GXの実現に向けて小型/低消費電力電源ICに加え、パワー半導体事業を本格化させるトレックス:トレックス・セミコンダクター 執行役員 山本智晴氏/清水映氏
トレックス・セミコンダクターは、脱炭素社会/グリーントランスフォーメーション(GX)を実現するため、得意とする小型/低消費電力の電源ICに加えてSiCなど次世代品を含むパワー半導体製品の展開を本格化させる。子会社で半導体受託製造事業を手掛けるフェニテックセミコンダクターのパワー半導体製造ノウハウとトレックスの開発/販売力を組み合わせ、電源IC同様に特徴あるパワー半導体製品を提供する方針だ。トレックス・セミコンダクター執行役員で製品企画・海外統括本部長の山本智晴氏と同じく執行役員で開発本部副本部長の清水映氏にインタビューした。
中期業績目標を上方修正――生産能力を積極拡大へ
――トレックスグループとして、2025年度売上高350億円、営業利益40億円を掲げた中期経営計画を上方修正し、2025年度売上高370億円、営業利益55億円、2028年度売上高450億円、営業利益80億円を目指す拡大中期業績目標を公表されました。
山本智晴氏 2022年度業績で、中計で掲げた2025年度営業利益目標に近似した結果(営業利益39.7億円)になったことで業績目標を上方修正すると同時に、もう少し先の目指す姿として2028年度の業績目標を設定した。
足元こそ民生機器向けを中心に在庫が積み上がっているが、2021〜2022年は供給が需要に追い付かない状況が続いた。新たに設定した拡大中期業績目標に向けての十分な供給能力を確保するため、増産投資をより積極的に実施する。この点で従来の中計と大きく異なる。
――製品/技術開発面については変更はありますか。
山本氏 省エネに貢献するキーデバイスを提供するという基本的な方針に変わりはない。トレックスが得意とする小型/低消費電力の電源ICを継続強化する。同時にグリーントランスフォーメーション(GX)が進み、ますます需要拡大が見込まれるパワー半導体市場への参入を本格化させる。
パワー半導体については、子会社のファウンドリーであるフェニテックがIGBTやパワーMOSFETなどを受託生産してきた。そうしたノウハウを生かし、トレックスもパワー半導体製品を開発してトレックスブランドの製品として販売する。
多結晶SiC、酸化ガリウム…… パワー半導体でも特徴ある製品展開へ
――2023年5月には次世代パワー半導体材料であるSiC(炭化ケイ素)を用いた第1弾製品としてショットキーバリアダイオード(SBD)「XBSC11A108CS」(850V/10A品)のサンプル出荷を開始しました。
清水映氏 量産は2023年内を予定している他、650〜1200VのSBD製品も計画している。SiCを用いたパワーMOSFETの開発も進めており、2024〜2025年にサンプル出荷を開始したいと思っている。
――パワー半導体メーカー各社がSiC製品を展開する中で後発になりますが、どういった特徴があるのでしょうか。
清水氏 多くのSiCパワー半導体は単結晶のSiC基板を使って製造されるが、トレックス/フェニテックには、サイコックスの「貼り合わせSiC基板」(多結晶SiC基板)を用いて製造する技術がある。同基板は低抵抗なので、単結晶基板で行われる裏面からの高濃度ドーピングなどの工程が必要がない。また結晶欠陥の影響を小さくできるといった利点もあり、性能、コストで優位性を発揮できる。
将来的にSiCデバイス市場はその需要の大きさから供給不足に陥ることになる。そうしたデバイス不足を補う存在としても貢献すべく、市場参入したい。
――SiC以外のパワー半導体の展開について教えてください。
山本氏 すでに量産している1.5Vなどの低電圧駆動パワーMOSFETや低オン抵抗のスプリットゲート型MOSFETなど特徴のあるシリコンを用いたパワーMOSFET製品群をさらに充実させる。フィールドストップ型IGBTなどの製品化も計画している。SiCやGaN(窒化ガリウム)を上回る特性を持つ酸化ガリウムを用いたパワー半導体の開発も順調に進んでいる。
近い将来には一通りのパワー半導体製品がそろう見通しだ。そうしたパワー半導体を組み合わせたモジュール製品の提供も手掛ける。まずは産業機器用途、将来的には電気自動車関連用途での採用を狙っていく。
好調のコイル一体型DC/DCコンバータ「micro DC/DC」を継続強化
――トレックスの主力製品である電源ICの開発方針について教えてください。
山本氏 注力している産業機器、自動車市場のニーズに応えるべく、小型・低消費電力という強みを持った電源ICを中高耐圧領域に拡大させている。36V/3Aクラスまで拡大できており、これをさらに60V/6〜10Aクラスに引き上げる。
中高耐圧対応と同時に、DC/DCコンバータICとコイルを一体化した製品「micro DC/DC」(XCLシリーズ)の拡充をさらに強化する。コイル一体化の利点は多くの顧客の支持を得ており、トレックスのDC/DCコンバータ製品販売額の約半分をmicro DC/DCが占めるようになった。これを70〜80%に高めることが目標だ。
――micro DC/DCの特徴を教えてください。
清水氏 単にDC/DCコンバータICとコイルを並べてパッケージに封止するという構造の製品だけでなく、封止済みのDC/DCコンバータICを覆うようにコイルを一体化したポケットコイル型や、放熱性に優れるクールポスト型などさまざまな構造の製品がそろう。
ポケットコイル型は、ノイズ源であるDC/DCコンバータICを樹脂封止した上、コイルで覆っているため超低ノイズを実現でき、スマートウォッチなど無線を搭載した小型機器に最適な電源ICになっている。2023年6月には、このポケットコイル型micro DC/DCの新製品として「XCL233シリーズ」のサンプル出荷を開始した。消費電力を200nAまで低減し、軽負荷時の変換効率に優れるPFM制御方式を採用するなど、IoT/ウェアラブル機器に最適な製品になっている。
提供:トレックス・セミコンダクター株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2023年9月21日
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