検索
ニュース

Si基板に集積できるMEMS発振器、水晶の置き換え狙い米社が発売電子部品 タイミングデバイス

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

 「真空管はSi(シリコン)技術で製造するトランジスタに取って代わられた。Siトランジスタは真空管に比べてはるかに小さく、安く、信頼性が高かったからだ。同じ変革が水晶発振器にも起きる」―――。米国の新興企業であるSiTime(サイタイム)社は、Si基板に集積できる基準信号発振器を開発した。

 MEMS(Micro Electromechanical Systems)技術を使ってSi基板の内部に共振子を作り込む。これに駆動回路を組み合わせることで発振器として機能させる。「水晶発振器に匹敵する性能を実現しながらも、実装面積やコストは低く、信頼性は高い」(米SiTime社の会長兼CEOを務めるKurt E. Petersen氏)と主張する。民生用電子機器などに組み込む水晶発振器の置き換えを狙う。「現在、水晶発振器の市場は3000億円を超える規模。当社の開発した技術はこのうち90%の製品に影響を与えることになる」(同氏)と気を吐く。

図
発売したMEMS発振器。MEMS技術で共振子を作り込んだSiチップを、共振子の駆動回路やPLL回路、出力バッファなどを集積したCMOSチップの上に積層してパッケージに封止した。

 製品の第1弾として、1M〜125MHzの出力周波数に対応するMEMS発振器「SiRes」ファミリを発売した。出力周波数を汎用性の高い値にあらかじめ同社が固定した「SiT1xxx」とユーザーが購入後に任意の発振周波数を一度だけ設定できる「SiT8002」の2品種である。いずれも周波数偏差は±50ppmまたは±100ppm(−40〜80℃において)、経年変化は±2ppmを保証した。サイクル間ジッターは±100ps(100MHz出力時)。1.8V、2.5V、3.3Vいずれか単一の電源電圧で動作する。

 パッケージは外形寸法が2.0mm×2.5mm×0.8mmと小さい4端子のQFNを採用した。このほか、既存の水晶発振器の置き換えを狙って、エプソントヨコムの水晶発振器「SG-8002」と実装面積や端子配置が同じパッケージも用意している。実装面積が2.5mm×3.2mmと3.2mm×5.0mm、5.0mm×7.0mmの品種である(厚みはいずれも0.85mm)。「当初は既存品の置き換え需要を狙って、互換性の高いパッケージで提供する。ただし技術的には大幅に小型化することができる。例えば、1.0mm×0.8mm×0.3mmと極めて小さいパッケージに封止することも可能だ」(同社のマーケティング担当バイス・プレジデントを務めるJohn McDonald氏)という。

図
MEMS振動子を作り込んだチップの写真。チップの大きさは0.6mm×0.8mm。中央の四角形が振動子。振動子の大きさは300μm×300μm。

 すでにサンプル出荷を開始しており、量産出荷を2006年9月に始める予定。価格については、具体的な数字は明らかにしていないが、「水晶あるいは水晶以外の技術を使うあらゆる発振器に対して競争力のある価格に設定する」(同氏)という。さらに、水晶発振器との比較については、「パッケージ・サイズが小さくなればなるほど、MEMS発振器の価格優位性が高まる」(同氏)と説明した。外付けの駆動ICが必要な水晶振動子と比較すると、今回のMEMS発振器の価格は、パッケージ・サイズが2.5mm×3.2mmの水晶振動子と同等であるという。

 SiTime社は今回のMEMS発振器を実現できた理由を、「Si基板内部に高真空状態を作り出し、そこに共振子を封止する技術を開発したからだ」(Petersen氏)と説明する。共振子に水分などの汚染物質が付着しないため、周波数偏差を小さく抑え込めるほか、高い信頼性を確保できる。

 具体的な製造工程はこうだ。基板はSOI(silicon on insulator)ウエハーを使用する。まず、基板表面にエッチングを施し、埋め込み酸化膜に達する深い溝(トレンチ)を掘る。このトレンチと基板表面をSiO2で覆った後、基板表面に薄く多結晶Si層を成長させる。続いて、この多結晶Si層に微細な穴を数多く開け、ここからSiO2層を除去する。これで振動子が自由に動くようになる。

 次に、振動子を高真空状態に封止するためのキャップ層を形成する。基板表面の多結晶Si層の上に、厚い多結晶Si層を成長させる。このとき、成長炉の温度は1100℃と高く設定しておく。高温にすることで、汚染物質を除去してしまう。この結果、振動子を高真空状態で封止できる。

 こうしてMEMS共振子を埋め込んだSOIウエハーは、CMP(化学的機械研磨)処理を施すことで通常のSOIウエハーとして扱える。すなわち、標準的なCMOSプロセスを使って回路を集積することが可能だ。従って、共振子の駆動回路や共振周波数を検出し、その周波数を基に任意の周波数の信号を作り出すPLL回路を1チップに集積し、発振器として機能させることができる。さらに、マイコンやシステムLSIのチップにこの発振器を集積することも可能になる。同社は今後、システムLSIベンダーなどと提携することでMEMS発振器を搭載したLSIの製品化を目指すという。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る