TDK、「テクノロジーですべての人を幸福に」を具現化する革新製品を披露:TECHNO-FRONTIER 2023
「TECHNO-FRONTIER 2023」において、TDKは中長期戦略として取り組んでいる7つの重点注力分野「Seven Seas」に向けた最新の技術と製品を数多く展示する。中でも注目したいのは、低電圧駆動で位置精度が高い「圧電素子」や1Uサイズで出力容量7.5kWの「直流安定化電源」だ。
「TECHNO-FRONTIER 2023」において、TDKは「Attracting Tomorrow」をブースメッセージとして掲げ、同社が中長期戦略として取り組んでいる7つの重点注力分野「Seven Seas」に向けた最新の技術と製品を数多く展示する。本記事では、この中から低電圧駆動で位置精度が高い「圧電素子」と1Uサイズで出力容量7.5kWの「直流安定化電源」を紹介する。
TECHNO-FRONTIER 2023(会期:2023年7月26〜28日、会場:東京ビッグサイト)は、モータや電源、センサなどの要素技術から製品設計に関するソリューション技術まで、最新の技術と製品を紹介する専門展示会だ。TDKは、TECHNO-FRONTIER 2023内の「EMC・ノイズ対策技術展」に圧電超音波ステータ素子「PUSシリーズ」などを出展する。電源に関する専門技術展「電源システム展」には、直流安定化電源「GENESYS+シリーズ」の7.5kWモデルなどを紹介する。同時開催の「INDUSTRY-FRONTIER 2023」には「工場内の予兆診断・保全展」に出展し、生産製造現場の効率化や安定化、スマート化に貢献するセンサ製品を紹介する。
TDKが中期戦略に掲げるSeven Seasは「テクノロジーですべての人を幸福に」というサステナビリティービジョンを具現化したもので、Beyond 5G、IoT、ロボティクス、AR/VR、メディカル/ヘルスケア、モビリティーADAS/EV、再生可能エネルギーの7分野を指す。今回紹介する2つの新製品もSeven Seasに向けたものだ。
PUS素子、最小0.3μmの位置決め精度、消費電力は1W未満
圧電セラミックスは、両端に取り付けた電極にプラスやマイナスの電圧を加えると逆圧電効果によって外形が特定の方向に伸びたり縮んだりする。この原理を応用したのが「アクチュエータ」と呼ばれる圧電素子だ。電気信号を物理的な運動に変換し、装置を正確に動かすことができる。TDKも20年以上前からフルカスタムで圧電アクチュエータ事業を手掛けており、多くの納入実績がある。
圧電素子の用途でよく耳にするのは、電子ブザーや圧電スピーカー、インクジェットプリントヘッドなどだろう。圧電セラミックスで発生させた超音波振動(10k〜100kHz程度)を用いてローターを駆動する「圧電モータ」もその一つ。一般的には「超音波モータ」とも呼ばれている。
圧電モータにはさまざまな特長がある。電磁式モータに対して「磁界の発生がない」「ダイレクトドライブが可能で設計の自由度が向上する」などだ。ただ、「システム設計者において、圧電モータ自体の認知度が以前よりも低下しているように感じる。圧電モータを採用するメリットが十分に理解されないまま選択肢から外れているようだ。新製品の投入をきっかけに新たな応用分野を広げつつ、顧客への開発支援もさらに強化していきたい」(TDK)と話す。
TDKが現在開発を進めているのが、圧電超音波ステータ素子「PUS(Piezo for Ultrasonic Stator)シリーズ」だ。PUS素子の外形寸法は8×2.2×1.9mmで、活性層につながる外部電極は片側3個、両側で6個。PUSシリーズの外部に接触子を接着して用いる。電圧を加える活性層に応じてPUS素子が変位し、接触子を介して摺動(しゅうどう)板が「右」や「左」に動く仕組みだ。
PUSシリーズへの入力電圧波形は、「正弦波」もしくは「矩形(くけい)波」だ。入力電圧振幅は±10V。TDKの強みでもある「材料技術」と「積層技術」を活用することで、低電圧駆動を可能にした。参考までに、既存のギア型(リング状)超音波モータでは駆動電圧として30V以上が必要だという。入力電圧周波数は180kHz前後と、可聴域よりもはるかに高く静音。駆動速度は毎秒250mm(駆動距離20mmの場合)、推力は0.45N、電力は800mWだ。
TDKはPUSシリーズの応用例を2つ挙げる。「2個の直動アクチュエータを組み合わせて構成したクロステーブル」と「2個の回転アクチュエータを設置して構成したマニピュレータ」だ。
直動アクチュエータによるクロステーブルは、最小0.3μmという高い精度で位置決めが可能なこと、10V未満での低電圧動作、1W未満の消費電力を確認している。製品寿命は市販されているスライダー等の直動部品よりも長いことが分かった。
回転アクチュエータは、2つのPUS素子を同時に駆動させてマニピュレータの機能を評価した。爪にゴム製パッドを装着したベアリングをPUS素子で摩擦して回転させることによって爪が開閉し、軽くて小さい物体をつかめる。「低トルクでつかむことで、被保持物にダメージを与えない」という。
物体をつかむ力は、入力電圧の振幅を小さくする、あるいは短時間の電圧入力を間欠的に繰り返す制御で調整できる。デモ機では約20gの物体を保持できた。直動アクチュエータと同様に、低電圧動作や低消費電力、長寿命といった特長を備えている。
「マニピュレータのデモ機は、軽くて柔らかく、壊れやすい物体をそっとつかむロボティクスなどへの応用をイメージして作製した。電子部品のピックアップや薬品/薬剤系など新たな応用分野の開拓も視野に入れている。非磁性という特長から、医療現場で利用される装置や器具の開発にも貢献できるのではないかと考えている」(TDK)
EMC・ノイズ対策技術展のTDKブースでは、5個のPUS素子を用いて作製したプロッターのデモ機を展示する。デモ機にはXY軸のクロステーブル、ボールペンを上下に動かすY軸のスライダーと紙送り用のスライダーが搭載されている。タブレットで作画したデータをプロッターで作図するシステムについて、デモを交えて紹介する。
1Uサイズ(高さ43.6mm)で出力容量7.5kWを実現
電源システム展におけるTDKブースの注目製品は、TDKグループのTDKラムダが2023年5月に量産出荷を開始した1Uサイズ(高さ43.6mm)で出力容量7.5kWを実現した直流安定化電源「GENESYS+ 7.5kW」だ。同製品は12モデルあり、1000Vや1500Vといった高い出力電圧に対応した製品も用意されている。
直流安定化電源とはどういった製品なのか。あまり聞き慣れない名称なので簡単に説明する。一言で言えば、「主な要求仕様に対し、各種設定を外部から制御可能な電源」だ。定電流や定電圧など動作モード、立ち上がり/立ち下り時間、Fold Backモード切り替えなどを設定できる。制御方法としては、「本体盤面のスイッチなどによる操作」「内蔵コネクターを介して外部から印加するアナログ信号での操作」「LANを介してPCからコマンドを送信する操作」が可能だ。
つまり、研究開発や品質管理部門、半導体製造装置など、負荷に対してさまざまな電圧や電流の値を設定してシステムに印加する必要がある用途には必須の電源と言える。ただ、その呼び方は「直流安定化電源」や「直流電源」「可変電源」「CVCC電源」「直流可変電源」など仕様や電源メーカーによってさまざまだ。
TDKラムダはこれまで、GENESYS+シリーズとして出力容量が1k〜15kWの8機種を投入してきた。GENESYS+シリーズは、高い電力密度と性能を実現した製品だ。最大効率が90%以上という高効率設計により、環境負荷の軽減にも貢献する。要求が厳しい評価試験に対応できるよう、出力電圧や電流の低リップル化、高速の応答、高い精度を実現している。
これらの特長を引き継ぎ、1Uサイズで出力容量7.5kWを実現したのがGENESYS+ 7.5kWだ。これまで1Uサイズの出力容量は5kWだった。これを7.5kWにしたことで電力密度は0.87W/cm3になった。この値は従来品の1.4倍だ。これにより、小型で大容量の電源を構築できるようになる。
従来製品の出力電圧は最大600Vだった。新製品は出力電圧が1000Vのモデルと1500Vのモデルがある。通信インタフェースは従来と同様、標準でUSBやRS-232C/RS-485、LAN、絶縁アナログコントロールに対応。オプションでGPIBやModbusTCP、EtherCATをサポートしている。
GENESYS+ 7.5kWは、並列モデルも用意されている。2並列モデルは2U(高さ88.0mm)で、出力容量は15kW。3並列モデルは3U(高さ132.5mm)で、出力容量が22.5kWだ。1Uで出力容量5kWの従来品に比べると、1W当たりの体積比を27%も削減できる。
TDKラムダは、GENESYS+ 7.5kWの主なターゲットとして計測機器、工業用自動機器、研究機器、自動車関連検査、半導体製造装置、太陽光パネル、バッテリー充電などを挙げた。
GENESYS+ 7.5kWの特長は、91〜92%という高い効率や充実した通信インタフェースだけではない。さまざまな国や地域の安全規格などに対応していることは重要だ。IECやUL、CSA 61010-1の認定を取得し、CE/UKCAマークやRoHS指令にも対応している。EUや北米市場でビジネスを展開する顧客は、規格を独自にクリアする労力を軽減できる。
GENESYS+シリーズの製品保証期間は5年。複雑なシーケンス波形の作成や電源の各種機能を操作するソフトウェアも無償で提供しており、TDKのWebサイトでダウンロードできる。
カタログ上の性能や形状が同レベルの製品よりも優れていることが分かったとしても、顧客が採用を決断するのは容易ではない。実動作で期待する性能が得られるかどうかは未知数だ。機器を十分に使いこなすための操作方法やシステム構築のためのノウハウも必要だからだ。
こうした顧客の不安を少しでも取り除き、導入するシステムとの適合性を実機で評価してもらうため、TDKラムダは製品を無償で貸し出している。対象製品は「GENESYS+」や「Z+」「Genesys」「SFL(電子負荷)」など50モデル以上に及ぶ。「リップルノイズが小さく、高速応答性や高出力精度といった基本性能を高く評価していただき、貸し出した顧客の80%以上に採用してもらった」(TDKラムダ)
顧客の要望によっては電源を組み込んだラックシステムによる供給にも応じている。入出力系のハードウェア設計から制御系の部品選定まで対応可能だという。「出力電流として5000〜6000Aという大電流を要求する用途も最近は増えてきた」(TDKラムダ)
GENESYS+ 7.5kWは、潜在能力として34台まで並列できる設計となっている。出力容量は90kWまで検証済みだ。並列動作であっても各電源が自律的に動作するバス構造のため、競合製品よりも精度は高いとTDKラムダはしている。
直流安定化電源の採用を検討しているユーザーは、無償貸し出しなどを利用してみてはどうだろうか。直流安定化電源に関する課題や悩みも、TDKラムダの専門家が迅速に解決してくれるだろう。
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提供:TDK株式会社/TDKラムダ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2023年8月23日