買収で市場機会拡大、SiC JFET技術獲得でonsemiが狙う新市場:PCIM Expo&Conference 2025(1/2 ページ)
2025年1月にQorvoのSiC JFET事業を買収したonsemiは、AIデータセンター向け電源におけるニーズへの対応やソリッドステート回路遮断器(SSCB)など新たな市場機会の開拓を進めている。
SiC(炭化ケイ素)ウエハーの原料である粉末からはじまる、完全な垂直統合型の生産体制などを強みに、車載や産業分野を中心にSiCパワーデバイス事業を展開するonsemi。2025年1月にはQorvoのSiC JFET事業を買収し、AIデータセンター向け電源装置におけるニーズへの対応や、ソリッドステート回路遮断器(SSCB)など新たな市場機会の開拓を進めている。
2030年までに市場機会が13億米ドル拡大
onsemiは世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Expo&Conference 2025」(2025年5月6〜8日/ドイツ・ニュルンベルク)において、この買収によって取得したSiC JFET技術による利点を強調していた。
onsemiは2025年1月、Qorvoから子会社United Silicon Carbide(UnitedSiC)を含むSiC JFET事業を1億1500万米ドルで買収した。
SiC JFETはチップ面積当たりのオン抵抗が低く、高速スイッチングが可能なことから、AI/データセンターラック用電源の小型化および高効率化を実現できる。また、従来シリコンベースのトランジスタで使用されてきた一般的な市販のドライバーも使用でき、高効率かつシステム全体のコストを抑えられ、「SiC JFETはシリコンスーパージャンクションMOSFETにとって代わり、GaN(窒化ガリウム)と競合することが期待されている」という。さらにEV(電気自動車)用バッテリー遮断や、ソリッドステートサーキットブレーカー(SSCB)とったアプリケーションでも利点を発揮でき、onsemiはこの買収によって2030年までに市場機会が13億米ドル拡大するとしている。
低損失とコストのトレードオフを縮小
今回のPCIMでonsemiはSiC JFETとシリコン(Si) MOSFETをワンパッケージに統合した同社の「SiC Combo JFET」を用いたSSCBのデモを公開していた。SSCBは機械式ブレーカーに比べ高速動作が可能で、また可動部品がないことから寿命が長くなること、高い温度柔軟性やプログラム可能な定格電流などの利点がある一方、高コストや電圧/電流定格の制限、導通損失の増大などの課題がある。こうした課題に対しonsemiは「SiC Combo JFETは低損失とコストのトレードオフを縮小し、SSCBの実用化を可能にする」としている。
デモで使用していたのは同社の750V耐圧、5mΩと低オン抵抗のTOLTパッケージ採用SiC Combo JFETだ。Si MOSFETとの統合によって、ノーマリーオンであるSiC JFETの低いオン抵抗や高い堅牢性など利点を生かしつつ、ノーマリーオフのスイッチを実現したうえ、TOLTパッケージ採用によって高い放熱性も実現している。
ブースでは4つのSiC Combo JFETに加え、電源やBluetooth接続用のマイクロコントローラー「RSL15」など各種onsemi製の各種製品を組み合わせたボードを用いたSSCBのデモを実施。SiC Combo JFETの利点によって実現する定常動作時の低ΔTを示すとともに、過電流が発生した場合のブレーカーの動作や、RSL15による状態や温度の状況を示すアプリとの接続性などを示していた。
説明担当者はSiC Combo JFETについて、「極めてオン抵抗が低く、ノーマリーオフ維持のために別の部品が必要となるディスクリート品と比較して面積を最小限に抑えられる。このソリューションを実現するには、最も効率的なソリューションだ」と語っていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.