自動車業界のみならず、建設、不動産、医療といったあらゆる業界や政府、自治体まで巻き込んで、拡大の一途をたどるモビリティサービス市場。モビリティサービスの実現には、自動運転技術、セキュリティ/セーフティ技術、コネクティビティ技術が欠かせない。これらを網羅し、あらゆるサービスプロバイダーからのニーズに応える柔軟なトータルソリューションを提供しているのが、NXP Semiconductorsだ。
既存モビリティへの付加価値創出の他、過疎地での移動手段、物流、不動産、医療といった、さまざまな分野に新しいサービスや価値をもたらすと期待されているモビリティサービス(MaaS:Mobility as a Service)。三菱総研が2019年3月に発表した予測では、その市場規模は、2050年には900兆円に上るとされている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のようなパンデミックや、その他の世界的な社会情勢によって、市場の成長はさらに加速する可能性もある。
モビリティサービスをめぐる各国政府や企業の取り組みも活発だ。日本政府としては経済産業省や国土交通省が、実証実験や取組方針をまとめている。トヨタ自動車とソフトバンクによる共同出資会社MONET Technologiesが、MaaSの実現に向け企業間の連携を推進すべく立ち上げた「MONETコンソーシアム」は、製造業から建設業、不動産業、飲食サービス業、保険業まで、非常に多岐にわたる業界から632社(2020年11月時点)が参画しており、既に一大コミュニティーとなっている。NXP Semiconductorsも2020年4月に加盟している。
モビリティサービス市場は、これまで自動車業界とはおよそ無縁だった分野のサービスプロバイダーなども巻き込み、拡大の一途をたどっているのだ。
モビリティサービスを実現する自動車(モビリティサービス対応車両)は、基本的にコネクテッドカーや自動運転車になる。そのため、大前提としてセキュリティやセーフティ技術、コネクテッド技術、自動運転技術が欠かせない。例えば車載センサーのデータを収集して分析し、安全にクルマの制御を行う、リアルタイムで車両を管理する、安全な車載通信を確立する、といった技術が必要になる。
だが、当然ながらそうした技術をサービスプロバイダー自身で探し出して構築し、利用するのはハードルが高い。NXPジャパン 第一事業本部 マーケティング統括部 車載マイクロコントローラ部の担当部長を務める早坂学氏は、「そこで、われわれNXPの出番だ」と語る。
モビリティサービス対応車両の大前提として利用者にとって安心、安全なモビリティでなくてはならない。そこを踏まえた上で必要な機能は大きく分けて2つある。1つは、自動車に多数搭載されたセンサーのデータ収集/分析やクラウドサービスとのデータアップロード/ダウンロードなどを行う機能(以下、車載側モビリティサービス機能)。もう一つは、自動運転そのものを実現するための機能だ。これはセンシング、判断、制御、電動化などが挙げられる。
「車載側モビリティサービス機能としては、コネクティビティ、セキュリティ、センサーデータを収集し機械学習での処理、といった部分のソリューションを提供できる。自動運転を実現する機能は、自動運転用ハードウェアとソフトウェア、統合ECU制御、システム異常時でも停車せずに動き続けるフェイルオペレーションなどを提供できる」(早坂氏)
車載側モビリティサービス機能向けの製品の一例として、2020年1月に発表した「S32G」が挙げられる。サービス指向ゲートウェイ向けのプロセッサだが、まずゲートウェイの基本性能においても非常にパワフルで、セキュリティを担保しながら車載ネットワークのプロトコル変換やルーティング処理を低遅延で行えるネットワークアクセラレータを内蔵する。これにより、例えばEthernetベースのADAS(先進運転支援システム)や自動運転ECUからの制御信号を遅延なく、CANベースのパワートレインやシャシーECUに伝達することが可能になり、より安全なサービスカーになる。この結果、モビリティサービス処理を行う内蔵アプリケーション用プロセッサや、リアルタイムコントローラは、ネットワーク処理から解放されるので、全てのコア性能をモビリティサービス実行に割り当てられる。より魅力的なサービスカーを構築できる。
S32Gプロセッサを使ったモビリティサービスとして、パートナー企業のハードウェアやソフトウェアと組み合わせることで、ドライバー、搭乗者の状態分析や、車載ECUの故障予知といったアプリケーションも実現できる。
エッジAI技術を手掛けるパートナーのAIアクセラレータをS32Gプロセッサと接続したソリューションでは、車載カメラの映像を分析し、よそ見や喫煙、あくびなど、ドライバーや同乗者の状況把握、また標識や信号、道路白線の認識が可能で、利用者の安全・安心を高めることができる。他にも、エッジAIベース次世代ビークル・ヘルス・モニタリングを手掛けるパートナーのソフトウェアを実装し、ハッキングの監視やクルマの故障予知で、サービスオペレーターにかかるメンテナンスやダウンタイム費用が削減できるソリューションもある。
そしてS32Gプロセッサは「AWS IoT Greengrass」にも対応し、S32Gリファレンスボードは、AWSの認証も取得済みだ。S32Gプロセッサでセンサーデータを収集・分析し、いわゆるエッジAIによって必要な結果のみをAWSにアップロードする。この一連の流れによって、車載側でのリアルタイムデータ処理と通信コストの削減を行うことが可能になる。「S32Gをベースとするソリューションのみで、ここまでできる」と早坂氏は述べる。
モビリティサービス対応車両に必要となる2つ目の機能、自動運転機能に関しては、NXPはトータルソリューションが提供可能だ。
「走る、止まる、曲がる」を担う標準車両システムから、自動運転/ADASを構成するための高性能プロセッサや、ビジョンやレーダーのセンシングまで、ほぼ全てを網羅した製品群がある。
自動運転システムのメインコンピューティング・ユニット向け「LX2160」プロセッサは、現在の5G携帯電話基地局向けのプロセッサとして実績のあるものを車載向けに対応させた。2GHzで動作するArm Cortex-A72コアを16個内蔵し、自動運転のためのセンサーフュージョン、自己位置推定や経路計画処理などを高速に実行可能。またPCIe Gen3コントローラと100Gb/sのサポートを含むEthernetといった高速なI/Oを複数ポート持つことで、このプロセッサに接続される他ECUユニットの物理的な配置と接続性を柔軟にすることが可能だ。LX2160プロセッサを搭載した評価開発プラットフォームの「BlueBox」を提供中で、さらに自動運転の実証実験でも複数の実績がある自動運転車用オープンソースソフトウェア「Autoware」を実行することができるので、すぐにでも自動運転機能を試す事が可能である。
自動運転ではセンシング技術も注目されている。NXPジャパン 第一事業本部 マーケティング統括部 統括部長を務める園田慎介氏は、「NXPのセンサーソリューションの中でもレーダーについては、われわれはマイコンからトランシーバーまで持つトータルサプライヤーだ」と述べる。ミリ波帯のレーダーシステムに対応する「S32R」は、レーダーマイコンではシェアトップを誇る。
「クルマのフロント、リア、コーナーに取り付けることで、LiDARよりも低いコストで全周囲をカバーできる。異なる複数のセンサーからのデータを融合するセンサーフュージョンの技術が進化していることを考えると、センサー側の堅牢性を強化する面からも、今後はカメラと同じ光ベースのLiDARより、カメラ+レーダーの組み合わせによって、より安全かつ低コストなセンシングを実現するようになっていくのではないか。そういった意味で、レーダーはモビリティサービスを加速する有望なソリューションとなる」(園田氏)
NXPはレーダーの開発において、微細プロセスの採用やパッケージングの開発によって、さらなる小型化に取り組んでいる他、最終的には、マイコンからトランシーバーまでを1チップ化することを目指している。
また、NXPは現在、高解像度のレーダー(イメージングレーダー)に向けたマイコン、トランシーバーも開発中だ。LiDARのようにポイントクラウドで物体を描写できるので、高解像度のイメージを取得できる。
「従来のレーダーでは難しかった検知や追跡、機械学習を使った分類/セグメンテーションができるようになってくる。その結果、LiDARやカメラで取得したデータと組み合わせるセンサーフュージョンもやりやすくなり、LiDARやカメラのような光ベースのセンサーでは見えないものをレーダーで描き出し、マッピングやローカライゼーション(自己位置推定)もできるようになる」(早坂氏)
機能停止しないための自動運転車に必要なフェイルオペレーションを実現する統合ECUに向けたマイコン「S32S」とその評価開発プラットフォーム「GreenBox」もそろえている。
GreenBoxは、Arm Cortex-R52コアを8個搭載したASIL-D車載マイコン「S32S」を搭載している。GreenBoxでは、「走る、止まる、曲がる」というクルマの基本的な制御を、リアルタイム性が担保できるハイパーバイザーで仮想化して統合制御できることが特長だ。早坂氏は、「つまり、エンジン・モーター制御ECU、バッテリー制御ECU、ブレーキECU、ステアリングECUといった“走る、止まる、曲がる”を担うそれぞれのECUを仮想化することで、1個のマイコン(S32S)上で全てを制御する統合ECUコントローラを実現できる」と説明する。これによって物理的なECUの搭載数とハーネスケーブルも含めた重量を減らし、航続距離が長くスムーズな動作の自動運転車に向けたレスポンスの良い車両制御が可能になる。
さらに、CPUコアが8個搭載されているので、あるコアに異常が発生しても残りのコアだけで動き続けることができる。「従来の車載マイコンは内部で不具合が発生すると『安全に止まる』ことしかできなかった。S32Sのフェイルオペレーション対応により、失陥した箇所を特定し、それをカバーする機能によって、クルマを停止することなく走行やサービスを続けられるようになる。仮想化に加え、フェイルオペレーションにも対応した車載マイコンを提供しているのは、現時点ではNXPだけではないか」(早坂氏)
BlueBox、GreenBox、そしてS32Gプロセッサを搭載した「GoldBox」のような自動運転向けの開発プラットフォームに加え、NFCデバイスや、Wi-Fi / BLE(Bluetooth Low Energy)/UWB(Ultra-Wideband)などのコネクティビティ技術、車載セキュアエレメントなどのセキュリティ技術まで持つNXP。
「NXPは自動車メーカーやティア1メーカーの協力のもと、エンドユーザーであるモビリティ・サービスプロバイダーからのニーズにも応えられる体制を整え、豊富な製品群をベースとするソリューションを提供していきたい」(園田氏)
NXPは、自動運転技術、セキュリティ技術、コネクティビティ技術にまたがるトータルソリューションを強みとして、業界にかかわらずあらゆるサービスプロバイダーがより簡単にモビリティサービス市場に参入できるような製品の提案と提供を続けていく。
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提供:NXPジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2020年12月26日