あれもこれもできる! 高性能IoT端末向けマイコン「PSoC 6」に2MBフラッシュ品が登場:セキュアなWi-Fi接続も簡単
サイプレス セミコンダクタはこのほど、Wi-Fiなどの無線通信に対応するIoT機器に向けたマイクロコントローラ「PSoC 6 MCU」の製品ポートフォリオを拡大し、2Mバイト容量のフラッシュメモリ、1MバイトのRAMを搭載し、IoT機器でより高度な処理が行えるよう機能強化した新製品を投入した。これにより、Wi-Fi対応のスマート家電やスマートスピーカーなどインテリジェントなIoT機器の主要機能をPSoC 6 MCU 1チップで担えるようになった。
セキュアなWi-Fi通信も、機器制御も、1つのPSoCで――。
サイプレス セミコンダクタはこのほど、Wi-Fiなどの無線通信に対応するIoT機器に向けたマイクロコントローラ「PSoC 6 MCU」の製品ポートフォリオを拡大し、2Mバイト容量のフラッシュメモリ、1MバイトのRAMを搭載し、IoT機器でより高度な処理が行えるよう機能強化した新製品を投入した。これにより、Wi-Fi対応のスマート家電やスマートスピーカーなどインテリジェントなIoT機器の主要機能をPSoC 6 MCU 1チップで担えるようになった。
これからのIoT端末に最適な性能、消費電力を「40nm SONOSプロセス技術」で実現
PSoC 6 MCUは、IoT機器に特化したPSoC(プログラマブルSoC)として、2017年に登場した。サイプレス独自の製造プロセス技術「ウルトラローパワー40nm SONOSプロセス技術」を用いて製造。このマイコンとして最先端微細プロセス技術により、多くの機能を集積するとともに、高い処理性能、低い消費電力を実現した。
まずCPUコアとして、処理性能の高い最大動作周波数150MHzの「Arm Cortex-M4」と、低消費電力性能に優れる同100MHzの「Arm Cortex-M0+」という特長の異なる2種のCPUコアを備える。Cortex-M4で高い処理性能が要求されるシステム制御などを実行し、消費電力を抑えたいスタンバイ時はCortex-M0+のみを稼働させ、システムとしての消費電力を抑えるといった使い方が可能だ。また、Cortex-M0+に高度なセキュリティ機能の処理を割り当て、Cortex-M4で行うさまざまな処理と完全分離し、セキュア性を高めるといった使い方もできる。
こうしたIoT機器に応じた多彩な処理が行える一方で、消費電力を低減している点もPSoC 6 MCUの大きな特長。CPUコアブロックの動作消費電流は、Cortex-M4が22μA/MHz、Cortex-M0+が15μA/MHz。動作電圧が0.9Vになるウルトラローパワー(ULP)モード時を用い、Cortex-M0+を25MHzで動作させた場合の消費電流はわずか0.5mAになる。他にもクロックを8MHzに下げる低電力アクティブモードや、CPUコアの動作を停止し周辺ブロックのみ動作状態となるディープスリープモードなど、IoT機器のバッテリー駆動時間を延長させることができる低消費電力性能を備えている。
搭載メモリ拡大で、あれもこれもできるように
このIoT機器に適したマイコンであるPSoC 6 MCUにこのほど、よりインテリジェントなIoT機器を実現する新製品が加わった。2Mバイト容量のフラッシュメモリ、1Mバイト容量のSRAMを備えた製品(PSoC 62ライン/CY8C62xA)だ。従来のPSoC 6 MCUは、最大フラッシュメモリ容量は1Mバイト、最大SRAM容量は288Kバイトであり、新製品の登場により、最大フラッシュメモリ容量は2倍に、最大SRAM容量は約4倍に拡大したことになる。
同社マイコン事業部マーケティング部プロジェクト課長の末武清次氏は「Wi-Fi対応のIoT機器に向けたPSoC 6 MCUだが、これまでの1Mバイト容量のフラッシュメモリでは、Wi-Fi用ソフトウェアスタックを実装した場合、ユーザーアプリケーションの実装に割り当てられるメモリ領域は、わずかだった。2Mバイト容量品の登場で、1つのPSoC 6 MCUで実現できるアプリケーションの幅が大幅に広がった」とする。
「PSoC 6 MCU」の製品ラインアップ。デュアルコア構成の「PSoC 62ライン」の他、シングルコア構成の「PSoC 61ライン」「PSoC 60ライン」でも2Mバイト容量フラッシュメモリ搭載品を追加。今後、BluetoothのRF機能を搭載する「PSoC 63ライン」でも大容量フラッシュメモリ搭載品の投入を検討している (クリックで拡大)
例えば、ネットワーク接続機能のついたエアコン室内機の制御だ。これまでは、ファンコントロールや赤外線センサーなどによるモニタリングなどを行うメインマイコンに、Wi-Fi、Bluetoothの通信処理を行うPSoC 6 MCUを付加するという構成が多かった。しかし、フラッシュメモリの容量が2倍になったことで、「PSoC 6 MCUだけで、通信処理と、これまでメインコントローラが担ったモーター制御、IRセンサーの制御・検知・判断などの処理が行える」(末武氏)
また、PSoC 6 MCUの主な用途であるWi-FiとBluetoothをブリッジするようなIoTゲートウェイ端末でも、Armの提唱するPlatform Security Architecture(PSA)準拠のリファレンスファームウェア「Trusted Firmware-M」など高度なセキュリティ機能を備えた通信機能に加え、メモリ容量の拡大により、操作パネルの制御やフォント表示も実施可能に。よりインテリジェントなIoTゲートウェイ端末を実現できるようになった。
また2Mバイト容量のPSoC 6 MCUでは、昨今、IoT端末のユーザーインタフェース(UI)として用いられることが増えている“音声UI”に対応するため、PDMーPCM変換機能ブロックを従来の1系統から2系統に拡張した。これまでは、サンプリングレートの異なるマイクとスピーカーを接続できなかったが、新製品は低サンプリングレートのマイクと、高サンプリングレートのスピーカーを接続することが可能になり、スマートスピーカー/AIスピーカーも、PSoC 6 MCUでより実現しやすくなったわけだ。
充実の開発環境 ―― ユニークな開発キットも
搭載メモリ容量の拡大、機能強化に伴い、より多彩なインテリジェントIoT機器を開発できるようになったPSoC 6 MCUに対し、サイプレスでは、PSoC 6 MCUを使用したIoT機器開発を支援するさまざまな開発ツール類を用意している。
Wi-Fi対応IoT機器の場合、PSoC 6 MCUとともに必須になるWi-Fi対応RFデバイスとして、1チップでWi-FiとBluetoothのRF機能を低消費電力で実現するRFデバイス「CYW4343W」を用意。このCYW4343WとPSoC 6 MCUを実装した16×50mmサイズの小型モジュール「CY8CMODー062ー4343W」もあり、機器に簡単に組み込むことが可能だ。
さらに、このCY8CMODー062ー4343Wモジュールを拡張する基板がセットになったプロトタイプ開発キット「CY8CPROTO-062ー4343W」も販売されている(価格:30米ドル)。拡張ボードは、PSoCの特長的なペリフェラルである静電容量式タッチ検出機能「CapSense」を評価するための静電容量ボタン/スライダーが形成されている他、デジタルマイク、温度センサー、SDカードスロット、USBコネクタ、Quad SPIなどを備える。さらに拡張ボードには、切り込みが入れてあり、使用しないペリフェラルの基板を手で切り取ることが可能。切り取るだけで、切り取ったペリフェラル分のPSoC 6 MCUのピンが開放され、開放したピンに接続するためのピン端子で任意のペリフェラルを接続できるフレキシビリティも備えている。
プロトタイプ開発キット「CY8CPROTO-062ー4343W」。さまざまなペリフェラル基板は簡単に取り外すことができるフレキシビリティに富む拡張基板と、「PSoC 6MCU」と「CYW4343W」搭載モジュール「CY8CMODー062ー4343W」で構成される
ソフトウェア開発環境としては「Modus Toolbox」が提供される。Modus Toolboxは、従来のPSoC用開発ツール「PSoC Creator」と、サイプレス製RFデバイス用開発ツール「WICED」を統合した新開発ツール。順次、機能拡張を行っており、PSoCとRFチップを1つの開発環境で扱えることになる。
すぐにクラウドとのセキュアコネクションを確立できる「PSoC 64ライン」も登場
また、Wi-Fi対応IoT機器では、高度なセキュリティ機能が必須になるが、PSoC 6 MCUはPSA準拠のTrusted Firmware-Mを実行するためのハードウェアを備えており、同ハードウェア用ドライバ、ファームウェアも提供され短期間にPSAへの対応が行える(関連記事:低消費電力で高性能なIoT特化型マイコン「PSoC 6」のセキュリティ機能がパワーアップ)。
2019年1〜3月には、各種クラウドとのセキュアコネクション機能を備えたPSoC 6 MCUの新製品「PSoC 64ライン」が登場する予定だ。このPSoC 64ラインは、今回紹介した2Mバイト容量フラッシュを備えるPSoC 62ラインの「CY8C62xA」がベースで、各種クラウドとすぐにセキュアな接続ができるようセキュリティファームウェア一式などが追加される。AmazonのAWSやMicrosoftのAzureといった特定クラウドサービスに最適化した製品や、プライベートクラウドに対応する製品などがラインアップされる予定だ。
末武氏は「IoT端末からクラウドへの接続は当たり前になりつつあるが、クラウドとのセキュアコネクションを確立するためには、ノウハウが必要で手間も掛かる。PSoC 64ラインでは、そうした手間も省くことができ、セキュアでインテリジェントなIoT機器を開発するための最適なマイコンになるだろう。今後も、40nm SONOSプロセス技術を生かして、さらに高度な処理が行える、大容量フラッシュメモリを搭載した製品を開発し、提供していく」としている。
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提供:サイプレス セミコンダクタ
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2019年3月11日