「SPICEモデルのサブスク」で試作を高速化 部品調達だけではないマルツエレックの強み:マルツエレック 代表取締役社長 土谷耕作氏
マルツエレックは、半導体/電子部品のECサイト「マルツオンライン」や実店舗を通じて、販売・調達サービスと設計開発・試作・少量量産を一気通貫で支援するサービスを提供している。2026年8月には、パワーデバイスやバッテリーのSPICEモデルをサブスクリプションで提供するサービスを開始した。顧客の回路設計、さらには試作の高速化に貢献する。
調達力と設計力を一気通貫のサービスで提供
――マルツエレックの概要と強みをあらためてお聞かせください。
土谷耕作氏 当社はマルツグループの1社で、ECサイト「マルツオンライン」に加え、国内15拠点、香港、タイ・バンコクの海外2拠点を通じて、半導体/電子部品の販売・調達サービスおよび、ものづくり一貫サービスを提供している。国内唯一のDigiKey社総代理店でもあり、全国の大学生活協同組合(生協)とも連携している。
また、MRO(Maintenance, Repair and Operations:保守・修繕・運用)システムとの連携を通じて、大手製造業への電子部品・機構部品・関連資材の供給体制を構築している。
当社の最大の特徴は、調達力と設計力を一気通貫のサービスとして提供できる点だ。ものづくり一貫サービスでは、電子機器の開発・試作から量産までを支援する。企画から回路設計、基板製造、部品調達、実装までをワンストップで提供できる。特に、企画・回路設計から製造までの一貫サービスを利用しているお客様は、航空宇宙分野、自動車分野、社会インフラ分野まで幅広く、大企業からベンチャー企業、研究機関まで、年間90件の新規性の高いプロジェクトを実際に運用している。
回路設計時間を短縮 SPICEモデルの「サブスク」サービスを開始
――現在、最も注力している事業戦略をお聞かせください。
土谷氏 先述したものづくり一貫サービスをさらに進化させ、設計から製品化までを支援するエレクトロニクス開発プラットフォームの提供を強化することだ。そのために、3つの重点領域を設定した。1つ目は部品の安定調達、2つ目は回路設計から試作、小ロット量産までをつなぐものづくり支援、3つ目がSPICEモデルやシミュレーションを活用したモデルベース開発の強化だ。特に3つ目については、SPICEモデルのサブスクリプション(サブスク)サービス「SPICE PARK」を2026年8月に開始したばかりだ。
――どのようなサービスなのでしょうか。
土谷氏 炭化ケイ素(SiC)/窒化ガリウム(GaN)などのパワーデバイス、バッテリー、保護回路を統合したSPICEモデルをサブスクで提供する。
バッテリーモデルでは、充放電特性だけでなく温度特性、容量、劣化特性などを表現している。これをMOSFETやIGBTのモデルや、バッテリー管理システム(BMS)、DC-DCコンバーターなどと組み合わせる。
パワーデバイスや2次電池のSPICEモデルは、一般的にメーカーは公開していない。だが、設計者にとってはモデルを入手できなければ回路シミュレーションが難しくなる。こうしたモデルをわれわれがサブスクサービスとして提供することで、実機で評価が難しい現象を推測し、回路設計時間の短縮に貢献できる。
今回開始したサービスでは、1カ月30米ドルで最大5つのモデルをダウンロードし、体験できる。まずは60種類のデバイス、約7000モデルの提供から始め、無償モデルも提供して体験してもらう。必要なモデルがない場合には、カスタムでモデルを作成することも可能だ。これまで、カスタムでSPICEモデルを作成するサービスは限られていた。
海外と同時に日本市場への展開にも本格的に力を入れていく。国内の電子機器メーカーでは、開発期間の短縮や設計品質の向上が求められる一方で、回路シミュレーションに必要なSPICEモデルを入手できない、あるいは自社で作成しなければならないという課題がある。こうした日本の設計現場が抱える課題を解決し、より多くの設計者に活用していただきたいと考えている。
バッテリー駆動機器の設計者が最も気にしている点の一つが、バッテリー寿命だ。バッテリーのSPICEモデルを使うことで、開発中の製品のバッテリー寿命を高精度でシミュレーションできるようになる。現在、全固体電池や東芝のチタン酸リチウムを採用した二次電池「SCiB」、今後、AIのデータセンターで活用される亜鉛ハロゲン化物電池のモデルをそろえている。
将来的にはAI活用で「SPICEモデルの量産化」も視野に
――サブスクサービスの将来的なロードマップはありますか。
土谷氏 まずはローンチしたばかりのサブスクサービスを多くの回路設計者に知ってもらい、利用を広げたい。さらに、このサービスをきっかけに、われわれが提供する試作サービスにもつなげていくことが狙いだ。回路設計だけでなく、当社の部品調達力と設計力によって試作の高速化にも貢献したい。
センサーや、受動部品などの電子部品についてもSPICEモデルを作成できるので、半導体/電子部品サプライヤーから依頼を受けて、特定製品のSPICEモデルを作り、それをサプライヤーに納品するというビジネスモデルも考えられる。
将来的には、AIを活用してSPICEモデルを量産することも検討している。大規模言語モデル(LLM)でデータシートを学習させ、より多くの半導体/電子部品のSPICEモデルを自動で量産する仕組みづくりを計画中だ。
特徴あるラインカードを増加し、デザインインと試作獲得を強化
――フィジカルAIやAIサーバなどの分野で需要が高まっています。これらの分野向けに、新たに加えたラインカードはありますか。
土谷氏 ロボットの関節などに使われるブラシレスDCモーターを手掛ける中国CubeMarsの製品の取り扱いを2026年6月から開始した。この分野は中国メーカーのシェアが大きい。制御ボードや制御用ソフト(組み込みソフト)と組み合わせて販売する。
用途別のDC/DCコンバーターに特化した中国Claf Powerの製品の取り扱いも始めた。生成AIなどのアプリケーションで使われるFPGA向けのPoL(Point of Load)電源に特化したメーカーだ。低電圧で高電流のFPGAには、少し特殊な電源が必要になるが、これに特化した電源ICを手掛けるメーカーは少ない。ニッチな分野であり、一定の需要獲得が期待できる。また、サンケン電気の製品の取り扱いも本格化している。
このように、成長市場に対応した特徴あるラインカードの獲得・拡充に力を入れており、市場ニーズを先取りし、国内の設計者に新たな選択肢を提供することで、デザインインから試作、量産までのビジネス拡大につなげていきたい。
最近、当社ではAI関連機器の試作需要が急増している。製品企画から回路設計、試作、少量量産まで、ものづくり一貫サービスを提供できる当社ならではの強みを生かして、こうした需要増にも応えていく。
提供:マルツエレック株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2026年9月30日
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