MEMS一体型単結晶ダイヤモンド量子センサー実現:微小カンチレバー内にNVセンター
東北大学の研究グループは、物質・材料研究機構(NIMS)と共同で、量子センシング機能と機械構造を単一のダイヤモンドMEMS内部に集積するための技術を開発した。高度な応力センシングへの応用に期待する。
曲げ応力に対し19.8MHz/GPaの感度で直線的に応答
東北大学大学院工学研究科の戸田雅也准教授らによる研究グループは2026年9月、物質・材料研究機構(NIMS)と共同で、量子センシング機能と機械構造を単一のダイヤモンドMEMS内部に集積するための技術を開発したと発表した。高度な応力センシングへの応用に期待する。
研究グループは今回、単結晶ダイヤモンド(SCD)で作製したMEMSカンチレバーの内部に、NVセンター(窒素−空孔センター)領域を直接形成することに成功した。NVセンターは磁場や温度、応力などを検出できる量子センサーとして注目されている。
具体的な作製プロセスはこうだ。まず、SCD基板に炭素イオンを注入し、内部にグラファイト層と欠陥層を形成する。熱処理した後にグラファイト層を犠牲層として除去し、ダイヤモンドカンチレバーを作製した。その形状は長さ約140μm、幅約10μm、厚み約450nmである。熱処理の過程において、イオン注入で生じた空孔とダイヤモンド中の窒素不純物が結合し、欠陥層の近傍にNVセンターを含む領域が形成されるという。ここが応力の検出部になる。
試作品を用いた実験では、カンチレバーを28.3kHzで振動させ、静磁場を4つあるNVセンター結晶軸の1つにほぼ一致させて光検出磁気共鳴(ODMR)を測定した。なお、カンチレバー先端の変位はレーザードップラー振動計で測定し、表面の曲げ応力に換算した。
この結果、引っ張り曲げでは共鳴周波数が高周波側へ、圧縮曲げでは低周波側へそれぞれシフトした。0.2Vppおよび0.4Vppの駆動条件において、それぞれ約2.0±0.5MHzおよび、0.4±0.5MHzの周波数シフトを観測。曲げ応力に対し19.8MHz/GPaの感度で直線的に応答することが分かった。さらに、ODMR周波数シフトが、カンチレバーの振動位相に同期して周期的に変化することも確認した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
リチウムイオン電池の複合電極、新評価法を開発
千葉工業大学や名古屋大学、東北大学および、東京理科大学の研究グループは、これまで見ることができなかったリチウムイオン電池の複合電極における局所的な電気化学反応を、ナノスケールで可視化することに成功した。複合電極の「どの材料が、どの場所で、どのような反応をしているか」を解明可能となる。
高価なるつぼ不要、3.5インチ酸化ガリウム単結晶の新手法
東北大学発ベンチャーのFOXやC&A、東北大学および、三重大学の研究グループは、OCCC法と呼ぶ新たな結晶育成手法により、直径3.5インチの「酸化ガリウム単結晶」を作製することに成功した。開発した育成手法は、高価なイリジウムるつぼなどを使わなくて済むという。
酸化物界面における「隠れた電荷移動経路」を特定、東北大ら
東北大学は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)と共同で、酸化物ナノ界面における「隠れた電荷移動経路」を特定した。界面の化学結合ネットワークを取り入れた理論をデバイス設計に導入することで、酸化物ナノ構造の機能設計が可能となる。
数百層の3D NAND内部構造を非破壊で観察可能に、東北大
東北大学は、高アスペクト比エッチングホールの構造を非破壊で3次元(3D)画像として可視化することに成功した。数百層の3D NANDフラッシュメモリ開発などにおいて、その内部構造を非破壊で評価することが可能となる。
リチウム金属電池の性能を最大化する指標を発見、東北大
東北大学は、リチウム金属電池の電解液濃度について、電池性能を最大化するための新たな指標を発見した。「イオンの協調輸送」と「保護膜(SEI)の強さ」が高性能化のカギを握るという。
超WBG半導体基板の大口径化へ道筋、東北大
東北大学は、直接窒化法を用い針状の窒化アルミニウム(AlN)単結晶を育成することに成功した。これを種結晶として溶液成長法により結晶成長させれば、大口径の超ワイドバンドギャップ(WBG)半導体基板を実現できるとみている。

