AI時代を切り開くNVIDIAの戦略に脱帽 受注残1兆ドル超の衝撃:大山聡の業界スコープ(100)(1/2 ページ)
NVIDIAの2027年度第1四半期決算は、売上高816億米ドルと市場予想を上回った。BlackwellやHBM3E需要の拡大に加え、「AIファクトリー」や推論AIを見据えた戦略も鮮明になっている。受注残1兆米ドル超という異例の状況から、AI市場と半導体市場の今後を読み解く。
早いもので、この記事は筆者が本連載を始めてちょうど100本目にあたる。編集担当者や多くの読者の皆さんに支えられて、ここまで続けてこられたことに深く感謝を申し上げたい。この先何本の記事を書けるか、いつまで続けられるかは分からない(というか考えていない)が、半導体という産業が世界中でますます重要視され、注目度が高まっている以上、その動向から読み取れることを分析し、連載を通じて発信していきたいと思う。
さて日本時間の2026年5月21日早朝、NVIDIAの2027年度第1四半期(2026年2〜4月期)決算が発表された。今月の執筆がやや遅めになったのは「100本目の節目にNVIDIAの決算分析を書きたい」と決めていたからで、きっとポジティブな内容になるだろう、と期待もしていた。実際に極めてポジティブな内容で、さすがはNVIDIAだ。当面は半導体市場のけん引役として業界を盛り上げてくれることだろう、というのが筆者の率直な感想である。
上振れ要因はHBM供給の増加か
NVIDIAの2026年2〜4月期売上高は816億米ドル、これはガイダンスの780億米ドルを大きく上回っており、前四半期比で19.8%増、前年同四半期比で85.2%増という結果であった。粗利率は74.9%。これは前四半期の75.0%とほぼ同レベルである。営業利益率は65.6%で、前四半期の65.0%を若干上回った。特徴としては、Blackwellシリーズの需要が非常に強く、Hopperからの移行が急速に進行したこと、ネットワーク事業(NVLink・Spectrum-X)が大幅に成長したこと、が説明会の中で挙げられた。地域別には、中国市場向けの売り上げが低迷している一方で、北米だけでなく、中東/欧州向けの売り上げは純増しているとした。中国向けの売り上げ低迷は、他の地域における増収で完全に補完しており、全体的な成長トレンドに影響はない、とのことである。
NVIDIAの決算が発表される度に「過去最高の売り上げ、過去最高の利益」が更新され、「ピークはいつになるのか」という質問が飛び出す。NVIDIAにもいずれピークはやってくるだろうが、それはまだ数年先の話だろう、と筆者は予測している。主な理由は、以下の通りである。
- 受注残1兆米ドル超:NVIDIA CEOのJensen Huang氏は、NVIDIAの受注残が1兆米ドルを超える水準にあり、しかもその数字は増加傾向にある、とコメントしている。つまりNVIDIAの売上高がほぼ一定の成長率で伸び続けているのは、製造能力側のボトルネックによるもので、それはまだ需要増加のスピードに追い付いていない。
- AIはまだ黎明期:AIはまだデータセンター内での事例が中心で、今後は「特定用途向け」に「フィジカルAI」が普及することが予想される。現段階でAIはまだ「黎明(れいめい)期」であり、本当の普及および成長はこれから、と思われる。
ちなみに1兆米ドルという受注残は、2025年の世界半導体市場規模(7956億米ドル)を上回る数字である。たった1社の受注残が世界半導体市場規模を上回るなど、常識では考えられないことだが、NVIDIAのけん引役振りが他社を圧倒していることの証左といえるだろう。
筆者も最近ではAIの専門家から話を伺う機会が増えている。そして専門家たちは口をそろえて「AIはまだ黎明期の段階だ」と明言している。つまり<2.AIはまだ黎明期>は業界のコンセンサスと考えてよいだろう。となると気になるのは<1.受注残1兆米ドル超>の方だ。冷静に考えれば、今四半期の売上高がガイダンスを上回ったのは「想定よりも製造能力が増加したから」ということになるだろう。ここで言う製造能力とは、製造委託先のTSMCの能力、特に「CoWoS」と呼ばれる最先端パッケージング工程と、SK hynixなど大手DRAMメーカーからNVIDIAに供給される広帯域メモリ(HBM)の供給量、に注目する必要がある。この2つがNVIDIA製GPUの製造におけるボトルネックとなりやすい、といわれているからである。
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