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強力な供給体制を整えるオンセミのSiCパワーデバイス Avnetが販売サポートを強化オンセミ製品を最も扱うトップディストリビューター

Avnet(アヴネット)は、SiCパワーデバイスを中心にオンセミ(onsemi)製品の販売ビジネスを強化している。オンセミのSiCパワーデバイスにはどのような特徴があるのだろうか。オンセミ日本法人社長にSiCパワーデバイスを中心に同社の事業戦略、Avnet日本法人社長にオンセミ製品の販売戦略を聞いた。

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 半導体/電子部品の世界的なディストリビューターであるAvnet(アヴネット)は、オンセミ製品の販売ビジネスを強化している。イメージセンサーと並ぶオンセミの主力製品であるパワーデバイス、とりわけ需要が拡大するSiC(炭化ケイ素)パワーデバイスの販売強化を進めている。

 オンセミのSiCパワーデバイスはどのような特徴を備えているのか。オンセミ日本法人社長の林孝浩氏にSiCパワーデバイスを中心にオンセミの事業戦略を聞くとともに、Avnet日本法人社長の茂木康元氏にオンセミ製品の販売戦略について聞いた。


Avnet日本法人社長 茂木康元氏(左)とオンセミ日本法人社長 林孝浩氏

「イメージセンサー」と「パワー」を自動車/産業用市場に

――オンセミの事業戦略について教えてください。

林氏 オンセミのミッションは、インテリジェントなパワーとセンシング技術でお客さまが直面している最も複雑で困難な課題を解決することだ。電気自動車(EV)や先進運転支援システム(ADAS)、ファクトリーオートメーション(FA)、充電、エネルギーインフラ、5G(第5世代移動通信)という6つの注力領域を定めている。これらの領域は「EVと充電」のように互いに関係し合い、エコシステムを構成している。オンセミは、自動車市場と産業用市場にまたがるエコシステムを持続可能なものにするため、革新的なパワー技術とセンシング技術の提供を通じて貢献することを目指している。


オンセミは6つの注力領域に対し、イメージセンサーとパワーという2つのコア事業を展開する[クリックで拡大]提供:オンセミ

――直近の業績はいかがですか?

林氏 2023年売上高は83億米ドルで、直近2024年第2四半期(4〜6月)の売上高は17億3500万米ドルだった。2023年こそ過去最高だった2022年並みの売り上げだったが、半導体需要は在庫調整局面に入り、2024年第2四半期は前年比17%減の減収になった。足元の市況感は不透明な部分もあるが、在庫調整は着実に進んでおり、我々の中長期的な見通しに変化はなく、再び成長軌道に乗るとみている。

 オンセミとして自動車市場と産業用市場においてパワーデバイス事業、イメージセンシング事業という2つのコア事業で市場平均を上回る成長を実現し、シェアを高めていく。

――イメージセンシング事業では2024年7月に短波長赤外線(SWIR)センサーを手掛けるSWIR Vision Systemsを買収されました。


オンセミ日本法人社長 林孝浩氏

林氏 オンセミのイメージセンサーは高画素数、高画質だけでなく、ハイダイナミックレンジ(HDR)や暗闇でも鮮明に捉えることができる高感度などのさまざまなセンシング技術を持っている。ADAS/自動運転、インダストリアル、宇宙/防衛など、高い信頼性と性能が要求される領域で高いシェアを有している。日本市場も含めて採用数は堅調に伸びており、オンセミのイメージセンサーの用途は広がっている。

 さまざまな用途の新たなニーズに応えるため、製品ラインアップを常に拡充していて、SWIR Vision Systemsの買収もその一環だ。極端な暗闇や濃霧の環境下での視認性向上や、高密度の材料やプラスチック越しでも画像を撮影できるコロイド量子ドット(CQD)ベースのSWIRセンサーに関する独自技術を保有している。SWIRセンサーで、より提案の幅が広がると期待している。

市場の2倍の成長を目指すSiCパワーデバイス事業

――パワーデバイス事業では、2024年6月にチェコでのSiCパワーデバイス工場新設を発表するなどSiCパワーデバイスへの投資が活発です。

林氏 カーボンニュートラルの取り組みが盛んになるなど地球環境保全は世界的な課題だ。シリコンパワーデバイスよりも電力損失が小さいSiCパワーデバイスへのシフトは必然であり、移行が着実に進んでいる。

 オンセミは早い時期からSiCに積極的に投資し、SiCパワーデバイス市場をリードして独自の優位性を築いてきた。今後も積極的な投資を継続し、SiCパワーデバイスにおいては市場成長の2倍の速度で事業規模を拡大させることを目標に掲げている。

――SiCパワーデバイスでのオンセミ独自の優位性とはどのようなものでしょうか。

林氏 「サプライ」「スケール」「製品展開範囲」「卓越した技術」の4つの優位性がある。最も特徴的で大きな強みになっているのは「サプライ」だ。


オンセミのSiC製品ファミリ「EliteSiC」の優位性[クリックで拡大]提供:オンセミ

 一般的なパワーデバイスメーカーは、ウエハーメーカーから購入したSiCウエハーを加工してパワーデバイス/パワーモジュールとして販売する。オンセミは「パウダーからパワーへ」と称して、SiCウエハーの原料であるSiC粉末やグラファイトを調達してSiCブール(インゴット)を作製し、SiCウエハーを切り出してデバイスやモジュールに仕上げる完全な垂直統合型の生産体制を構築している。

 2020〜2022年、半導体市場は過去に経験したことがないような半導体不足に陥った。その際、半導体生産のネックの一つになったのがウエハーだった。SiCブールとSiCウエハーを自社でコントロールして生産することで、より安定して供給することができる。自動車市場、産業用市場の顧客のほとんどは先の半導体不足で苦労した経験を持っていて、安定供給の重要性を痛感されている。そのため「パウダーからパワーへ」という完全一貫生産体制を構築しているオンセミの供給体制は高く評価され、採用の決め手になっているケースが多い。

複数の自動車メーカーと長期供給契約を締結

――スケール面での優位性についてはいかがですか?

林氏 IGBTといったシリコンパワーデバイスなどで数十年の実績がある。SiCでも多くの採用実績を積み重ね、大規模な生産能力も整えている。2023年に拡張工事が完了した韓国・富川工場は、8インチウエハー換算で年間100万枚以上のSiCウエハーを生産できる。

――今後、市場成長率の2倍の事業規模拡大を、パウダーからの一貫生産体制で維持するには大きな投資が必要で、事業リスクを伴うように思えます。

林氏 全てのウエハーを自社で生産するわけではなく外部からも一部調達するものの、将来の需要拡大を見越して投資する。2024年7月にフォルクスワーゲン(VW)グループと複数年にわたるSiCパワーモジュールの契約を締結するなど、さまざまなEVメーカーと長期供給契約を締結している。こうした供給契約を結ぶことで将来の需要を把握できており、それに基づいた積極的かつ適切な投資を実施できる。


オンセミが締結した主なSiCパワーデバイスの長期供給契約[クリックで拡大]提供:オンセミ

――長期供給契約を結ぶには、技術力、製品力も重要になります。

林氏 今回発表したVWグループとの長期供給契約はSiCプラットフォーム「EliteSiC M3e MOSFET」をベースにしたパワーモジュールに関するものだ。このEliteSiC M3eは最新世代品で、前世代に対して導通損失を30%、ターンオフ損失を最大50%低減できる。業界最小クラスの特性オン抵抗(RSP)を備えており、出力レベルが同じであれば搭載するSiCの量を減らして設計できるようになり、コスト削減と同時により小型で軽量なシステム設計が可能になる。サイズや重量が重視されるEVに最適な製品であり、多くの自動車メーカーで採用の動きが加速している。

 EliteSiC M3e MOSFETなどの第3世代品「M3」に続く第4世代品「M4」や、その先の第5世代品「M5」の開発にも着手している。世代が進むにつれて性能はさらに高まっていき、SiCの優位性が発揮されることになるので、期待してほしい。

競争力のあるSiCパワーデバイスを裾野の広い産業用市場へ

――SiCパワーデバイス普及の見通しについて教えてください。

林氏 これまではEVのパワートレイン用途での普及が先行してきた。足元では、HVACと呼ばれる空調システムやAIデータセンター関連の需要が拡大している。例えばAIデータセンターは新設や増強が加速しており、今後数年間で消費する電力は数倍になる見通しだ。ダウンサイジング、効率改善、そして電力消費の削減など、SiCがもたらすさまざまな利点によってお客さまの課題を解決していくことで浸透してきている。これが需要拡大の背景にある。

 こうした動きはFAなどのさまざまな産業用途でも広がりつつある。産業用途は裾野が広く、多種多様なニーズが存在する。IGBTなどのシリコンパワーデバイス同様、SiCでも幅広い製品ポートフォリオ、ソリューションを用意する。各顧客に応じた手厚いサポートも提供する。日本には優れた技術を持つ多くの産業機器メーカーが存在するので、オンセミ単独ではとてもサポートし切れない。そういった面でオンセミにとって最大の販売代理店であるAvnetに期待する部分はとても大きい。

――Avnetでのオンセミ製品の取り扱い状況について教えてください。


Avnet日本法人社長 茂木康元氏

茂木康元氏 Avnetはグローバルでオンセミ製品を最も多く扱うトップディストリビューターであるとともに、オンセミ製品はAvnetにとって主要な取り扱い製品の一つになっている。日本市場でも近年、オンセミ製品ビジネスの規模は拡大している。特にイメージセンサーや最新世代のT10をはじめとするMOSFET、IGBT、IPMその他ディスクリート製品の採用が国内産業用市場で拡大している。

 SiCパワーデバイスの需要も高まりつつあり、今後採用が拡大する見通しだ。

――SiCパワーデバイス拡販の取り組みについて教えてください。

茂木氏 日本法人はSiCパワーデバイスに特化したチームを設置し、オンセミと密に連携して高度な技術サポートを提供できる体制を整えている。

 Avnetはオンセミのパワーデバイスやイメージセンサーをベースにしたさまざまな開発キットを開発し、独自のターンキーソリューションも提供している。今後はSiCパワーデバイスを核にしたソリューションも開発する予定だ。

 Avnet全社の取り組みとして、オンセミのSiCパワーデバイス製品の販売キャンペーンを実施している。日本でも、キャンペーンの一環として技術ノウハウや最新の製品情報などを紹介するウェビナーを随時開催するなどしている。

 Avnetは、国内に2000社の顧客を持つ「日本に根差したディストリビューター」だと自負している。とはいえ、国内産業用市場の全ての企業と接点があるわけではない。キャンペーンや各種展示会などを通じて新たな顧客と接点を持ち、SiCパワーデバイスを紹介したい。


提供:アヴネット株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2024年9月10日

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