自動車と産機を軸に成長加速へ、データセンター用電源が追い風に STマイクロエレクトロニクス:日本担当カントリーマネージャー 高桑浩一郎氏
長引く調整局面を乗り越え、2025年第4四半期に前年同期比プラスへ転換したSTマイクロエレクトロニクス。NXP SemiconductorsのMEMS事業買収や、AIアクセラレーター搭載マイコンの市場投入、800V直流アーキテクチャ用電源の開発など、次々と打ち手を講じている。STマイクロエレクトロニクス 日本担当カントリーマネージャーを務める高桑浩一郎氏に、各事業分野の注目製品や日本での戦略を聞いた。
調整局面は長引くも2025年第4四半期はプラス成長に
――2025年を振り返っていかがですか。
高桑浩一郎氏 2025年通期の売上高は118億米ドルで、前年比11.1%減だった。2025年第1四半期に業績は底を打ち、その後緩やかな回復基調に乗っている。第4四半期は前年同期比でプラス成長に転じた。自動車とインダストリアルで調整局面が長引いていたが、2026年に入り、在庫状況は着実に改善している。
2025年における売上構成比はオートモーティブが39%、インダストリアルが21%、パーソナル電子機器が25%、通信・コンピュータ周辺機器が15%だった。2024年に比べるとオートモーティブとインダストリアルの比率が減少し、後者2分野が増加した。オートモーティブは軟調な電気自動車(EV)市場によって比率が低下した一方で、通信・コンピュータ周辺機器領域は、AIサーバ市場の拡大を背景に大きく伸びている。
MEMS事業買収で車載用ポートフォリオを強化
――オートモーティブ事業でのアップデートと注力製品をお聞かせください。
高桑氏 直近の大きな動きとしては2026年2月にNXP Semiconductors(以下、NXP)のMEMS事業を買収した。STマイクロエレクトロニクス(以下、ST)もMEMS事業を長年手掛けているが、当社は主に民生機器向け中心に展開している。NXPのMEMS製品は車載に強く、当社のMEMSラインアップを補完する形になる。車載用として提案できるポートフォリオが広がったので、日本の顧客に貢献できると確信している。
車載用マイコンでは「Stellar P3E」を発表した。当社独自のNPU(Neural Processing Unit)を搭載したもので、エッジでリアルタイムに推論を実行できることが特徴だ。NXPから入手したMEMSセンサーや、Stellar P3Eのような特徴的なマイコンを継続的に投入し、今後も自動車分野を強化していく。
エッジ側にAIを搭載したいという要望は以前にも増して強くなっている。STでは、特に組み込み向けマイコンで手軽にエッジAIを実現できるよう、AIモデルを実装するためのツール「NanoEdge AI Studio」を提供してきた。こうしたサポートツールに加え、処理スピードを向上させるため、独自のNPUを搭載した組み込み用のハイエンドマイコン「STM32N6」を2024年に発表した。今度は車載用マイコンにも、高速な処理を可能にする独自NPUを搭載するという流れで、Stellar P3Eのリリースに至った。
小型化に貢献するSiP、豊富な製品群を組み合わせて柔軟に提案
――インダストリアル分野についてはいかがでしょうか。
高桑氏 STM32の新製品として「STM32V8シリーズ」を発表した。18nm 完全空乏型シリコンオンインシュレーター(FD-SOI)プロセス技術を採用し、相変化メモリ(PCM)を内蔵したハイエンド製品だ。高品質で強固な放射線耐性があり、SpaceXのStarlink衛星の小型レーザーシステムに採用されている。
さらに、メタサーフェス光学素子を手掛けるMetalenzと新たなライセンス契約を締結した。STの300mmプラットフォームを活用し、MetalenzのIP(Intellectual Property)を用いたメタサーフェス光学デバイスの製造を強化する。スマートフォン向けの生体認証機能やLiDAR、カメラ支援から、ロボット、ジェスチャ認識、物体検出といった新たなビジネス機会が広がると確信している。
――メガトレンドになっているエッジAIやフィジカルAIに対しての戦略をお聞かせください。
高桑氏 NPU搭載マイコンなど、われわれが持つ豊富な製品群を組み合わせてソリューションを提案していく。エッジAI/フィジカルAIに限らずインダストリアル向けでは、われわれの強みである、複数のIPを1パッケージに収めるSiP(System in Package)技術が重要な差異化要因になる。STM32マイコンを内蔵したモータードライバー、絶縁IPとパワースイッチを1パッケージに集積した絶縁内蔵パワースイッチなど、STは既に多数のSiP製品を展開している。スペースに制約があり部品の小型化が強く求められるヒューマノイドロボットなどでは、こうしたSiPが有効だ。サードパーティとも連携しながら、顧客や市場のニーズに応える製品を開発していく。
AIデータセンター拡大が追い風 電源と光通信に勝機
――通信・コンピュータ周辺機器の売上比率が前年比で伸びています。
高桑氏 この領域の中でも、特にデータセンターは今後の成長が期待される市場の一つだ。STは電源と光通信用フォトニクスで同市場に貢献できる。電源では、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)の次世代パワーデバイスや、電源制御を行うマイコンなどの需要が増えている。次世代AIデータセンター向けの800V直流(DC)アーキテクチャの開発では、NVIDIAと密に連携を取っている。2025年10月には、NVIDIAが発表したDCアーキテクチャをサポートする新しい電源供給の試作品を発表した。この試作品のフルパワー試験では、98%を超えるエネルギー変換効率を達成している。
AWS(Amazon Web Services)とも戦略的提携を拡大し、数十億米ドル規模の複数年契約に合意した。STはAWSの戦略的サプライヤーとして、同社のコンピューティングインフラに組み込まれるアナログ/パワー製品を継続的に供給する予定だ。
データセンターでは高速通信のニーズが高まっている。STは光通信用のシリコンフォトニクス技術を手掛けており、この分野でも貢献できると考えている。
AIデータセンターへの投資が活発になると、冷却設備などの周辺関連機器への投資も活発になり、当社の顧客からの需要が増加する。AIデータセンターに付随した市場の成長により、われわれのビジネスチャンスも広がると期待している。
日本ではシステム提案を強化
――日本の戦略についてお聞かせください。
高桑氏 日本はオートモーティブとインダストリアルが中心になる。ここはグローバルで見ても強い顧客が多数存在する領域だ。この2分野を軸として、パーソナル電子機器と通信・コンピュータ周辺機器では、当社が強みを出せるところに、選択的にアプローチしている。
オートモーティブ、インダストリアル、電力/エネルギー、パーソナルエレクトロニクスの4つのカテゴリーでそれぞれテーマを設け、セグメントマーケティングを行い、ソリューション提案を強化する。豊富な製品ポートフォリオという強みを生かし、評価ボードなどを用意することで開発期間短縮に貢献していく。
製造フットプリントの再構築 中国Innoscienceとも協業
――設備投資についてはいかがでしょうか。
高桑氏 2025年に製造フットプリントを再構築する計画を発表した。2025年から2027年の3年間で、300mmシリコンウエハー対応工場の設備を増強し、SiCウエハーについては200mmウエハー化を進めていく。地域的にみると、フランスにデジタル技術、イタリアにアナログ/パワー関連、シンガポールに成熟プロセス技術をそれぞれ集約していく計画だ。2026年の投資額は20億〜22億米ドルの範囲になっている。
――パワーデバイスの製造については、中国Innoscienceとの協業も発表しました。
高桑氏 STはGaNパワーデバイスの製造計画についてフェーズ1とフェーズ2に分けて進めている。フェーズ1では、InnoscienceとGaN技術に関する共同開発契約を締結し、Innoscienceの中国の製造拠点をファウンドリーとして使用する。STがプロセスコントロールを行い、STの基準に適合したGaN製品を中国向けに製造し、提供する。
フェーズ2では、STのイタリア・カターニャ工場でGaNパワーデバイスの製造を開始する。2026年末の量産開始を目標に、生産ラインの立ち上げを進めている段階だ。カターニャ工場では、中国向け以外のGaN製品を製造する。
2027年までに再生可能エネルギー使用率100%へ
――サステナビリティ戦略についてお聞かせください。
高桑氏 STは、スコープ1〜3におけるカーボンニュートラルの達成に向けて取り組みを進めている。2027年までに、再生可能エネルギーの使用率を100%にするというアグレッシブな目標を立てており、それに向けて継続的に取り組んでいく。
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提供:STマイクロエレクトロニクス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2026年4月25日



