理を集約するもの。各ECUは、物理的な場所(ゾーン)ごとに配置するゾーナルゲートウェイで束ねられる。ECU間の接続はとてもシンプルになり、制御ソフトウェアもセントラルブレイン1カ所に集中するため、開発、更新が容易だ。そのため、ゾーンアーキテクチャでは、PCやスマートフォンのように自動車の機能や特長をソフトウェアで定義、変更する「Software Defined Vehicle」(SDV)が実現可能になるとみられている。


NXPジャパン マーケティング統括本部 RFプロセッシング部 担当部長 本間孝史氏

 本間氏は「一般に車両アーキテクチャは、分散型からドメイン型を経てゾーン型に移行するとされている。ただ、自動車メーカーによっては、分散型から直接、ゾーン型への移行を目指したり、ドメイン型とゾーン型を使い分けることを模索したりし、決して画一的ではない。またドメインコントローラーやセントラルブレインと、エッジのECUでどのように処理を切り分けるかも自動車メーカーによって異なることになるだろう。NXPとしては、既存の分散型からゾーン型までさまざまな車両アーキテクチャにスケーラブルに対応できるソリューションを用意していく」とする。

 NXPでは、S32Rファミリ+TEF82xxファミリというように、レーダーECUでレーダー関連の処理を全て完結できる分散型アーキテクチャ向けレーダーソリューションに加え、ドメインコントローラーやセントラルブレインでレーダー関連処理の後処理を行うことを前提に、高速フーリエ変換(FFT)などの前処理だけに特化した製品の開発を進めている。「ドメイン/ゾーンアーキテクチャ向けのソリューションでも、トランシーバとプロセッサを1チップ化する予定。また、後処理やセンサーフュージョン処理を行うドメインコントローラーやセントラルドメインとの接続を見据え、広帯域幅のインタフェースも備えていくようにする」(本間氏)という。

各車両アーキテクチャでのレーダーシステムイメージ[クリックで拡大] 出所:NXPジャパン

 既にドメイン型やゾーン型といった将来の車両アーキテクチャを見据えたレーダーソリューションの開発、提供を行うNXPでは、エッジノードECU向けのソリューションだけでなく、ドメインコントローラーやセントラルブレイン開発向けのソリューションも用意。ドメイン/ゾーンアーキテクチャでのレーダーシステム、さらには自動運転システムの開発に本格的に着手できる環境がそろっている。

SDV向けセントラルブレイン用開発、評価PF「BlueBox 3.0」

 そうした将来の車両アーキテクチャによるシステム開発環境の中核を担うのがソフトウェア開発、評価プラットフォーム(PF)「BlueBox」だ。現在、提供している最新BlueBox(BlueBox 3.0)は、ゾーンアーキテクチャすなわち、Software Defined Vehicle時代のセントラルブレインシリコンを模したコンピュータボックスとして位置付け、開発された。Arm CortexーA72コアを16個搭載した高性能プロセッサ「LX2160A」をはじめ、ゲートウェイ/セーフティ・セキュリティプロセッサ「S32G274」、マルチギガビット・インタフェースを内蔵した車載イーサネットスイッチ「SJA1110」を搭載。さらにセントラルブレインで重要な役割を果たすであろうAI/機械学習処理を担う各種AIアクセラレーターを搭載できる拡張用インタフェース(PCIe)なども備える。


「BlueBox 3.0」の概要[クリックで拡大] 出所:NXPジャパン

 NXPジャパン マーケティング統括本部でマイクロコントローラ部 担当部長を務める早坂学氏は「AIアクセラレーターは、さまざまなものが開発され、進化も著しい。自動車メーカーもそれぞれがさまざまなAIアクセラレーターを試している状況であり、特定のAIアクセラレーターに絞ることは難しい。そこで、BlueBoxはあえてユーザーが自由に選択できるように特定のアクセラレーターを搭載せず、拡張インタフェースでの対応に留め、フレキシビリティを持たせた」とする。


NXPジャパン マーケティング統括本部 マイクロコントローラ部 担当部長 早坂学氏

 その一方で「AIアプリケーションの実装などは、NXPとしてサポートする」とし、TensorFlow、CaffeなどのソフトウェアフレームワークベースのAIアプリケーションを車載グレードで簡単にBlueBoxに実装するためのツールキット「eIQ Auto」を提供している。

 「BlueBoxは文字通りボックスだが、将来的にこのボックスの機能をシリコン上に集約する。これを使って今日からAD/ADASも含めて本格的にSDVに向けた車両アーキテクチャ開発に着手できる」(早坂氏)とする。実際、NXPはティアフォーと共同で、オープンソースの自動運転ソフトウェアスタックである「Autoware」をBlueBox 3.0上に実装し、自動運転車のPoC(概念検証)環境を構築し、展示会イベントなどでデモを披露している。

自動運転/SDV実現へ開発環境は整った

 また、AutowareとBlueBoxを活用したSDV開発の一例として、リアルタイムネットワークミドルウェア「DDS」(Data Distribution Service)を使ったセーフストップデモを公開している。

 DDSを使ったセーフストップデモは、セントラルブレインであるBlueBoxと、ノードECUを束ねるゾーナルゲートウェイ間を接続するDDS対応イーサネットに、何らかの不具合が発生した場合にもDDSのQoS(Quality of Service)機能を使って安全に自動車を止める様子を紹介するもの。通常時は、BlueBox内のプロセッサ(LX2160)上で動作するAutowareがブレーキやアクセル、ステアリング制御処理を行い、その処理結果をイーサネットおよび、ゲートウェイを介して、ブレーキやアクセル、ステアリングの各ノードECUに伝え制御を行う。ただ、自動運転のプロセスが動作不全になったり、イーサネットで断線などの不具合が生じたりした場合、セントラルブレイン(BlueBox)からの制御情報が各ノードに伝わらなくなり自動車が暴走するため、セントラルブレインに頼らず安全に自動車を停止(セーフストップ)させる必要がある。


DDSを使ったセーフストップデモの構成図[クリックで拡大] 出所:NXPジャパン

 そこでゲートウェイとして動作しているプロセッサ「S32G」のロックステップコア上で、常にセントラルブレインからの通信状況やAutowareの自動運転プロセスを監視するDDSノードを走らせる。この機能を使いS32Gが、セントラルブレインからの通信での異常を検知し、セントラルブレインに代わって各ノードECUを制御し、セーフストップさせることができる。

 早坂氏は「SDV実現に向けて、クルマ以外のモノとの親和性やコスト観点でオープンなソフトウェア・規格・アーキテクチャが積極的に活用される機会が増えてくる。今後さらにオープンな環境とBlueBoxをはじめとしたNXPが提供するプラットフォームを使って、車載センサーやECUの柔軟な追加を可能にし、それらを活用したモビリティーサービスの実装や課題解決方法を紹介したい。」と語る。

 Software Defined Vehicle、完全自動運転――。まだまだ遠い先のゴールのように見えるが、その実現に向けて着実に環境は整い始めている。

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提供:NXPジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2022年3月14日

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