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開発/生産のスピードアップで成長を実現――サンケン電気パワーモジュール事業サンケン電気 技術開発本部 パワーモジュール開発統括部長 舩倉清一氏

サンケン電気は自動車、産業機器/民生機器、白物家電用のパワーモジュール事業の強化を継続する。需要拡大に備えて効率的な増産投資を実施すると同時に開発スピードを加速させ、付加価値の高い新製品の売上比率を引き上げることで事業拡大を狙う。同社技術開発本部でパワーモジュール開発統括部長を務める舩倉清一氏に、製品/技術開発戦略について聞いた。

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中期経営計画の数値目標を大きく上回る見通し

――2022年度は売上高2254億円、営業利益262億円といずれも過去最高でした。

舩倉清一氏 2022年度は目標にしていた新製品比率15%も達成できた。3カ年の中期経営計画で取り組んでいる開発スピードの向上策や工場のスマート化による生産性向上策が良い結果に結び付いたと考えている。

 一方で課題としては、部材の調達で苦労したこともあり、効率的且つ最適なサプライチェーンマネジメントが実現できるよう組織改正を行っている。また拡大する需要を踏まえてより安定した生産体制を構築する必要を感じた。そこで後工程の主力工場である石川サンケン(石川県)の生産ライン増強と今後EV化により需要が大幅に伸長する車載用途向けに新工場(新潟サンケン)の新設を決めた。いずれもパワーモジュールの生産体制の強化が主な目的だ。新工場は、需要増のスピードを意識して既存の半導体工場建屋を借りてそこに自社設備を導入することで、通常3年程度かかる工場立ち上げが約半分に縮まり、初期投資も建屋を建設する場合よりも7割ほど小さく済む。新拠点の稼働は2024年度を予定している。

――今期(2023年度)は中期経営計画の最終年度になります。

舩倉氏 2023年度の売上高は2400億円を見込んでおり、計画で掲げた売上高目標(2023年度1700億円)を大きく上回りそうだ。世界半導体市場の2021〜2023年の年平均成長率は6.3%と予想されている中で、サンケン電気の売り上げ成長率は15.2%になる。市場平均を大きく上回れそうなことは一定の評価をできるのではないかと考えている。


中期経営計画の進捗(しんちょく)状況[クリックで拡大] 提供:サンケン電気

パワーモジュール事業を継続強化へ

――次期中期経営計画(2024〜2026年度)についてはどのようにお考えですか。

舩倉氏 次期計画は今夏以降に立案するが、市場成長率を上回る成長を継続する基本方針に変化はないと考えている。新製品比率のさらなる向上とパワーモジュール事業の強化を軸に、2024年度以降もパワー半導体市場の成長率を上回る売上高成長を目指す。

――パワーモジュール事業の強化策について教えてください。

舩倉氏 パワーモジュール事業のターゲット領域は3つ。自動車、産機/民生、そして白物家電だ。自動車については電動化が進むことで大きく市場規模が拡大する。産機/民生についても省エネ需要が底堅く、欧州ではガス価格高騰に伴ってヒートポンプ式温水暖房(AWHP)需要が急拡大し、パワー半導体の新市場が生まれている。サンケン電気が高いシェアを有している領域であり、引き続き顧客ニーズに応える新製品の開発、市場投入を行っていく。

 この3領域でそれぞれの市場ニーズに沿った高信頼、高密度、高放熱を実現する製品を拡充する。

市場ごとに独自の製品価値を提供

――領域ごとの製品/技術開発方針は具体的にはどのようなものでしょうか。

舩倉氏 自動車領域では、トラクションインバーター、ウオーターポンプ、電動コンプレッサーといったxEV(電動車)で新たに生まれたパワーモジュールのアプリケーションに注力する。量産中の3相モータドライバ「SAM2シリーズ」をさらに小型化、高周波化した「SAM4シリーズ」を開発、投入する。SiC-MOSFETを搭載した3相モータドライバも開発中で、1200V耐圧クラスに参入する。


xEV/BEV補機用IPM製品開発ロードマップ[クリックで拡大] 提供:サンケン電気

 産機や業務用エアコンなどには、競合品よりもスイッチングやノイズ特性に優れるという特徴を持つSAM2シリーズのラインアップ拡充を進める。パワーモジュールはIGBT、MOSFETといったスイッチング素子が注目されるが、ダイオードもモジュールの重要な構成要素だ。当社はダイオードに強いメーカーであり、ダイオードにもこだわることで競争力のある特性を実現している。

自動車向け事業(左)と産業機器向け事業(右)の成長戦略[クリックで拡大] 提供:サンケン電気

――白物家電向けについてはいかがですか。

舩倉氏 2023年から白物家電向けIPMの新製品として3相ブラシレスモータドライバ「SIM2シリーズ」を量産している。SIM2シリーズは、業界標準になっているパッケージを40%以上小型化した独自パッケージになっている。このパッケージはただ小さいだけでなく、従来パッケージと同等のピン間距離を維持している他、通常よりリードが長いロングリードも用意しており選択の幅が広いという特徴もある。中国の大手家電メーカーでの採用が進んでおり、市場ニーズにマッチした新パッケージであると自負している。

 当社が高いシェアを持っているファンモータ向け製品では省エネ・低コストが実現可能なスポークモータ駆動に特化した「SX6814xMシリーズ」を開発した。スポークモータは従来の制御方法では音鳴りが大きいという課題があるが、SX6814xMシリーズは音鳴り抑制回路を内蔵することで課題解決を図った。またこの製品のもう一つの特徴は10極スポークモータを従来の8極モータ用システムでそのまま制御・駆動できるようにしており、IC内部にモータからの回転信号出力パルスを変換する機能も搭載することで、ユーザーは制御システムのソフトウエアを変更することなく、そのまま置き換えることが可能となる。

白物家電市場に向け展開する3相ブラシレスモータドライバ「SIM2シリーズ」(左)とスポークモータ用ドライバ「SX681xMシリーズ」の概要[クリックで拡大] 提供:サンケン電気

 サンケン電気はエアコン、冷蔵庫、洗濯機といった全ての白物家電に対応するIPM製品をそろえている。今後も高効率/高性能、かつ特徴ある製品を開発していくことで顧客の信頼と期待に応えていきたい。

ESGの取り組みも強化し“社会に貢献”

――サンケン電気の強み、そして目指す将来を教えてください。

舩倉氏 国内に前工程と後工程の自社工場を持ち、独自プロセスのデバイス、そして特徴的なパッケージを迅速に開発できる体制を持つ点が強みだ。2021年には本社(埼玉県新座市)に「ものづくり開発センター」を設置し、開発部門と各工場の技術者が集まって集中して製品、生産技術を開発する体制を構築した。この効果は大きく、製品開発、そして量産立ち上げがスピードアップし、強みがさらに増した。

 今後もこうした強みを生かして高信頼、高密度、高放熱の半導体やパワーモジュールを提供することでサステナブルな社会に貢献していく。同時に、工場での再生エネルギー活用を加速させるなどESG(環境、社会、ガバナンス)への取り組みも積極的に実施し、本業である製品、事業活動を通じて社会に貢献することを目指す。



提供:サンケン電気株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2023年9月21日

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