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「エッジファースト」の発想が導く分散インフラと現場オペレーションの変革小さいことは力なり

クラウド偏重のAIによるさまざまな課題が顕在化するにつれ、データが生成される現場でインテリジェンスを発揮させる「エッジAI」の重要性が増している。デル・テクノロジーズは、まずは最適なエッジ環境を構築し、そこからクラウド/データセンターへの接続を検討する「エッジファースト」を提案する。その上で、大規模な初期投資が難しいエッジでは、AI環境をオーケストレーションさせながら、段階的に拡張していくことが重要だと語った。

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クラウドに偏重したAIが抱える課題

 生成AI活用が多くの企業に広がっているが、クラウドに過度に依存したモデルには、さまざまな弊害が顕在化している。

 まず挙げられるのが、レイテンシーの問題だ。クラウドにデータを送ってから結果が戻るまでに、数百ミリ秒から数秒単位の遅延が発生する場合がある。これは、リアルタイム処理が必要な場面で大きな障害となる。例えば、異常検知、安全監視、製造ラインでの品質判定など、即時判断が求められる用途では対応が難しくなる。

 次に、帯域とコストの問題。従来の推論処理からエージェントコンピューティングへ移行する中で、トークン数が飛躍的に増大している。加えて、コンピュータビジョンの領域でも高帯域ネットワークの需要が膨らんでいる。

 また、データ主権とプライバシーの問題もある。特に製造現場、医療、金融、公共分野などでは、データをどこに置き、誰が管理し、どのように処理するかが問われる。

 さらに、レジリエンスの問題。クラウドに処理を集中させると、ネットワークなどに障害が発生した際に、AI処理全体が停止するおそれがある。現場側・エッジ側でもある程度自律的に処理できるようにすることで、リスクを分散する必要がある。

 そこで求められるのが“発想の転換”だ。デル・テクノロジーズの中でもグローバルで約30名しかいない「AI Elite」を務める増月孝信氏は、アイティメディア主催のオンラインイベント「エッジAIイニシアチブ 2026」で講演した際、「実際にデータが生成される場所でワークロードを展開する必要があります。『後から分析する』のではなく、『その場で判断』するアプローチの重要性が高まっています」と強調。一次データの即時活用に対する需要が今後膨らんでいくとの見方を示した。

「エッジAIイニシアチブ 2026」で講演するデル・テクノロジーズ 増月孝信氏
「エッジAIイニシアチブ 2026」で講演するデル・テクノロジーズ 増月孝信氏

エッジAIに向かう5つのトレンド

 AI活用は「スケール主導型モデルから、自律的でシステム定義型のインテリジェンスへの方向転換の時期を迎えた」というのが、デル・テクノロジーズの見解だ。この変化は、企業や組織がAIを構築し、展開し、信頼する方法を大きく再形成していくことになる。

 そのために必要なアクションとして、増月氏は「ハイブリッド環境全体でAIワークロードをオーケストレーションする」「ガバナンスや監査の機能を後付けではなくシステムに組み込む」「単一のクラウドやオンプレミスではなく分散環境全体を一元管理する」ことの重要性を説く。また、AIの技術が急速に進化していく中では、特定のテクノロジーだけに投資すること自体が、ある意味でのリスクになりかねない。AI活用はモデル自体の大きさや高度さよりも、「目的への適合性」を重視すべきなのだ。

 こうした勘所を踏まえつつ、増月氏はデル・テクノロジーズとして注目しているエッジAIのトレンドを、次の5つの観点から整理する。

 1つ目は、特化型SLM(Small Language Model)。パラメータ数の多いモデルは相応のリソースを必要とするため、用途に特化したコンパクトなモデルを使い、それらを自律的に結合させるアプローチが重要となる。

 「私たちは米国のHugging Faceと協業し、サーバー、ワークステーション、エッジAI環境などのプラットフォームにチューニングされたLLMやSLMを提供しています。コンテナ化され、DockerやKubernetesのスクリプトも公開されているため、比較的簡単にテストや実装を行っていただけます」(増月氏)

 2つ目は、分散型データセンター。データセンターを集中型から分散型へ移行し、データが生成される場所にインテリジェンスを持たせる。ただし、全体の一貫性を保ちつつ、リモートサイトのガバナンスやセキュリティをいかに担保するかが課題となる。

 3つ目は、コンピュータビジョンの進化。エッジAI領域における最重要ユースケースの1つとして、PoCから本番環境への展開が進み、画像内検索、文脈推論、視覚センシングの活用が本格化すると予想される。軽量モデル、改良アルゴリズム、専用エッジハードウェアにより、リアルタイム推論と省電力の両立が可能になる。特に製造、小売、医療、スマートシティでの実装がさらに広がることが見込まれる。

 4つ目は、エージェント型AI。PoC(Proof of Concept)からいよいよ運用段階へ進む中で、中央集権型ではなく、エッジ常駐エージェントがローカル判断とクローズドループ制御を担うようになると考えられる。これにより、さらなる低レイテンシー・低帯域・手作業削減が実現し、SLM活用とも相性が良くなる。

 「ただし、AIエージェントを同僚に見立てて協働する世界では、人の役割がいっそう重要となり、AI全体のガードレールとして関与することが求められます」(増月氏)

 5つ目は、フィジカルAI。エージェント型AIと物理システムの融合により、実用段階へ進む。想定される主な対象は、危険作業や反復作業を伴う高負荷な現場作業だ。例えば鉱業、建設、農業などの分野で、保守・搬送・監視・精密作業の自動化が広がると予想される。なお、フィジカルAIは安全対策の観点からも低遅延のリアルタイム処理が必須であり、エッジ配置が前提となる。

デル・テクノロジーズが注目するエッジAIの5つのトレンド 提供:デル・テクノロジーズ
デル・テクノロジーズが注目するエッジAIの5つのトレンド 提供:デル・テクノロジーズ

「エッジファースト」の発想がもたらす企業の“勝ち筋”

 上述のようなトレンドを踏まえた“勝ち筋”は、分散運用を支えるエッジ基盤をいかに効率よく構築するかにある。データセンター、クラウド、エッジをシームレスにオーガナイズする仕組みをスコープに入れた、「エッジファースト」の発想が重要だ。

 「クラウドやマルチクラウドを中心に据え、その拡張としてエッジを構築するのではありません。まずは最適なエッジ環境を構築し、その上でどのデータセンターやクラウドに接続するかを検討するという順序で考えます。これによって企業は、効率向上/コスト削減/運用力強化などの競争優位を得ることができます」(増月氏)

 エッジAIの具体的な事例として、増月氏は製造業における外観検査を挙げる。熟練検査員の“目”と“勘”に頼っていた検査を、エッジAIで標準化する動きが加速しているのだ。

 「単純な良品/不良品判定のような領域では、生成AIよりも識別型AIが適しているのは事実です。しかし、VLM(Video Language Model)で映像をテキスト化し、人間が判断しやすい状態にした上でエージェント化すれば、これまで人が映像を見て判断していた部分をさらに自動化できます」(増月氏)

 設備の予知保全も有望な適用分野だ。“止められないライン”ほど、エッジ側でのリアルタイム解析により、いつもと異なるパターンの検出と早期対応が求められるからだ。

 「これまで設備運用の現場では、定期メンテナンスで部品を交換していました。そこにエッジAIによる予測モデルを導入すれば、故障が発生しそうな兆候を迅速に検知し、的確なタイミングで部品交換や保守を行うことが可能となります。結果として不要な部品交換を減らし、メンテナンス効率を向上させます」(増月氏)

 ただし諸外国の動きと比較した場合、日本企業の取り組みは後塵を拝していると言わざるをえない。グローバルでは製造業や流通小売を中心にコンピュータビジョンの活用事例が増えている一方、日本では同様の機会がありながら、「PoC止まり」で本番移行できない課題に直面している。

 原因として考えられるのは「IT部門とOT部門の分断」「現場レベルと経営レベルの連携不足」「組織のサイロ化」「AI人材・運用人材の不足」「本番運用を見据えた仕組み不足」などだ。

 デル・テクノロジーズは、これらの課題に対しても解決を後押ししていく考えだ。「AI環境全体のオーケストレーション、教育・人材育成、ワークロードのブループリント化などを通じて、エッジAIの利用機会を広げ、日本企業が本来もつポテンシャルを発揮できるよう支援していきます」(増月氏)

エッジAIの展開を支援するデルのソリューション群

 エッジAIの拡大展開に向けて、デル・テクノロジーズでは具体的にどんなソリューションを取り揃えているのだろうか。2024年に提供開始した「Dell AI Factory with NVIDIA」は、デル・テクノロジーズのインフラストラクチャとNVIDIAのGPUやAIソフトウェアを統合し、エンタープライズ環境のAIを簡素化する。

 「すでに5000社以上の実績を有し、NVIDIAとの強力なタッグのもと、2025年から2026年の間に160以上の新ソリューションおよび新規リリースを投入するなど急速に進化しています。ファウンデーションモデルの導入、ワークロードのカタログ化、ブループリント化、パートナー連携を含むAIシステム全体の枠組みを支えます」(増月氏)

 システム全体をオーケストレーションする仕組みとしては、「Dell Automation Platform」がある。最小限のAI基盤(ファウンデーション)にモジュール化された資源を段階的に追加しながらスケールできるアーキテクチャを備え、インフラだけでなく、その上で動くAIワークロードもブループリント化して展開できるのが特徴だ。

「Dell AI Factory」のモジュラー型アーキテクチャ 提供:デル・テクノロジーズ
「Dell AI Factory」のモジュラー型アーキテクチャ 提供:デル・テクノロジーズ

 エージェントコンピューティングの評価段階におけるニーズに応えるのは、NVIDIAの「NeMoClaw」関連ソフトウェアをベースとする「Dell Deskside Agentic AI」だ。エージェント型AIはトークン生成数が増大するため、ワークロードをクラウドではなく、サーバーやワークステーションに実装する経済的メリットは大きい。

 エッジAIに必要なデータ準備やパイプライン運用に関しては、「Dell AI Data Platform with NVIDIA」を提供。ストレージ基盤から非構造化データ検索、分散データのフェデレーション、データパイプライン自動化、ラベリング自動化、オーケストレーションエンジン、ワークロードのブループリント化まで、トータルに対応する。

 さらに、業務現場にAI専門家がいないという課題に対応するのが、「Dell Distributed Private Cloud」だ。前述のDell Automation Platformと連携させることで、管理者はリモートからエッジ環境へAIワークロードを展開できる。ブループリント化された運用を実現することで、複数拠点の管理を効率化する。

オーケストレーションしながら段階的に拡張へ

 これらのソリューションは、スモールスタートで段階的に拡張していくことが望ましい。「エッジコンピューティングは初期段階から大規模投資に踏み切るのは難しいため、インフラを含めたAI環境全体を、一貫してオーケストレーションしながら拡張できる仕組みが重要となります」(増月氏)

導入ステップの例。スモールスタートで段階的に拡張していくことが望ましい 提供:デル・テクノロジーズ
導入ステップの例。スモールスタートで段階的に拡張していくことが望ましい 提供:デル・テクノロジーズ

 大規模な集約型モデルから、目的や専門性に特化したモデルを自律型のエージェントコンピューティングでオーケストレーションする仕組みへと移行する発想の転換が、まさに今求められている。エッジAIの実装は、単なる技術導入にとどまらず、現場起点で企業の競争力を高める取り組みとして、今後さらに重要性を増していくだろう。

DELL/NVIDIAロゴ

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提供:デル・テクノロジーズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2026年9月23日

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