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LEDリアライトの潜在能力を引き出す半導体ソリューションが登場まだまだ進化の余地はある!

自動車の後方を照らすリアライト。いち早くバルブ光源からLED光源への置き換えが進んだ領域だが、まだまだLEDの利点を生かし切れているとは言い難い。安全性、信頼性のさらなる向上や、より周囲の注意をひくようなダイナミックな点灯、さらには新たなカーアーキテクチャへの対応なども求められている。こうした新たなニーズに応えるリアライトを実現するための半導体ソリューションが登場したので、詳しく紹介していこう。

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バルブ光源からLED光源への置き換えがほぼ完了したリアライト

 自動車は自動運転、電動化といった大きなトレンドで進化を続けている。車内外を照らす車載照明も、大きく進化を遂げてきた領域だ。それまでのバルブ光源から、LED光源への切り替えが急速に進んできた。

 LEDへの切り替えが進む背景には、LEDが従来光源よりも多くのメリットを持つということがある。1つは明るさだ。バルブ光源よりも明るいために、視認性がよく、安全性の向上に寄与している。また長寿命で、いわゆるランプ切れによる不点灯故障が生じにくく、信頼性が高く、環境にもやさしい。電力損失が小さく、バッテリーの長時間駆動、電費改善にも貢献する。さらには、LED素子自体は小さいために、個数や配置を工夫することで、照明システム自体を最適化しやすく、ライト形状などの自由度も高く、デザイン性を高めやすいという利点もある。

 こうした利点を多く持つLEDは、特に自動車後方を照らすリアライト領域で急速に普及してきた。近年、販売される新車のほとんどがリアライトにLEDを採用しているといって差し支えないだろう。

 リアライトは、フロントライトほど明るさ/輝度が求められず、基本的には輝度の調整は不要で「点灯/消灯」という簡単な制御さえ行えれば最低限の機能を満たすことができるという点などから、先行してLED化が進んできた。


さまざまな種類があるリアライトでLED化が進んでいる[クリックで拡大] 出所:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン

 いち早くLED化を遂げたリアライトだが、現状が完成型ではない。まだまだ進化を遂げる必要性がある。先行してLED化してきたゆえに、LED駆動回路方式が古典的だという課題を抱え、新たに求められつつある「リアライトへのニーズ」に応えるべく、さらにもう1段上の進化を遂げなければならない時期に差し掛かっているのだ。

抵抗回路方式からLEDドライバへ

 現状のリアライトにおけるLED駆動方式は「抵抗回路方式」が主流になっている。電流の大きさによって明るさが変わるLEDは、流せる電流の最大値が決まっており、その最大電流値を超えないよう電流制限抵抗を用いて制限しながらLEDを駆動させるのが抵抗回路方式だ。この方式はとてもシンプルだが、バッテリーなどの電源の電圧次第でLEDに流れる電流値が変わる。すなわち、バッテリーの残量が多くバッテリー電圧が高いとLEDは明るく発光し、逆にバッテリー残量が低ければLEDの発光が暗くなるわけだ。

 このため、輝度についてはバッテリー残量が少ない時を意識して設定しなければならない一方で、LEDシステムの放熱設計についてはLEDに最も電流が流れるバッテリーフル充電時を考慮して設計しなければならない。また、大半の時間は必要以上に明るくLEDが光ることになり、消費電力面でも無駄が多くなる。仮に定電流駆動が実現できれば、過度な明るさによる点灯がなくなり、消費電力を抑制でき、放熱設計もより簡素にできるわけだ。

 そうした中で、定電流駆動を実現する半導体デバイスが5年ほど前から製品化されてきた。インフィニオン テクノロジーズのLEDドライバIC「LITIX Basic/Basic+」はその一例である。


リアライトのLED駆動構成とその特長[クリックで拡大] 出所:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン

 こうしたリアライト向けのLEDドライバだが、登場からしばらくは一部の欧州自動車メーカーでの採用に限られ、普及は加速しなかった。抵抗回路方式は、構成が極めてシンプルなために安価にシステムを実現でき、LEDドライバを導入するよりも費用対効果に優れると判断されてきたことが大きな理由だ。


インフィニオン テクノロジーズ ジャパン オートモーティブ事業本部 ヴィークルUX & E/Eアーキテクチャ システムアプリケーションエンジニア プリンシパルエンジニア 今中義徳氏

 ただ、リアライトへの新たなニーズの登場により、「抵抗回路方式はLEDドライバよりも費用対効果に優れる」という図式が大きく崩れ始めた。そして「欧州市場を中心にLEDドライバへの置き換えが急速に進み始めた」(インフィニオン テクノロジーズ ジャパン 今中義徳氏)という。

 LEDドライバの費用対効果を高めている1つの要素が「安全性」だ。自動車は日々、安全性を追求しており、リアライトもその例外ではない。ブレーキライトや方向指示ライトといった安全性に直結するライトの異常を防ぐ必要性は高まり、万が一の異常発生時には運転手などに即時、伝えて対処する必要もある。

 そうした中で、抵抗器などディスクリート部品で構成する抵抗回路方式で、各種異常検知/保護機能に対応しようとすると、設計が複雑で、かつ、部品点数も増加してしまう。抵抗回路方式はもともと部品点数が多い。サプライチェーンリスクが増大している中で、部品点数の増加は、さらにリスクを高めることになる。

 これに対し、LEDドライバは、各種異常検知/保護機能を内蔵しながら、数少ない外付け部品で容易にLED駆動回路を構成できる。そのため、相対的に費用対効果が高まり、低コストを唯一の特長にする抵抗回路方式よりもトータルコストを抑制できるLED駆動方式として選ばれ始めたのだ。

置き換えに最適なリアライト向けLEDドライバ

 インフィニオンが展開するLEDドライバ「LITIX Basic/Basic+」は、LEDのオープン/ショート故障検知機能の他、LED制御部とLEDの接続部(コネクター、ハーネス部)の地絡異常に対しての保護機能を搭載する。保護動作や診断結果のラッチ状態、異常解除後に自動復帰させるかどうかなどは、LEDドライバの端子処理で選択できる。「異常が発生した場合に、部分消灯させる、全消灯させるなど異常に対する対応方法がテールライトやストップライト、方向指示ライトなど各種リアライトで異なったり、仕向け地で違ったりする。LITIX Basic/Basic+では、ユーザーで保護動作などを選択できるので、1製品ファミリーでさまざまなリアライトに適用でき、全世界の要求仕様にも対応できる」(今中氏)


LEDドライバ「LITIX Basic/Basic+」の主な特長と利点[クリックで拡大] 出所:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン

 また保護機能として、異常発熱時にLEDの明るさを抑えるディレーティング機能を備えており、点灯動作は維持したまま異常発熱を抑えることができる。「LEDドライバ内蔵の温度検知機能に加え、外付けのサーミスターによる温度検知にも対応しており、LED素子の異常発熱を抑えられる」(今中氏)とする。

 LITIX Basic+は、電流精度が5%未満とLITIX Basicよりも精度を高めた製品で、LITIX Basic/Basic+合わせて13製品シリーズあり、スケーラブルな製品ラインアップが整っている点も大きな特長。製品ファミリーとして出力電流範囲5mAから360mAまでを広くカバーしている。さらに外付け抵抗で出力電流(輝度)を設定し、ノイズやちらつきのないDC調光タイプとともに、調光を細かに調整でき色合いの変化が少ないPWM調光タイプもそろう。

 「昨今のリアライトでは、一列に並んだLED素子を片側から順に点灯、消灯させていくようなシーケンシャルターンや、徐々に輝度を高めていくウエルカム点灯のような、動きのあるアニメーション動作の採用が広がりつつあり、PWM調光タイプが選ばれるケースが増えている」(今中氏)という。

新アーキテクチャも見据えた新世代の16ch LEDドライバ

 豊富なラインアップがそろい、手軽に信頼性、安全性の高いLED駆動回路を実現できるLITIX Basic/Basic+を展開するインフィニオンでは、さらなるリアライトへの新ニーズに対応する次世代型のLEDドライバ「TLD7002-16ES」を製品化。2022年7月から量産を開始した。LITIX Basic/Basic+では最大3チャンネルだったチャンネル数を16チャンネルに拡大。各チャンネルに独立した14ビットPWMエンジンを内蔵する。さらに、CAN FD物理層を搭載しCAN FDバスで最大31個のTLD7002-16ESを接続できる。これにより、1つのバスで最大496本のLEDストリングスを駆動、制御でき、よりダイナミックなリアライトの点灯を実現できる。

 ゾーンアーキテクチャなど新たなカーアーキテクチャでは、ECUが統合、集約される傾向にある。そうした中で、上流ECUのマスターマイコンのUART端子からCAN FD経由でリアライト全てを制御できるTLD7002-16ESは、新カーアーキテクチャ対応LEDドライバといえるだろう。


LEDドライバ「TLD7002-16ES」の主な特長と利点[クリックで拡大] 出所:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン

 出力電流範囲は5mAから75mAで、各チャンネルで6ビット精度の個別設定が行える。

 TLD7002-16ESは、LITIX Basic/Basic+と同様の異常検知/保護機能に加え、外付けサーミスターによる加熱検知機能を備える。LED素子近くにサーミスターを配置し、温度を監視することでLED素子自体の過熱を検知して明るさを低減するなどの保護が行え、LED素子の高寿命化にも貢献する。

 そして、TLD7002-16ESのもう1つの大きな特長が機能安全規格「ISO 26262」で定められる自動車安全水準「ASIL-B」に準拠しているという点だ。ECUレベルでのASIL-B対応が進み始めている中で、バスライン異常検知機能を備えるなどしてLEDドライバとしてASIL-B準拠を実現した。「ASIL対応に必要なマニュアルなど文書やデータなど一式を準備しており、最もASIL対応をサポートできるLEDドライバ」(今中氏)とする。

 リアライトのLED化はほぼ完了したものの、LEDによるリアライトはまだまだ登場したばかりで、進化の途上にある。より高い信頼性/安全性、より周囲の注意をひくようなダイナミックな点灯、システム構成の最適化など、進化の方向性も多様だ。そうした中で、LEDによるリアライトの進化を強力に後押しするLITIX Basic/Basic+、そしてTLD7002-16ESが登場した。自動車のリアライトは、一層の進化を遂げることになりそうだ。

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提供:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2022年11月29日

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